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シミュレーション

 オレとアポロは春の暖かい日差しの中、市場をプラプラと歩いていた。


 アポロがあれこれと屋台を指差すので、その度に二人で買い食いをした。

 本当は鋼のマニキュアか装備品を買ってやるつもりだったが、後回しでもいいだろう。


 ガロモロコシのバター醤油焼きを齧りながら、公会堂に向かう。


 公会堂は、会議室や舞台などがあるだけではなくて、主に建築系の支店窓口がズラリと並んでいる。

 オレはまず城壁の注文を済ませた後、小屋の建て替えの依頼も手早く済ませた。

 公会堂で丘や畑の拡張もできるようだが、鉱石農場に広さは必要ないので、値段の確認だけしておく。


 風車小屋、兵舎、図書館などの色々な施設もここで注文する事ができる。

 オレは予定通り穀物庫を注文し、少し迷ったが小さな家畜小屋も注文した。

 アイテムボックスに備蓄できる量は限りがあるし、売却時の相場なども気にしていきたいので、農場経営には穀物庫が必須だった。

 家畜小屋は、毛長馬などを購入して、草原を疾走したいという野望を叶えるためだった。


 一通り注文を済ませたあと、再び市場をぶらつく。

 工事の開始は、予定がつまっているので数日後になるとの事だった。


 ……いやー、それにしても金があるというのは、気持ちの良いものだな。


 カジノでリベンジを……という気持ちがなくはないが、金のあるうちに装備品と種を買い込んでおくかな。

 オレはハードレザーの装備一式と鋼のマニキュア、落とし穴のスクロールを数十枚、サンダーアップルの種などを半ば衝動的に購入していく。鍛冶屋にも顔を出して、ガイドフ親方と少し話をした。


 鍛冶屋を出ると、ブルーマンゴーのクレープという食べ物が屋台で売っていた。


「うまそうだな、アポロも食べるか」


 アポロがプルプルと首を振る。


「どうした、腹でも壊したか? ん? 違うのか、じゃあ遠慮するなって」


 オレはクレープを2つ買った。

 しばらく歩くと高級そうな服屋を見つけた。


「ばあさんに服でも買ってってやるかな」


 服屋に入ろうとすると、アポロがズボンの裾に咬みついて、オレを引き留めた。


「なんだ眠いのか? じゃあ、しょうがないな。そろそろ小屋に帰るか」


 しかたないのでオレ達は小屋に帰った。




 小屋に帰って昼寝を済ませた後、シミュレーションの準備を始めた。

 城壁以外のバッファローウォールを消滅させた後、帰還の塗り絵と紙を使って、お面を何個か作った。

 そして小屋から真っ直ぐ行った突き当たりの、城壁の上によじ登った。


 アポロのおでこにネズミのお面を付けてから、城壁の外に降ろす。

 外に降りたアポロは、見えない壁がある所まで移動する。

 今アポロがいる辺りが、モンスターの湧きポイントが集中している場所で、7割近いモンスターがあそこから湧いた。


「よーし、まず城壁を登れないモンスターのパターンからやっていくぞ」


 大きな声で言うと、アポロ扮するネズミが城壁に向かって走ってくる。

 しかしネズミは城壁を登ることができない。


「アポロ、左だ」


 壁に阻まれたアポロは、自分の左手に走っていく。

 そこに待ち構えるのは、設置予定のモスキート魔法陣。

 弱いモンスターの多くはこの魔法陣に入ることを嫌い、引き返すであろう。


「アポロ、モスキート魔法陣を突破するんだ」


 キラーパペットなどは魔法陣を突破するであろう。

 アポロは魔法陣を走り抜けて進み、城壁が切れたところで右に曲がった。

 オレも城壁の上を走ってアポロを追いかける。

 進んでいくアポロを次に待ち構えているのは……『竹美エンジェルス』


 移動させた竹美をセンターに、数十娘の落とし穴がモンスター達を待ち構えている。

 落とし穴の間には、まきびしやトラバサミを設置予定である。

 竹美エンジェルスが敵の数を減らしつつ、足止めしている間に、監視塔のエリンばあさんが正確無比な一撃で残党を処理していく。

 マナが勿体ない気もするが、収穫物に食いつかれないというのを第一に考えたい。


「アポロ、一旦戻るぞ」


 オレとアポロはスタート地点に戻った。

 今度は壁に突き当たって右に曲がったモンスター、又はモスキートで引き返してきた奴らのパターンをやってみる。


 ネズミのお面を揺らしながらアポロが右に向かって走る。

 壁に沿って左に曲がったアポロは、なんの障害物もない壁際を疾走する。

 曲がる時などに壁に引っかかった敵が、たまに城壁を攻撃し始める時があるので、注意する必要がある。


 しばらく走るとアポロの目には、城門が見えてくるはずだ。

 腹を空かせたモンスター達は、開け放たれた城門に、なんのためらいもなく突っ込んでくるだろう。


 アポロが狙い通りに、仮想の城門を潜った。

 すると数十メートル先には、おいしそうに咲き誇るヒマワリ畑が見えるだろう。

 砂鉄ゾーンである。


 アポロは自分の両脇の防護柵には目もくれず、砂鉄ゾーンに向かって一直線に走っていく。

 城壁から飛び降りたオレは、小屋の真ん前の砂鉄ゾーンまで走り寄り、アポロに斬り付けるマネをした。

 ネズミのお面を外して、畑に放り投げる。


 ちなみに城門の両脇から伸びる防護柵は、そのまま真っ直ぐ伸びて砂鉄ゾーンを挟みつつ、逆側の城壁に突き当たる。その防護柵の間に、もう一つ城門を作る予定である。

 砂鉄ゾーンを今更、動かせないという事と、予算の関係でこういう形にしてみたが、工事開始まであと数日あるのでなにか思いついたら変更、調整をしていこうと思う。


 オレは、アポロにカエルのお面をつけて、再びスタート地点に戻った。

 スタート地点から走り城壁に突き当たったアポロは、今度は城壁を駆け上がった。

 お面をつけたアポロとオレが、城壁の上で対峙する。

 アポロのお面をそっと取り、城壁の中に投げ捨てた。


「うーん、城壁を強化する以外は今の所やりようがないからなあ。栽培中は城壁の上にオレが立って、アポロには砂鉄ゾーンを守ってもらう予定だ。まあ、鉱石だけ作っているうちは二人で砂鉄ゾーンを守る事になるかもな。多少食われちまうかもしれないが、そっちの方が安心だしな」


 城壁の上からの攻撃手段が何かほしいところである。

 オレはシミュレーションの終了を告げて、アポロの頭をごしごしと撫でた。





 監視塔にいるエリンばあさんに3時のおやつを運ぶ。


 シュークリームにそっくりなおやつを3人で食べながら、しばらく雑談をしていた。

 頃合いを見て、オレは切り出した。


「エリンばあさん……魔法を覚える気はないかい?」




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