初侵入
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久しぶりに携帯電話が鳴ったので、ビクつきながら取ると、妹からだった。
「お兄ちゃん久しぶり、生きてる?」
「ああ、元気だよ、お前も元気か?」
「うん……ねえ、そっちでもニュースになってると思うけど、裏山がなくなっちゃったんだよ」
裏山というのはオレの故郷にある小さな山のことだった。もちろん正式な名前は別にあるのだが、地元の人はみんな裏山と呼んでいる、子供たちの遊び場だった。
「ああ、知ってるよ、誰も怪我しなかったんだろ? どんなだった?」
「うん、何年か前から金網が張られて立ち入り禁止になってたからね。夜中に急に物凄い雨が降り出して、洪水になるかなーって思ってたの。それで朝起きたら裏山が半分ぐらい崩れて川に流れちゃってたのよ、びっくりしたわ」
「そうか、何にしても人の被害がなくて良かったよ……溺れて死ぬのは辛いからな」
「うん、昔ほどじゃないけど、この辺は洪水が多いからね。お兄ちゃんと一緒に埋めたタイムカプセルも、流れちゃっただろうね」
「懐かしいな。裏山はお前がファーストキスをした、思い出の場所だったのに……ごめんな」
「え? は? 何言ってんの? というかファーストキスを裏山でしたのはお兄ちゃんも同じでしょ、この辺の子はみんな、そうだったもんね」
しばらく話をしてから電話を切ったオレは、日課にしているイメージトレーニングを始めた。
膝の上に預金通帳を置いてから「オレの一番大切な物は預金通帳です」と百回、思いを込めて言った。
そして預金通帳を抱きしめて頬擦りし、軽くキスをした。
日課を済ませたオレは、なにかに憑りつかれた様に、いそいそとゲームを起動させる。
もうオレには、抗う力が残っていなかった。
――――――――――――――――――――
オレは、アポロと一緒にドライフォレスト王宮前にワープした。
壁の向こうから微かに聞こえてくる円形闘技場の歓声を聞いた後、王宮門まで歩いていき、門番と話をした。門番は一度目に会った時と同じように、ぶ厚い鋼の鎧に大盾と槍を持ち、のっそりと門の前に立っていた。
「……お前か……一億マナ用意できたのか?」
「いや、まだ全然だよ、何かうまい儲け話はないかい?」
「……」
変化があるかもしれないと思って来てみたが、無駄足だったようだ。
最近ゴブリンマラソンが物足りなくなってきているので、別のマラソンコースが必要だった。
王宮門の前にある大理石の広場を、念のために時間をかけて調べてみたが、やはり何もない。
あきらめて小部屋の石碑まで帰ると、円形闘技場に通じる石の壁が初めて開いていた。
オレが身を震わせて戸惑っていると、何であれ新しい物は確認しなければ気の済まないアポロが、さっさと闘技場に行ってしまった。
「アポロ、待てって……」
アポロの少し膨らませた尻尾を追いかけて、薄暗い通路を抜けた。
照明の落とされた円形闘技場の土を踏むと、毛穴がゾワゾワと開いていく。
ほんの数分前までここで壮絶な殺し合いが行われていたのだろう、血の匂いと急速に冷えていく戦いの残り火を、嫌でも感じた。柄にもなく感慨に耽っていると、頭上から声が降ってきた。
「よう、あんちゃん、また会えると思ってたぜ」
神聖な闘技場に不似合いな、ガラガラ声の持ち主を捜し観客席を見回すと、ボックス席にギャンブル中毒のおっさんがいた。オレは、アポロを連れて石壁を駆け登りボックス席まで走った。
「よう、おっさん、まだしぶとく生きてたのか、あの時は世話になった……それにしても、すごい服だな」
中肉中背、無精ひげのおっさんは金色のスーツの様な服を着ていたがサイズが合っておらず、袖が垂れ下がっていた。ユグノーと戦っていた時に、おっさんの首に剣を当てていたデブの亡者が、こんな服装だった気がする。
「あんちゃんが元チャンピオンと試合した時なー、ついうっかり全財産と命まで賭けちまってな、さすがにくだらん人生を終われるかと思ったが、おかげ様で逆に勝負相手の身ぐるみを剥いでやったぜ」
亡者であるおっさんを威嚇するアポロを、右手で押さえながらオレはニヤリと笑った。
「そういえばおっさん、勝ったら何でもするとか言ってたよな? 早速だが一億マナほど貰おうか」
「いやいや、そんな持ってるわけないだろ、すでに半分は、ねーしな……一億マナって王宮に行くつもりか?」
「ああ、そうだ。ところでちょっと聞きたい事があるんだが、ドライフォレストには反政府組織があるらしいな」
フラニーから聞いた情報だったが、フラニーはそれ以上は知らなかった。
ニヤニヤしていたおっさんは真剣な顔になり、探る様にオレを見ながら話した。
「まあ王様があんだけ無茶苦茶やってたら、そんな組織の一つや二つはできるわな…………一億マナの代わりでいいか?」
「ああ、話してくれ」
「実はオレの甥っ子が革命軍のメンバーでな、たまにこづかいせびりに行ってるんだよへへっ、城壁内に住んでいて正気を保っている奴なら、ほぼ全員が何かしら革命軍に関わっているといってもいい」
「王を倒せそうか?」
「いや無理だな。まず王宮門を破壊する事は不可能だし、王宮門の先には戦闘用のゴブリンがわんさか居るからな。そして狂った王自体が化け物のように強い。万一、その王を倒せたとしても代わりに立てる王族がいなければ、国自体が持たない。ドライフォレストは建国以来の王制だから、革命といっても急には無理だ」
なんだか聞きたくなかった新情報が、ずらずらと出てきてしまったな。
「難しそうだな」
「ああ無理だな。だが最近、革命軍は活気づいてるぜ、イカれた女が参加してきてな」
「イカれた女?」
「ああ、元守備隊の女らしいんだが、参加してすぐに教会の墓を片っ端から掘り返したらしい。墓の下から手に入れた聖者の粉を使って、亡者になっていた手練れを革命軍に加えたんだとさ」
オレは革命軍の規模や、活動について質問していった。途中、イカれた女の容姿をさりげなく聞いたが、おっさんはそこまでは知らなかった。
「……そうか。今日はもう行くが、また話せるかい?」
「ああ、オレはここに常駐しているからな、あんちゃんが来れば会えるさ」
「ありがとう。……代わりに立てる王族はもういないのかな?」
「狂った王が粛清しちまったからな、一人だけ庶民として暮らしていた薄い血の奴が残っているが、そいつも国外に逃げちまったよ」
「なんて名前の奴だい?」
「チャンドラー三世」
おっさんに別れを告げて、石碑まで戻った。
オレは水晶玉とにらめっこをしていた。
まずアイテムの系統として、糸と布を入力する。次にアイテムの、価値の範囲をやや広めに入力した。
最後に水晶玉に少しだけ魔力を込めると「侵入先を探しています」とメッセージが出る。
ドキドキしながら30分ほど待っていたが、何も起こらなかった。
先日、ベンを通して討伐隊の副隊長であるダーマスパイラルと連絡を取った。
簡単に事情を説明し、人探しのために討伐隊の旗を使用する許可を求めたところ、数日後に同じくベンを通して、緑色の旗と手配書の紙の束が送られてきた。
手配書には罪人の似顔絵と、細かい情報が書かれている。そしてもちろん報奨金の金額である。
こういのが割と好きなオレは、寝室の壁に手配書を並べて張り付けて、毎日眺めていた。
とある罪人の報奨金が丁度一億マナだったが、情報欄にオリハルコンの剣を装備、と書いてある。
さすがにこいつは無理だろうが、手ごろな奴に当たったら、戦うべきかどうか非常に迷うだろう。
侵入中に負けてしまっても、死なずに自分の丘に戻るだけというのは気が楽だが、後遺症を受けるのはもうごめんだったし、逆恨みされて粘着されたら困ってしまう。
フラニーがソファーで帳簿をつけながら、オレの事をチラチラと見ている。
スノーサイレンス探しをするためには、誤侵入のお詫び用に鉱石を持ち出す必要があるので、みんなにある程度の説明をせざるを得なかったのだ。
フラニーは、オレの故郷や同郷のスノーサイレンスという女性について、やや詰問口調で質問をしてきた。
オレが口をモゴモゴさせながら潤んだ目をばあさんに向けると、エリンばあさんが「人には言いづらい過去もありますゆえ」的な話をフラニーにしてくれた。
困った時のエリンおばあ様である。
「フラニー、投弾帯の練習でもしようか、ただ待っているのもあれだしな」
「私は帳簿をつけているので忙しいですわ」
「そう言うなって」
フラニーの手を引っ張って、外に出た。
ハービーに、的にする人型の藁を数体運んでもらい、丘の端っこまで行った。
藁人形を地面に立てて、準備体操をするハービーの横に立つ。
オレが持っている皮の袋には今まで使っていたただの石ころではなくて、工作台で作った表面がツルツルの石と鉄球が入っていた。最初はオーソドックスな物から試して、うまくいったらトゲトゲのついた鉄球や先の尖った円筒型も作ってみるつもりだった。
一球一球確かめるように投球を繰り返すハービーの玉は、あまり藁人形に命中しなかった。
なにか大人ならではのアドバイスをしようと頭を捻っていると「侵入しています」とメッセージが出た。
「おっ」
「どうしました?」
「侵入するみたいだな」
「アポロを呼びますか?」
「いや、しばらくは一人で行くつもりだ……いかん、旗を忘れてた」
慌てて家まで走り2メートルぐらいの木の棒を掴んだ瞬間に、目の前が真っ暗になった。
――――サージェント・ガープの丘に侵入しました。
視界を塞ぐ闇が徐々に晴れると、覆い被さってくるような高い城壁が見えた。
戦闘の傷跡がいくつも刻まれている冷え切った城壁を見上げると、20人ぐらいの兵隊がオレに弓矢を向けていた。
慌てて木の棒を両手で持ち、左右にブンブンと振った。
木にくくり付けられている緑色の旗とその下にある日本の国旗が、他人の丘の上で翻る。
必死に旗を振り続けていると、兵隊の一人が手を挙げて全員の弓矢を下ろさせた。
ほっとしたオレは周りの景色を見る余裕もなしに手土産の鋼鉱石を一つ地面に置き、帰還の塗り絵を塗り始めた。
城門の両脇に長い鎖で繋がれた凶暴そうな熊が二匹いて、オレの事を完全に餌を見る目で観察している。
汗で塗り絵を滲ませながらクレヨンを走らせていると、二匹の熊がそろりそろりと近づいて来る。
兵隊が熊を叱咤するが、熊は数秒間立ち止まった後でまた接近してくる。兵隊も熊を押し止める事にあまり熱心ではないようだった。
熊の強烈な獣の匂いに鼻が完全に麻痺した頃に、やっと塗り絵が完成した。
虚空から発生したブラックホールに体が吸い込まれ、目を開けるとサイドボードの上の石版の前に立っていた。横に小さなフラニーが立っている。
オレは思わずフラニーを抱きしめて、フラニーのお日様の匂いを胸一杯に吸い込み鼻の麻痺状態を回復させた。
「どうでした?」
「空振りだった……怖い熊がいたよ」
水晶玉で同じ侵入設定をもう一度した。
今度はちゃんと旗と補充した鉱石を抱えて、藁人形の所に戻った。
「どうだい、新しい球は?」
「ええ、威力も飛距離も上がりましたが、馴れるまでは命中率の方が……」
「そうか? むしろ命中率が上がると思っていたけどなー」
ハービーが二つ折りにした真っ赤な投弾帯に鉄球を装填し、両手で頭上に構えた。
引き絞った投弾帯を背中から一回転させて、振り上げる。
ビュッホという風切音と共に撃ち出された鉄球が、藁人形の右腕を再起不能にしてから草原を飛んで行った。
「おっ、いいじゃないか」
「出来れば急所に当てたいのです」
ハービーが無表情で何度も素振りを繰り返す。
「うーん、そうだな、何か掛け声を出してみたらどうだ?」
「掛け声ですか?」
カゴの中のフラニーがオレに問いかける。
「そうそう、例えばチャー、シュー、メン! とかな」
「?」
「まあ、やってみよう」
ハービーが投弾帯に石弾を詰めた。
「チャーシューメン!」
石弾はなぜか真横に飛んでいき、地面に突き刺しておいた緑の旗の棒を半分にへし折った。
「あっ! ごめんなさい」
「だ、大丈夫だよ。掛け声はやめた方がいいかもな、それかフラニーの言い易い言葉がいいかもな――――あっ!」
「侵入ですか?」
「ああ、行ってくる」
折れた旗を拾って、投げ縄をグルグル巻にして補修していると、視界が闇に包まれた。
――――トム・デビル・ドラゴンライダーの丘に侵入しました。
次に侵入した丘は、防衛設備の何もない殺風景な場所であった。
オレの丘は気持ち良く晴れていたが、遠い丘に侵入したのかどんよりと曇っている。
そして真っ赤な鱗のドラゴンが、畑の真ん中でスヤスヤと寝ていた。
丸くなって眠るドラゴンの顔の前に、紫色のラベンダーのような花が数本咲いていた。
オレは緑の旗を振る事も忘れ、口を開けてドラゴンを見ていた。
別のドラゴンであってほしいというオレの願いも空しく、ギシギシと開いた家のドアから見慣れた顔が出てきた。
トムはサンダルをつっかけて短パンを履いていた。
昼寝でもしていたのかぼさぼさの髪をしており、片手を短パンに突っ込んでいる。
トムはドラゴンをひと撫でしてからラベンダーを一本引き抜き、気まずそうな顔でこちらにやってきた。
「お、おう」
「おっ、おおう、わるいな」
トムはいつの間にか地面に転がっていた緑の旗を顎で指した。
「討伐隊か、大変そうだな」
「うん、ま、まあね」
「……」
「……あっ、オレがトムさんにあげるってのも変だけど、これお詫びに」
鋼鉱石を差し出した。
トムは何回か遠慮したが無理やり手に押し込んだ。すると、先ほど収穫した反物のような布地をオレに渡してきた。断るとまた長くなりそうなので素直に貰っておく。
「たいした物じゃないが『微香の布』っていうんだ。丈夫だし、いい匂いがするから……下着とか枕にする事が多い布だ」
「あ、ありがとう」
気まずさが大分消えてきたので、オレは塗り絵をやりながら楽しく世間話をした。
やがて帰還の塗り絵が完成したので、トムと握手をして別れた。
サイドボードの石版の前に帰りつくと、今度はフラニーが居なかった。
外に出てみると、ピシッーという小気味の良い音が響いている。
投石の練習を続けていたらしいハービーが次の球を振りかぶった。
「パーセーリ!」
カゴの中のフラニーの掛け声に合わせて投げられた鉄球は、藁人形の心臓に直撃した。
「フラニーすごいじゃないか、もうコツを掴んだのか」
「ええ……それは何ですか? スノーサイレンスという女の人にお会いできたのですか?」
嬉しそうにカゴの蓋を開けたフラニーが不審げに顔をしかめ、ランドセルからはみ出ている微香の布を指差した。
「いや、そうじゃなくて……まあ、ちょっとな」
「……また、言いづらい大人の過去というやつでしょうか?」
「ああ、そうだな。言いづらいのはオレじゃないがな」
フラニーにトムの事を説明していると、また侵入を知らせるメッセージが出た。
話を切り上げて、闇に包まれるのを待つ。
――――バーンバランの丘に侵入しました。
暗闇が光に撃退され、新しい景色がオレの目に飛び込んでくる。
高さ15メートルぐらいの攻城矢倉が、ポツンと丘の外側に建っていた。
その攻城矢倉のようなものが、オレに反応して紫の光を放った。
そして数えきれないほどの矢をハリネズミのように飛ばしてきた。
一瞬ヒヤリとしたが、百本近い矢は全部オレの数メートル横を通り抜けていった。
攻城矢倉は自分では向きを変えられないようで、3,4回無駄に一斉射撃をした後で沈黙してしまった。よく見ると攻城矢倉の中には大小さまざまなバリスタが5段組みで並んでおり、真ん中にある大きな魔石が制御をしているようであった。
城壁がないので、モンスターと戦っているバーンバランの様子がよく見えた。
バーンバランは大きなカブを一緒に収穫した時と、まったく同じ鉄の装備をつま先から頭まで着けており、ノーマル銀の長槍を振り回していた。
巨大なカブト虫やクワガタのモンスターが湧いており、バーンバランはかなり苦戦しているようだった。
オレはポケットに入っていたダイヤモンドナッツをしゃぶりながら、遠巻きに戦いを見ていた。
カブト虫の一匹が攻城矢倉を後ろから攻撃し始めると、バーンバランは畑をほっぽり出してそのカブト虫を先に消滅させていた。走って畑に戻っていたが、いろんな布や糸をすでにモンスターに食われていた。種をたくさん埋めている様で、どんどんモンスターが湧いてくる。
……ちっ、仕方ないか
オレは畑に駆け寄り、カブト虫の背中に鋼の爪を突き立てて消滅させた。
今までオレに見向きもしなかったモンスター達が、敵と認識を変えたのかオレを囲み始める。
カブト虫たちは見かけほどは強くなくて、バーンバランと二人で30分ほどかけて全部消滅させた。
戦っている間、攻城矢倉がたまに「シュパシュパシュパシュパ」と無駄に矢を発射している音が聞こえた。
戦いを終えたオレとバーンバランは無言で睨み合った。
「この間の借りは、これで返したからな。次は戦いになるだろう、略奪をする奴は許せないからな」
「……」
「……あの攻城矢倉はなかなか恰好がいいし、強力そうだな」
バーンバランが「そうだろう」と言う風に胸を張った。
「だが、まるで役に立っていなかったな。お返しのついでに助言してやるが、少し使い方を考えた方がいいんじゃないかな。それに防衛設備を買う時は破壊された時のリスクを考えるべきだ。まあ、大きなお世話だな」
ギョッとしたように立ち尽くすバーンバランに背を向けて、歩き始めた。
すると、大きな咳払いが聞こえたので振り返った。
バーンバランがぶっきら棒に横を向きながら、反物を差し出している。
オレが反物を受け取ると、今度はバーンバランが無言のまま背中を向けて歩き始めた。
その背中に声をかける。
「ありがとう」
「……」
本日、2つ目の微香の布だった。
家に帰ると、フラニーがソファーに座っていた。
立ち上がってオレを出迎えてくれるが、すぐに困惑した顔になる。
「また、それですか。その微香の布というのは何か意味があるのでしょうか?」
「まあ男が年を重ねると色々あるんだよ。カレイシュウっていう呪いを解呪する為のアイテムだと思ってくれ。それにしても、もうすぐ日が落ちるというのに暑いな。少し疲れたが最後にもう一度だけ行くか」
「そんな呪いは聞いた事がありませんわ。カレーシュー?」
価値の範囲を少し狭くして、侵入の登録をした。
ソファーに座ろうとすると「侵入しています」とメッセージが出た。
「おっ」
「ずいぶん早いですわね」
「そうだな、気を引き締めて行ってくる。帰ったら晩飯にするから、上に居るアポロとばあさんも適当に呼んでおいてくれ」
真っ暗闇の中で、オレはわずかに肌寒さを感じた。
闇がなくなると、空から雪が降っていた。
メッセージを見たオレの心臓が凍りつく。
――――♪♪ユキ♪♪ (^_-)-☆の丘に侵入しました。




