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エピローグ


 やっかいな次元の扉が閉じたあと、もう一度調査隊が結成されて、国境のあたりは、くまなく調査された。

 あのブラックホールは、移動しながらクイーンシティの回りの街々を次々飲み込んで行っていたようだ。そして調査をしていくうちに判明したのは、残念なことに、こちらの世界には、もう彼らの街しか残っていないと言う事だった。

 動物も植物も、人も。

 

 再建に当たり、高い壁の撤去も提案されたが、2度とこんな過ちを繰り返さない戒めとしてそれは残すことにし、いくつかある扉をすべてオープンにして、いつでもあちらとこちらを行き来出来るようにした。


 そして、クイーンシティはどんどん整備されて行く。




 約1年が過ぎて―――


 ここは自然保護区のすぐそばにある、なだらかな丘を擁した国立公園。

 その丘の上で、何組かの家族がピクニックを楽しんでいる。

 あのときの約束どおり、怜が呼びかけて皆でやってきたのだ。


 璃空の所には男の子が、忠士には女の子が、それぞれ授かった。

 そうして、晃一と京之助の所には、男の子が。これはクイーンシティに男子が産まれなくなってから、実に十数年ぶりの事だった。

 クイーンたちの喜びようは計り知れなかった。

 魯庵の所は第1子が女の子だったのだが、なんとただいま2人目がお腹にいるとのことで、今回は不参加だ。



 やはり忠士の子煩悩ぶりは、璃空の言った通りのもので、時々タミーが大きなため息をついているほどだ。今も初めて寝返りをうった我が子を、世界で一番すばらしい寝返りだー、とべた褒めして、タミーの失笑を買っている。

「タミー、タミー、見たか? 今の寝返り! あ! また寝返りしたー。やっぱうちの子サイコーだよな」

「…はいはい」


 璃空も忠士ほどではないが、普段はクールな彼がときたま大慌てしていたり、抱き上げて嬉しそうにkissしたりする。それが柚月はとても楽しくて、そして嬉しかった。

 ただ、意外だったのが久瀬の反応だ。孫は可愛いと言うが、その言葉に反せず、もう目の中に入れても痛くないというほどの猫可愛がりで、こちらはときたま柚月が失笑している。


 晃一と京之助も言うに及ばす。

 大柄の晃一は最初、力加減がわからないからと、なかなか抱っこ出来なかったり。

 京之助は育児書を分析しすぎて、どれが正解かわからなくなったと言ってみたり。



「じいちゃんも呼べば良かったかな」

 璃空が我が子を抱き上げて丘を少し登ると、遠くに一角獣がのんびり歩いているのが見えた。ようやく牧場が出来るほどの数が集まり、今は試験的に放牧を行っている。

「大きくなったら、一角獣に乗りに行こうな」


 晃一と京之助のふたりも我が子を抱いて璃空の隣に歩いてくる。

「良い所だ」

「ああ、風が気持ちいい」

 そこへ、2歳になった一直を連れた手塚リーダーもやってくる。お兄ちゃん風を吹かせている一直は、ただいま第二次反抗期の真っ最中で、「まるでミニ怪獣だぜ」などと手塚は言っている。

「けど、新行内、お前の言うとおりになって、俺は本当に嬉しいぜ」

「?」

「一直が大人になる前に、くだらない戦争が終わってくれた」

「ああ、本当に。けれどこれからは、この状態をずっと維持していかなくてはならないですね。この子たちのためにも」

「大丈夫さ、キングとクイーンと、そしてバリヤならな」



 そして。

 怜のそばにはジェニーが寄り添っている。

 彼女は怜がまだパートナーを持つ気になれないと言うのをよく知っていたが、少しずつ彼の気持ちをほぐしながら距離を縮めて行った。そしていつしか彼女の隣にいることが、怜にはとても心地よいものになったのだった。

 

 ピクニックに来る時は、ブライアンとネレイと怜、パートナーいない3人組が1台の移動車で来ようと言っていたのに、自分がそれを守れず、他の2人に申し訳ないと平謝りする怜だった。

「ごめん! ブライアン、ネレイ! 俺、ジェニーちゃんとパートナーになることに決めたんだよー」

「めでたいことじゃないか? なにも謝るような事じゃないぜ」

「そうだよーおめでとー。でもさ、なんで僕もパートナーいない組に入ってるの?」

 不思議そうな顔をしてたずねるネレイ。

「え? だってネレイってまだひとりでしょ?」

 するとネレイはニッコリ笑って答えたのだった。

「まーさかー。僕、異界に奥さんと子ども置いてきてるの。ちゃんと結婚してるよ。広実指揮官に聞いてないのー? 」

 この答えには、さすがの怜とブライアンも、しばしぽかんと口を開けたままだった。




「ランチの用意が出来たわよー」

 ルエラの呼びかけに、真っ先に走り出す一直。

 その彼が急に足をとめて、空を指さす。

「あ! 一角獣!」


 皆が振り仰ぐと、2頭の一角獣が優雅に空を駆けていくのが見えた。

 それを見ながら、この平和がずっと続いてくれるようにと願いをこめる彼らだった。






ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

とりあえず「バリヤシリーズ」は、これで完結です。

これからクイーンシティがどうなるのか、本当に闘いは終わったのか。それはまたいつかお話しする機会があるかもしれません。

最初の前書きに書いたとおり、結末が見えずに見切り発車した「バリヤ4」でしたが、投稿をはじめたとたんに、次元のブラックホールが思い浮かび、あとはそこへ向かってまっしぐら~、で書き上げられました。


いつも私のつたない文章にお付き合いして下さり感謝、感謝です。

これからも細々とではありますが、何かしら書き続けていきたいと思っていますので、どうぞごひいきに。

またお目にかかれることを願いつつ。


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