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すずらんと月  作者: 桜音


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第二十一話

少し離れてしまった噴水のふちに、今度は二人並んで座る。

ゆっくりと腰を降ろし、緊張からくるのだろう高鳴る心臓を鎮めるために、ゆったりと深呼吸をして彼の言葉を待った。 何を言われるのかと戦々恐々としていたのだが、いくら待っても言葉を発さないので、少しばかり不審に思って、ちらりと彼を盗み見ると、彼の口はきゅっと引き結ばれていて、その表情も険しいように感じられる。

怒っているのだろうか…

フィアナはそこでようやく自分の非礼を思い出した。

「あの…、先ほどは突然、失礼をいたしました。本当に申し訳ありませんでした…。」

一度口を開くと、それまで落ち着きを取り戻していた気持ちが、いっきに溢れてくるのを感じた。

口から勝手に言葉が滑り出すのを、もう止めれなかった。

「マルディーニ様には素敵なお相手がいらっしゃるのを存じてましたのに。すみません、先ほど見てしまいまして…。でも、気持ちだけは伝えようと思って…、本当に自分勝手なことをしました。」

「いや、貴方が謝る必要はない。」

放っておくとまだまだ続きそうなフィアナの言葉を遮り、グラズがようやく口を開いた。

「私には相手などおりません。先ほどの女性は恋人などではなくて、…しつこく言い寄られて困っているのです。先ほども貴方ではなくまた彼女かと思ってしまったものですから…。勘違いで貴方には大変失礼な態度をとってしまいました。ですから貴方が謝る必要はないんです。本当に申し訳なかった。」

言い淀む彼の表情は、先ほどの険しいものとは打って変わって、どこか気まずそうなものであった。

「そうでしたか…。」

グラズの話を聞いて、フィアナは少しだけホッとした。

でも、とフィアナ思う。

「あのような行動は褒められたものではありませんし、勝手に泣いてしまって、うんざりさせてしまったのは事実ですもの。ですから私の謝罪も受け取ってください。」

そう言って微笑むフィアナはあまりにも儚げだった。

グラズには、そんなフィアナが捕まえてないと消えてなくなってしまうような気がして、抱きしめたかったのだが、今は

とにかく話を進めるべきだと思った。

「貴方には誤解ばかりさせているな。」

そう言ってグラズは苦笑した。

「え、それはどういう…?」

「私は貴方にうんざりしたことなどありません。貴方がそのように思われたのは、私が溜息をついたからですか?」

問いかけてくるグラズの表情があまりにも真剣なものだったのでフィアナは返答に窮した。

はい、と答えていいものだろうか。

そう思ってのことだったが、黙っている方が失礼だろうと思い至って、一瞬の間ののちに消え入りそうな声で答えた。

「…、はい。」

いたたまれなくなって、自然と顔が下をむく。

2人の間にふと沈黙が落ちたが、しばらくすると、ふっと吐息だけで笑うのが感じられ、フィアナは自然と顔をあげていた。

すると、どこか自嘲するようなグラズが目に入った。

「あの溜息は貴方に対してではないんです。あまりの自分の不甲斐なさに情けなくなって、ついもれてしまったんです。」

このとき、フィアナにはグラズの言いたいことがよくわからなかった。

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