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すずらんと月  作者: 桜音
8/23

第八話

 チュンチュン。

かすかに鳥のさえずりが聞こえる。それはまるで鳥たちが歌を歌っているようであった。

 「んっ。」

鳥の歌声とカーテンの隙間から差し込む陽の光で、フィアナはようやく目を覚ました。

むくりと起き上がってはみるもののまだボーっとしている。どうやら昨日の疲れがあまり取れていないようである。

 しばらして、いつものように呼び鈴を鳴らして侍女を呼んだ。

コンコンコン。

侍女はすぐにやってきた。

「お嬢様、ユーフェです。」

「どうぞ。」

入室を許可するとユーフェがワゴンを押して入ってくる。

そのユーフェの相変わらずのそつの無さに、思わずふふっと笑がこぼれる。

「昨夜はよくお眠りになられましたか?」

そう言いながら、ユーフェが紅茶を差し出してくる。

「ええ、ユーフェが入れてくれたミルクティーのおかげでよく眠れたわ。ありがとう。」

そういいながら紅茶を受け取った。

「それはよかったです。」

「ユーフェが入れてくれる紅茶は格別ね。昨日のもそうだけれど今朝のもちょうどいい温度だわ。」

「もったいないお言葉です。」

フィアナは、寝る前と寝起きはほんの少しぬるい紅茶を好んで飲む。

しかし、ぬるいといってもぬるすぎてはいけず、その微妙な加減がとても難しい。

たとえ差し出されたものが熱すぎようがぬるすぎようが、飲み干すであろうが、フィアナが好む温度の紅茶をきちっと入れれるのはユーフェくらいなのである。

「すぐに何かお召上がりになられますか?」

「そうね、軽いものをお願いできるかしら。」

「はい、かしこまりました。」

 フィアナとユーフェの会話が終わり、フィアナが紅茶を飲み始めると、ユーフェは顔を洗うぬるま湯とタオルを用意して、軽食を頼みに部屋を出て行った。

 

 ユーフェがいなくなったことで、フィアナは思考に耽りだした。

どうやら昨日はベッドに横になって、その日の出来事を振り返っている間に寝てしまったようね。

昨日のことを思い出すとまた気分が下がっていく。

真っ青に晴れ渡っている空とは真逆で、心は大きな大きな雨雲に覆われているようだった。

そんな気分を吹っ切るようにふいと頭を一振りする。

それにしても、いい天気ね。

なんだかいつもより日差しが強いような…。

そこまで考えてはっとした。

そして、時計に目をやるともうすぐ正午になろうとしていた。

自分のあまりの寝坊っぷりにぎょっとした。

いつも7時には起きるのだ。

めったに寝坊はしないが、もし7時に起きていなければ、いつもなら8時にはユーフェが起こしてくれる。

それなのに今日は起こしに来なかったようだ。

きっと気を使ってくれたのね。

考えてみれば、昨日の自分はあまりにもひどいありさまだったに違いない。

申し訳ない事をしてしまったわね…。

そう考えると自然と苦笑が漏れた。

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