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IMMORTAL BLOOD  作者: Allen
サムヌイス編:邪神の封印と神のルール
81/196

76:邪神の謎

何故、彼女は一人で戦う?












《SIDE:FLIZ》











「くっそ……!」



 思わず、悪態をつく。

戻ろうとするあたしたちに襲い掛かってきた者達……そいつらは、皆人間の姿をしていた。

いづなが刀を振るえば緑色の血が吹き出てくるし、魔物である事はわかってるんだけど―――



「ああもう!」



 掴みかかろうとして来た奴を蹴り飛ばして、あたしは叫んだ。

ダメだ、完全に人の姿をしていると、どうしても能力を使う事が出来ない。

もしもこいつらが人間だったらと思ってしまうと、分かっていても力の使用へ踏み切れないのだ。


 あたしの事を知っていてこいつらをけしかけた?

いや、そんな筈は無い。あたしが誰であるかを相手が知っていたとしても、あたしの弱点まで知ってる筈がないのだ。



「せいッ!」



 相手の腕を掴み、足を払って一本背負い。

倒れた相手の顎を蹴り砕いて、更に自分の後方へと肘を叩きつける。

そして身体を回転、肘を腹部に喰らってたたらを踏んだ相手の胸に、渾身の掌底を叩き込んだ。

捻りを加えて上手く力を伝えた掌が、二倍近い体重差があろうかと言う相手を吹き飛ばす。


 と―――ふと、背後に馴染んだ気配を感じる。



「フーちゃん、キツそうやね」

「大した事ないわよ……って、言いたい所なんだけどね」



 足を引っ張ってしまっている自覚はある。

けれど人間を殺せないと言うこの感情は、あたしの奥深くに根付いたトラウマのような物だ。

分かっていても抑えきれないし、どうする事もできない。

何より、あたし自身が人を殺したくないと願っている。



「ま、無理せんでええよ。それがフーちゃんのええ所や」

「ゴメン……それでも、行動不能にするぐらいはやるから」



 ただ足を引っ張り続けるだけじゃあたしも納得できない。

せめて相手の手足を踏み砕いてやるぐらいはしなければ。

命に別状のない範囲なら、あたしにも何とか出来る筈だ。



「迷惑かけるわね」

「お互い様やって」



 小さく笑い合い、そして駆ける。

近くにいた相手へと一直線に駆け抜け、拳を振りかぶるようにしながら横へ。

見事にフェイントに引っかかった相手の後ろに回りこみ、あたしはそいつに足払いをかけた。

堪らず転んだ相手の足を踏み砕き、あたしは視線を左へと向ける。

そちらには、いづなへ向けて水の魔術式メモリーを放とうとしている男が一人。



「やらせないわよ!」



 いづなは魔術式に対する抵抗力が低い。

って言うか、いづなは回避優先だから防御能力が低いのよね。

あたしも似たようなものだけど、こっちは攻撃させない事を優先するからちょっと違う。


 とにかく、いづなへ向けての魔術式は止めなければならない。

あたしは能力を発動し、放たれようとしていた水の槍を一気に蒸発させ―――瞬間、爆発が起きて男は吹き飛んでいた。



「あたし以外にやる奴見た事無いわね、水蒸気爆発……」



 気体って言うのは、固体や液体よりも遥かに体積がある。

その為、纏まった量の水を一気に蒸発させると爆発のような物が起きるのだ。

少量でも近距離ならそれなりの威力の爆発になる。

現に、吹っ飛んだ男の右腕は拉げちゃってるわね。

下手したら死んでたかもしれないし、ちょっと反省。


あと、水の量によってはこっちまで危険に晒されるので、使う時は気をつけなければならない。

まあ、爆発物なんてみんなそうだけど。


 肩を竦めつつ、魔術式で水の弾丸を作り出す。

それを相手に向かって打ち出し、着弾の直前に爆発させる―――これが、普段のあたしの使い方だ。

今回の敵はみんな水の魔術式に対する耐性が高い為か、水で直接攻撃しても正直あまり効果は無い。

なので、この水蒸気爆発を使っている訳だ。


あたしが水の魔術式を使っているのは、あたしの能力の応用範囲が広いから。

この水蒸気爆発も、昔から自分で研究して使ってきたものだ。

だから、どの程度の量でどの程度の威力になるのかは自分で分かっているし、調節できる。

あたしはこの力を人殺しに使わないために、様々な努力をしてきたのだ。

甘ちゃんだと言われようが―――



「これが、あたしの信念だっての!」



 襲い掛かってきた男の顔面に、カウンターの拳を叩きつける。

遠くから魔術式で攻撃しようとしてきた相手には能力を使用して水を爆発させ、更に近付いてきた相手へと向き直る。

放たれた右の拳に対して左手を合わせながら身体を沈みこませ、その腕を引きつつ相手のズボンを掴み、体の上を通らせるように投げ飛ばす。

おっちゃんから教わった、もう一つの技。現代的に言うなら、合気道。


 相手の力の流れに合流し、同化し、操る事。

非力なあたしでも使えるようにと、おっちゃんが選んでくれた戦闘法。

正直、最初の頃は殴りかかると投げ飛ばされるだけだったので訳が分からなかったけど。


 あたしは、煉みたいに躊躇いなく相手を攻撃できる訳ではない。

誠人みたいな身体能力がある訳でも、いづなみたいな高度な技術がある訳でもない。

特殊な才能はあるけれど、ミナや桜、椿のようには使いこなせていない。

分かってる。あたしは、あの中で一番弱い。


 けれど……それでも、あたしはあたしを曲げない。



「おりゃあッ!」



 振り下ろされた剣を流しつつ、下に潜り込んだ位置から真上へと掌底を放つ。

容赦なく顎を打ち据え、相手の脳味噌を揺らす―――魔物とは言え、体の作りが人間なら弱点も大差ないらしい。

気絶した相手を投げ飛ばし、向かってきた相手の権勢にしながら、あたしは駆ける。

恨めしく思えるこの小柄な身体だけれど、おっちゃんは短所を長所に変える考え方を教えてくれた。

要するに、的が小さいって事だ。

あたしは投げ飛ばした男の影に隠れながら、襲いかかってきていた奴の死角へと回り込む。



「ちぇいさっ!」



 爪先でこめかみを抉るような上段回し蹴り。

ちなみにあたしの足甲は爪先部分にもしっかりと装甲があるので、当たったら相当痛い。

一瞬で意識を刈り取られたのか、そのまま気絶した男からは視線を外し、周囲を見る―――と、どうやら、こいつが最後だったようだ。



「お疲れさん、フーちゃん」

「そっちもね。ゴメン、足引っ張っちゃって」

「何言うとるん。最終的に、倒した敵の数はフーちゃんのほうが上やで」



 言われて、辺りに転がっている連中を見てみる。

確かに、あたしの方が四、五人多いみたいだけど、結局誰も死んではいない。

これ、倒したって言うべきなのかしら。まあ、一応戦闘不能にはなってるけど。



「さてと、こん中に魔人がいたんかどうかはよう分からんけど、正直手応えは全然なかったなぁ」

「そうね……魔人って言ってみれば邪神の眷族の幹部みたいな物でしょ?

流石に、それがここまで弱いって事は無いと思うけど」

「参謀っちゅー可能性はあるねんけど、それやったらわざわざ前線に出てくる理由もあらへんしなぁ」



 むむむ、と腕を組んで首を傾げながらいづなは呟く。

正直、そのポーズは胸が強調されるからやめて欲しいんだけど。

しかし、どちらにしろ今はあまり悩んでいる場合じゃない。

向こうには椿がいるんだし、まず奇襲されても大丈夫だとは思うけど、とりあえずさっさと合流はしておきたいしね。



「いづな、考えるのは後にしましょ」

「せやね。どうせ、敵さんは向こうからやって来る訳やし」



 肩を竦めつつ嘆息し、いづなは歩き始める。

その後に続きながら、あたしはふと疑問の声を上げた。



「そういえば、ジェイとかアルシェールさんは何処にいるのかしら?」

「煉君と同じ所か、はたまた別か。姿を現さないんは、それなりに理由があるからやと思うで?」

「うーん……」



 正直、あの人達ならこの町ごと魔人を消し飛ばせると思うんだけど。

あたしたちが来る前にやるタイミング位はあった筈よね?

何を考えているのかしら、一体。

と―――そんな事を考えながら前へと視線を向けた時、その先に見知った二人の姿を発見した。



「お、まーくん!」

「それと……今は椿かしら?」



 あたしたちの方に走ってくるのは、誠人と椿だと思われる二人。

きちんと左側で髪を結っているので、まず間違いはないだろう。

向こうはもうこちらの姿を見つけていたのか、さっさとこちらへ駆け寄ってくる。



「お前たちも襲われていたのか……大丈夫か?」

「ん、問題はあらへんよ。そっちも大丈夫そうやね」

「うむ。ワタシにはそもそも奇襲など通用せんからな」



 不敵な笑みを浮かべながら言う椿に、小さく苦笑する。

椿の《未来視》の前では、奇襲など何の意味もない。

相手からあらかじめ予定を教えられているようなものだ。



「それで、お前たちはどの程度状況を掴んでいる?」

「まあ、大体は掴めとると思うで。ジェイさんからっぽい伝言も貰うたしな」

「何?」



 誠人が眉根にしわを寄せる。

まあ、無理はないだろう。今まで、全く音沙汰が無かった訳だし。



「リルリルからの伝言や。この町には邪神の眷属……魔人が紛れ込んどって、そいつらを倒さんとどんどん邪神が強くなってまうらしいんや」

「……経緯は良く分からんが、了解した。先程戦った妙に強いギルマンはその魔人とやらか」

「おん? もう倒してもうたんか」



 流石、うちのメンバーの中でも戦闘火力は随一の二人だわね。

この二人なら、魔人が相手でも引けはとらないか。


 魔人ってのは幾人にも憑依して体を増やすらしいから、倒すべきなのがそいつだけって訳は無いでしょうけど……他は、どこにいるのかしら?

……って、あれ?



「ねえ二人とも、ミナは何処へ行ったの?」



 いつも会話に参加してこないから気づかなかったけど、ミナの姿が見当たらなかった。

こっちに来た時も二人だったし、ミナの姿は見かけていない。

確かに、最初はこの二人と一緒にいた筈なのに。

あたしの問いかけに、誠人と椿は気まずげに視線を逸らした。



「実は、いつの間にかどこかに行ってしまってな」

「は?」

「ちょっと行ってくると言って、そのままどこかにな……リコリスを身に着けていたから問題は無いと思うが」



 ちょっと行ってくるって、そんな買い物みたいなノリで失踪したの!?

いや、あの子ならやりかねないとは思うけど。

でも、あの子が一人きりで行動って―――



「どういう事?」

「さあ? ワタシ達には彼女の考えている事は分からん……向こうはこちらの考えなど手に取るように分かるのだろうがな」



 そう考えてみると、ちょっとずるいなぁとは思うけど。

あの子が心の底から気を許しているのは煉だけ。

あの子の信頼と言う点に関しては、誰も勝てないだろう。

きっと煉がその場にいたならば、決して一人で動くというような事は無いだろう。

……もしかして、煉の事を探しに行ったのかしら?

何か子犬っぽい所もあるし、あながち否定できないわ。



「ま、とりあえずはミナっちと合流するんが先やな」

「そうね、でも手分けしてっていうのは危険だから―――」



 固まって行こう、と言おうとした瞬間だった。

突如として、地面に強い地響きが走ったのだ。



「うお!?」

「じ、地震!?」



 いづなが驚いた声を上げる―――が、違う。

この世界に生まれてそれなりの時間は経ってるけど、あたしはほとんど地震を体験した事は無い。

それにそもそも、地震と言うには短すぎる。

ほとんど一瞬、一秒も持続しなかったのだ。



「な、何だったんだ?」



 全員、きょろきょろと周囲を見渡す―――と。



「煙……?」



 いくつもの建物の向こう側、高い塔のようなものが見える建物の傍から煙が上がっているのが見えた。

あれって……確か、例の怪しい教会よね?

まさか―――



「……ミナっちが先走りそうな理由を思いつく人、おる?」

「いや、分からないわよ」

「右に同じく」

「煉に関連しない限りは思いつかんな」



 あれがミナかもしれない、と言うのは全員の共通意見のようだ。

でも、あの子が一人で動いて、しかもあの教会?

一体、どういう事なのだろうか?



「とにかく、行ってみるしかなさそうだな」

「せやね。ほんなら、可能な限り急ぐで!」



 いづなの言葉に、全員が頷く。

そしてあたしたちは、件の教会へと向けて駆けて行った。











《SIDE:OUT》






















《SIDE:MASATO》











 今いるメンバー全員で急ぎ、辿り着いた教会。

その庭に鎮座しているモノを見上げ、オレ達は絶句していた。



「……なあ」

「ええと……誰よ、こんなものミナに教えたのは」



 こんなもの―――というのは、オレ達の目の前にあるコレ・・

オレ達の世界の言葉で『16t』と刻まれた、巨大な金属の分銅だった。

他にも斬り裂かれた人間やギルマンの死体が転がっているが、それ以上にこの分銅が衝撃的だったのだ。



「あ、ごめんそれうちや」

「ミナにアホな事教えてんじゃないわよアンタは!」

「い、いやこれもちゃんと真面目なんやで!? これだけの質量を食らって受け止められるような敵なんておらへんやろ!?」



 近づいて見てみると、どうやら材質は鉄のようだ。

鉄の場合はオリハルコンなどと比べると遥かに燃費が良い、とはミナ自身が言っていた事である。

この間創った鉄の塔と、聖女の前で創ったオリハルコンの剣。

実は、あれの魔力消費量はほとんど変わらないらしい。

それを聞いたいづなが思いついたのが、金属の強度を度外視して純粋な質量のみで攻撃するこの創造らしい。

まあ、確かに効果的かもしれないが―――と、そんな事を考えている場合ではなかったか。



「これについての追及は後だ。ミナを追いかけるぞ」

「っと、そうだったな……どうやら、扉を強引にぶち破ったようだな」



 周囲の状況を見ながら、椿がそう口にする。

見れば、確かに扉が無理矢理破壊された形跡があった。

この奥は、確か聖堂だったか。



「よし、行ってみよか。つばきん、先行頼んでええ?」

「ああ、任された。では、行こう」



 椿が先頭に立ち、建物の中へと駆け出す。

扉を抜けた先にあるのは、広い聖堂の筈だ。

薄暗い聖堂が、オレ達の視界に入りこんでくる―――



「な……ッ!?」



 その中にあったのは、さながら地獄のような光景だった。

地面から伸びた杭の先端に突き刺さったギルマンの死体、十字架に貫かれて地面に縫い付けられている神官服の男。

中から血を垂れ流すアイアンメイデンや、座席と共に一人の女を両断したペンデュラム。

それらの中心には、いつも通りの表情で虚空を見上げているミナと、その背後に控えるリコリスの姿があった。

まさか……これを、あの二人がやったのか?



「……ミナっち?」

「―――ごめんなさい」



 ぽつりと、ミナの口から零れ落ちたのは謝罪の言葉。

気が付けばミナの瞳はこちらを向き、どこか悲しそうな色をそこに宿していた。



「あ……や、ええと。ミナっち、どうしてここにいるん?」

「……心を読んで、魔人を見つけて、追いかけた」

「っ! なら、ここに魔人がいるの!?」



 ミナの言葉に、目を細める。

やはり、この教会は敵の本拠地か、それに準ずるものだったようだ。

周囲を見渡し―――気配はないが、やはり目に付くのはあの彫像だ。



「と、そーいやあの足元にアルファベットがあるんやったね。どれどれ?」



 やはりと言うか何と言うか、まず最初に興味を示したのはいづなだった。

一応周囲を警戒しながら、オレもいづなと共に彫像の方へと近づく。

相変わらず、不気味な容姿をしているな。

その台座の部分に刻まれているのは、あの時と変わらないアルファベット。


『Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn』


 相変わらず読めないな、これは。一体何が―――ん?



「いづな、どうかしたのか?」



 その文字を凝視しているいづなに、思わず首を傾げて問いかける。

オレのその言葉に反応したのか、後ろにいた仲間達もこちらに近づいてきた。

しかしその気配も意に介さず、いづなはじっと文字を見つめ―――その表情を、蒼白な色に染めていた。



「お、おいいづな!?」

「ちょっと、どうしたのよ!?」

「は、はは……せや、この世界がうちらの世界のコピーで、神の名も向こうの世界から真似して来とるんやったら、考えられる事やったやないか」



 ぶつぶつと、半ば引き攣った笑みでいづなはそう口にする。

何だ、いづなはいったい何を言っている?



「排他的な人々、不自然な街並み、妙な人相の住人……疑問の余地も無いやないか」

「……いづな、そこには一体何が書いてあるんだ?」



 その言葉に、いづなは蒼白な表情で―――その言葉を、口にした。



「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ……あかん、これ以上は口にしたない」

「え……? 何よ、今の言葉。聞いた事も無いけど」

「多分、煉君やさくらん辺りなら知ってそうな話やね……どや、さくらん?」



 いづなに視線を向けられ、椿は首を傾げながらも桜と交代する―――途端、桜はその表情を不安そうに歪めながら声を上げた。



「ルルイエ語、です。意味は『死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり』……クトゥルフ神話の、呪文みたいな感じ、です……あの、いづなさん。この町って、やっぱり……」

「せやね……どう考えても、『インスマウスの影』をなぞらえたもんや」



 クトゥルフ神話……?

話には聞いた事があるが、詳しい内容は全く知らない。

その神話での言語が、なぜこんな所に?



「じゃ、じゃあ……ここに封印されてる邪神って、やっぱり……」

「恐らくは……ダゴンや」



 いづなは、そう言いながら彫像を見上げる。

人間とも、獣とも魚とも取れそうなその姿。

二本の足で直立してはいるが、その姿は酷くアンバランスで―――それでいて、完成している。

ダゴン……この場所に封印された邪神。そいつは、一体―――


 ―――刹那、聖堂の中に拍手の音が響き渡った。



『父なるダゴンを知る者がいるとは……中々に優秀だ』

「ッ……!」



 ゾッとするような感覚と共に、振り返る。

まるで気配を感じ取る事が出来なかったのだ。その、視線の先にいたのは―――



『成程、貴様らは皆、古き神の力を持つ者か……これは良い供物となる』

「……魔人やね。それも、大元となる本体の体」

『いかにも。我が名はドゥラッド……父なるダゴンを崇拝する司祭である』



 くぐもった声を響かせるその姿は、法衣を着た人影。

しかし、決定的に違う。それが人間であっていい筈が無い。

ドゥラッドと名乗ったそいつの顔は、緑色のにぬめる気色の悪い蛸のような形をしていたのだ。

こいつが……魔人。それも、邪神によって作り上げられた本体。

今までの魔物とは比べ物にならない、あの吸血鬼を前にした時のようなプレッシャーを感じる。

だが―――



「そっちから出てきてくれるんなら大助かりや……探す手間が省けた。ほな……アンタを倒すで」

『ほう、面白い……では、儀式の前の余興といたそうか』



 これは、チャンスだ。

ここでこの魔人を倒し、邪神復活の儀式を止めさせる。

邪神は復活させるべきではない。ここで止める―――



「―――行くでぇ、皆!」

『応!』



 周囲には魔物の気配が満ちる。

その圧力をひしひしと感じながら、オレ達は魔人へと向けて駆けた。











《SIDE:OUT》





















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