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黄金イモ

 チュートリアルの指示に従い、小屋の中に入る。


 丸太を積み上げた様な簡素な小屋だ。広さは全部含めて十二畳ぐらい。

 キッチン、テーブル、ベッドなどの見慣れたものがあり、サイドボードの上に水晶玉と石版が置いてあった。ずいぶん長く住んでいる六畳一間のアパートに比べたら、なかなかの豪邸に思える。

 石版に手を触れるとワープできる場所が浮かんできた。

『トムの道具屋』『はじまりの庭』とあるがまだ行けないようだ。


 水晶玉の方に手を触れるといろんな機能が出て来る。『鑑定』などの項目もあるがやはりまだ使えない。


 ―――――――種を埋めて作物を収穫しましょう。アイテムボックスから種を取り出してください。おすすめはガロモロコシです。


 アイテムボックスはサイドボードの横にあった。

 中を見ると初期配置のアイテムがけっこう入っている。種も十種類ぐらいあった。

 

 おすすめのガロモロコシの種もあったがそれより『黄金イモの種』というのが気になる。ゲームスタートの時点で極端に価値の高そうな種がある事に、製作者の悪意を感じるが、まあ乗ってやろう。


 少し迷ってから黄金イモの種をアイテムボックスから取り出す。


 小屋から出るとすぐ目の前に、小学校の校庭ぐらいの広さの畑がある。茶色い土が綺麗に縞模様になっている。


 世界全体が薄い霧で白くなっているのだが、畑の向こうの方を見るとよりいっそう濃い霧が立ち込めている。

 ためしにそこまで走って行ってみると、その濃い霧は壁のようになっていて通れず、しかも畑と小屋をぐるりと囲っているようだ。


 この霧は、説明書のどこかに書いてあった初心者シールドというやつのことかな。


 畑に戻り、適当な場所に握りこぶしを突っ込んで穴を作り、種を埋めてみた。

 時間は何段階かで加速できるようだ。

 もちろん最高速にする。

 しばらく待つと、種を埋めた場所からぴょこんと芽が出てきた。

 芽はすくすくと育ち、茎が伸び、葉っぱが付き始めた。

 かんじんの黄金イモはやっぱり土の中にできるのだろうか、イモだし。まあゲームだからそうとはかぎらないか。


 ワクワクしながら待っていると、突然、真っ赤なビックリマークが表示された。ゲーム内時間も通常スピードに戻されている。さらに赤い文字が画面したに表示される。


  ―――――――ブラッドデビルモンキーに侵入されました。


 辺りを見回すと畑の向こうの濃い霧の前に真っ赤なサルのような生き物が突如、涌いていた。

 全長二メートルといったところだろうか。

 キョトンとした顔でこちらを見ている。こちらもキョトンとした顔でサルを見返す。

 オレがなにか口を開こうとした瞬間にサルが動き、百メートルぐらいの距離を5、6歩で走破した。

 そしてなにかでレオンの首を跳ね飛ばした。


 一瞬だった。


 浅黒いアフロの首が土の上を転がる。

 血の滲む視界に、無邪気に土を掘るブラッドデビルモンキーとやらが映った。

 やがてブラッドデビルモンキーの手には金色に光り輝くイモのような物体が握られ、奴は嬉しそうにそれを口に放り込んだ。

 まあこうなるだろうとわかってはいたけどさぁ。


―――――――チュートリアルを失敗しました。最初からやり直しますか?

 メッセージがでる。


 うーん、チュートリアルはもういいかな。あとはやりながら覚えればいいし。

 noを選択する。


―――――――ではいよいよ本編を開始しますか?


 yes


―――――――本編を一度開始してしまうとゲームの世界に引き込まれ現実に戻れなくなる可能性がありますがよろしいですか?


 なんだこりゃ? 変なメッセージだな。

 まあいいか、yes。


 『yes』を選択した瞬間、オレの体は光り輝きゲームの世界に召喚されて……………………なんてことはもちろんなくて普通にゲームが始まった。




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