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第15話


 ビィー!


 しばらくすると、コクピットのアラームが鳴って、目的地が近づいたことを知らせる。 ジェニーとゼノスの2人は素早く操縦席に戻り、あとの隊員たちも、おのおの武器や装置の確認をはじめた。


「まだ国境には少し距離がありますが、とりあえず様子見のため、この先に着陸して、そのあとは地上を進みます」

 ジェニーの声に、璃空が窓の外を見やると、あたりは一面の砂漠だった。

 しばらくすると前方のスクリーンにも外の景色が映し出される。砂漠の先に、見張り台と思われる高い塔のような建物があるのがわかった。

「あれが国境ですね。今、ピントを合わせて見ます」

 と言うと、その建物が大写しにされる。

 なるほど、拡大してみると、見張り台の建物の前には頑丈そうな門があり、鉄格子で出来た仕切りが延々と続いている。しかし、門は片側だけで、もう片方の門と、それに続くはずの鉄格子が見当たらない。

「? あれ、どうなってるんだ? 国境が破られちまったのか?」

 ゼノスの言葉にキングたちも意外そうに言う。

「そんなに簡単にやぶれるもんじゃあないぜ、あの国境は」

「だが、いったいどうして」


「でしたら、もうちょっと寄ってみますね」

 ジェニーが操作して、映像は門のあたりに寄っていく。

 よく見ると、片方の門が、まるで前方から強い力で引きちぎられたかのようになっている。その奥には街があるはずだとゼノスが言う。

 確かに建物が見えはするが、その数はまばらで、どう見ても街があるような感じではなかった。

「どうしたのかしら? 国境の位置を入力し間違えたのかしら…」

 ジェニーがつぶやくと、ゼノスはそんなことはないと首を振る。

「いや…方向も距離も間違ってはいない。だがなぜ街がないのか、わからんな」

「なら、もっと近づくしかないな。もともと俺たちは調査に来たんだから。えっと、そうだな、このあたりまで行ってくれるか? 」

 2人の会話に忠士が割り込み、最終的に進む地点を指し示した。ジェニーは「はい」と返事を返すと、静かに移動車を陸地へと下ろしていった。


 着陸を終えた移動車は、車輪を出して砂の上をすいすいと走って行く。

「へえー、この移動車って万能なんだね。もしかして潜水艦にもなるとか」

 なぜか嬉しそうに言う怜に、少し吹き出して答えるジェニー。

「ふふっ怜ってば。潜水までは出来ないけど、船みたいに水の上も走れるわよ」

「! ヒューウ」

 まさかと思っていた水上もいけると聞いて、口笛を吹く怜。

「ヒューヒュー」

 ネレイも調子に乗って両手の親指を立てたりしている。

 2人がふざけているうちに、目的地点まで着いたのだろう、少しガクンと揺れたあと移動車が停止した。そのあとジェニーは忙しく機器を触っていたが、やがてそれも終わる。

「お待たせしました、到着です」

 ジェニーが振り向いて言う。それに答えて忠士が指示を出した。

「よーし。ではこれから調査開始。見たところこのあたりには身を隠す場所がない。そのため魯庵とネレイ以外は、護衛アンドロイドを2体配置。加えて第4チームは戦闘アンドロイドも1体つけていくように」

「「はい!」」

「ラジャ」

「了解」


 するすると開いた移動車のドアから、忠士に言われたとおりのロボットと共に、隊員たちは外へ降り立った。

 目の前には映像よりも鮮明に、さっき見た通りの光景が広がっている。

 その中でひときわ目立つ、見張りの建物と、そして。

 片側だけ引きちぎられた大きな門と鉄格子。

 目をこらすと、遠くにも建物があるが、数は少なく、破壊されたようなものもある。不思議なことに、壊れた建築物は皆一様に、国境とは反対側に同じ向きに倒れている。まるで大風に押し倒されたか、もしくは何かに引きずられたかのように。

「街を破壊するなら徹底的にやれってんだ。なんでこんな中途半端な…」

 キングの1人がつぶやいたとおり、その破壊はまるで気まぐれで行ったようにとりとめがない。


 ゼノスが率先してひとり高い建物に上って行った。しばらくして頂上の窓から顔を出し、叫ぶ。

「ここには人っ子1人いないぜー」

「わかった」

「降りていくときにもう一度確認するが…。?! 上だ!」

 外を見ながら答えていたゼノスが、また叫んだ。


 キューウウウ…


 何かか落下するような音と共に、戦闘アンドロイドが空から現れた。

 ドドドッ

 素早く構えたマシンガンでゼノスが攻撃する。1体は打ち落とされたが、建物の反対側にいたもう1体が攻撃を仕掛けてきた。

 ドォン!

 頂上の窓に命中したロボットからの攻撃に、上がる噴煙。

「ゼノス!」

 叫ぶ隊員にも容赦なく空中からの攻撃が落ちて来る。

 しかし2体の護衛アンドロイドは、360度すべての方向を抜かりなく防いでくれる。

 そのため彼らは思う存分攻撃に専念できるのだった。


「ゼノス、大丈夫か?」

 敵のアンドロイドを難なく破壊したあと、璃空が見張り台に声をかけると、思ってもみない所から聞こえる声。

「どこ見てるんだ? 俺ならとっくに降りてるぜ」

「いつの間に…」

 見ると、ゼノスは下にある出入り口でニヤニヤしながらこっちを見ていた。

「今のが跳躍型アンドロイドか?」

「ああ、そうだ。やはりまだ国境のあたりに残っていたんだな。もうおしまいか、いや、またおいでなすったぜ」

 すると今度はかなりの数の落下音が聞こえる。

 璃空は素早く第4チームに声をかける。

「第4チーム! すぐに移動車へ!」

 第4チームのメンバーも戦えるのだが、今は調査のためにあらゆる機器を持ったり身につけたりしている。それらが壊れてしまうのを防ぐため、彼らには移動車へ戻るようにと言ったのだった。

 護衛アンドロイドと戦闘アンドロイドに守られながら、忠士とネレイを除く第4チームの隊員が次々に移動車へと戻って行った。


「よーし! これからがゼノス隊の腕の見せ所だぜぇ! みんな久しぶりに大暴れしようぜー」

「任せとけって!」

 ゼノスの言葉に、意気揚々と飛び出して行くゼノス隊の面々。

「第1チームだって最高だぜぇい!」

 怜がゼノスに対抗するように飛び出して行き、空中にいるロボットに的確に攻撃を仕掛ける。

「お! やるじゃねえか、怜」

「あったりまえだよー」

 しばらくするとほとんどのロボットがいったん地上に降り立ち、そしてまた飛び上がる。


 そのタイミングを狙ってジェニーがライフルを撃つが、弾はおしくもはずれてしまう。

「上手くいかないわ」

 すると怜が横に来て言った。

「ジェニーちゃん。ライフル競技は動くマトに弾を撃ち込むんだよね? 」

「ええ。でもそれはこんな風にいきなり出てくる訳じゃなくて、自分で合図するの。だから」

「OK~。じゃあ俺が合図になるよ」

「えっ?」

「ゼノス隊長! 援護をお願いします」

「おわっ? ああ、わかった」

 言うが早いが飛び出していく怜。そして飛び上がろうとタイミングを計っている敵めがけて銃を構える。

「ジェニーちゃん、号令かけて!」

 怜の意図がわかったジェニーは、今までとは違う目つきでライフルを構え「はい!」と、号令をかける。

 ドォン!

 ギュイーン!

 怜の攻撃で思わず飛び上がったロボットに、見事にライフルを撃ち込むジェニー。

「はい!」

 ドォン!

 ギュイーン!

「上手い上手い、その調子!」

 怜は自分の作戦が上手く行って満足そうだ。


 他の隊員たちも次々と敵ロボットを倒していくが、やはり地上では分が悪い。

「チョコマカとよく動き回るやつらだせ、まったく」

 などと愚痴をこぼしつつも、まるで弾が目に吸い込まれていくように銃を撃つブライアン。

 魯庵も結界をたくみに使って、相手の攻撃を違う敵にはじき返している。

「けっこうな数だよねー」

 ネレイも攻撃を結界ではじき返しながら言う。

「こんなもん。昔はもっと多かったもんだ」

 キングのひとりが答える。

「ひえーー。僕ひ弱だから、体力持つかな~」

 ネレイは冗談ぽく言いながら結界を張り巡らせる。


 その時だった。


 ドォン!

 空からバリヤが使う銃の音がした。

 音のする方を向いた隊員たちの目に飛び込んで来たものは…。


「あれは…」

「ユニコーン…」

 ヨロイのようなものを身につけて、バリヤ戦闘隊員をその背に乗せ、空をかけてくる一角獣の姿だった。





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