第十一話
その日の晩餐では、アフタヌーンティーの時のこともあり、これ以上はみんなに心配をかけまいと思い、豪華な食事を頑張って食べすすめるフィアナの姿があった。
けれども、やはり一週間もろくに食事をとっていなかったので、食が細くなってしまったのだろう。いつもよりは食べはしたものの、それでも出されたものの多くを残してしまっていた。
「ごちそうさまでした。」
フィアナは挨拶をしながら、こうして提供されることになった食材たちに、そして一生懸命作ってくれたシェフたちに、残してしまってごめんなさい、と心の中で謝罪した。
どこか申し訳ないという表情をしているフィアナに気づいたダグミラスは、「いつもよりは食べれたようだね。よかった。」と声をかける。
そんなダグミラスの気遣いを申し訳なくもうれしく思いながらフィアナは淡く微笑んだ。
歓談をしながらの楽しい晩餐も、みんなが食べおわり、会話もひと段落したことでお開きとなった。
おなすみなさい、と挨拶を交わして、みんなそれぞれの部屋へと引き上げていく。
フィアナも挨拶をして部屋へと戻ろうとその道のりを進んでいると、ふいに後ろから声をかけられた。
立ち止まって振り返ると、そこにはダグミラスがたっていた。
「ダグお兄様、どうかなさいましたか?」
やや驚いたというような表情で、フィアナはダグミラスの用件を問うた。
「ああ、すまない、おどかしてしまったかい?」
おちゃらけたダグミラスの態度がおかしくて、フィアナはふふっと笑いをもらしながら答える。
「いいえ、ダグお兄様。大丈夫ですわ。」
ダグミラスはフィアナの返答を聞いて微笑んだが、次の瞬間には真剣な表情になった。
「実はフィアナに少し話があってね。遅くに申し訳ないが、このあと部屋を訪れてもいいかい?」
ダグミラスの表情の変化に緊張しながらも、フィアナはこくりと頷いた。
「ありがとう。じゃあ一度自分の部屋に戻ってから伺おう。」
そうしてダグミラスと分かれフィアナが自分の部屋に戻ってきてしばらくたったころ、部屋をノックする音が響いた。
ユーフェが対応をしに行くが、さきほど約束したダグお兄様だろうと思い、フィアナも出迎えに赴いた。ユーフェによって開かれた扉の向こうには、やはりダグミラスがいた。
「お邪魔しても?」
「ええ、もちろんですわ。」
フィアナは笑顔でダグミラスを迎え入れ、そのまま部屋を進んでいき、ダグミラスにソファーに座るようにすすめた。
「どうぞ。」
ユーフェが用意したお茶をすすめながらも、フィアナは緊張した面持ちで姿勢を正し、話を聞く体勢に入った。