表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IMMORTAL BLOOD  作者: Allen
リオグラス編:異世界の少年と創造の少女
6/196

04:背信者

神に弓引く者。

なら、その神は何処クォ・ヴァディス










《SIDE:JEY》











第二位魔術式セカンドメモリー、《半月斧バルディッシュ》!」



 槍が魔力を放ち、斧状の魔力刃を発生させる。

破壊力に優れた斧型の変化形態・・・・・・それでも、奴らにとって見れば小枝も同然だろう。

だが―――



「《強化:身体能力リーンフォース・フィジク》!」



 俺には、装備に刻まれた魔術式メモリーがある。

ブーツ、マント、ブレストプレート。それらには、とある魔術式使いメモリーマスターによって刻まれた魔術式があるのだ。


 一般に、戦闘の方法と言うのは三種類ある。

一つが魔術式、もう一つが武技アーツ、そして最後の一つが術式武技メモリーアーツだ。

俺が使用しているのはその最後のもの。

武器や防具に刻まれた特殊な魔術式を用い、自分を強化しながら戦う戦士。

尤も、かなり高価で装備の替えも利かない為、これを扱う者はあまりいないのだが。


 ともあれ、俺はその力を使って戦う事ができる。

こんなように・・・・・・なッ!



「でりゃあああああああッ!」



 全力で振り上げた槍が、敵の振り下ろした家ほどの大きさのある剣を弾き返す。

とてつもない衝撃が身体に響いたが、そんな事を言っている場合ではない。

俺は、すぐさまその場で跳躍した。


 一瞬の後、俺の立っていた場所に巨大な鉄槌が振り下ろされる。

躱した俺は、その鉄槌の上に足を下ろし、そこから奴の腕を伝って駆け出した。



第三位魔術式サードメモリー、《死神鎌デスサイズ》!」



 斧のように槍の柄に張り付いていた刃が九十度開き、それが巨大化して死神の鎌と化す。

そのまま奴の首を―――



「―――ちッ!?」



 咄嗟に、俺はそこから跳び上がった。

剣を持ったゴーレムが、俺を斬りつけてきたのだ。

剣速は速く、しかももう一体のゴーレムに傷一つつけない。

鈍重な見てくれをしてやがる癖に、何て精密な動きをしやがる。


 そして跳躍した俺に向かい、奴らは己の胸を向け―――その部分が、両側に開いた。



「やべ―――」



 咄嗟に、槍を腕の中で回転させる。

魔力刃が広がり、初めはチャクラムのように、そして終いには槍全体を覆い尽くす盾と化す。

そしてそれと同時、奴らの胸から無数の魔力球が放たれた。


 《スターマイン》と呼ばれる、古代文明の遺跡に良く見られる兵器だ。

が・・・・・・そんなモンをゴーレムに搭載するなんてのは聞いた事も無い。



「ここを作ったのはどんなトンチキ野郎だ!」



 悪態を吐きながら、無数の衝撃を受け止める。

響き渡る大量の爆音と共に、俺は後ろに大きく吹き飛ばされた。

地面に転がって何とか衝撃を殺しながら、跳ねるように起き上がる。



「兄貴ッ!?」



 ・・・・・・気付けば、先を走っていた小僧の辺りまで飛ばされていたらしい。

だが、そんな事を気にしている暇は―――無い!



第二位魔術式セカンドメモリー、《大凧盾カイトシールド》!」



 槍を両手で縦に掲げ、大量の魔力を放出する。

瞬間、槍は両側に魔力を展開し、槍は巨大な盾と化した。

そして、俺を追うように飛んできていた砲弾を、余す事無く受け止める。



「な、ななな・・・・・・」

「間抜け面を晒してる暇は無いぞ、小僧。こいつが終わったらすぐにあの祭壇の方へ走れ!」

「あ、ああ!」



 砲撃が終わると同時に、小僧は脇目も振らずに走り出す・・・・・・躊躇うよりはいい判断だ。

俺は盾を再び鎌に戻し、頭上で回転させ始めた。

ゴーレムどもはといえば、とても巨大な鉄の塊とは思えない動きでこちらに駆けて来ている。



「ゴーレムならゴーレムらしくしてやがれってんだよッ!」



 叫び、俺は大鎌の刃を強く地面に叩きつけた。

瞬間、分離した魔力の刃が鮫の鰭のように地面を駆ける。

そしてその後ろを、祭壇を確認し戻ってきたリルが続いた。


 刃は地面をかけゴーレムの足に到達すると、そのまま奴らの足を上り始める。

それが通った後に、巨大な傷を付けながら。

大分接近されてはしまったが、足止めにはなったか。



「リル、そのでかいハンマーの方は任せたぞ!」

「わん!」



 リルの攻撃力じゃ奴らに決定打を与える事は出来ないだろうが、少なくとも足止めにはなる。

俺はリルにハンマーの方を任せ、剣の方へと駆けた。


 手の中で鎌を回転させ、巨大なチャクラムに変化させる。

俺は、それを車輪のように投げ放った。そして、跳躍。



「おおおおおおおおッ!」



 地面を駆ける大鎌はゴーレムのもう一方の足を駆け上がり、そのまま空中に投げ出された。

それを空中でキャッチし、更なる魔力を注ぎ込む。



第三位魔術式サードメモリー、《斬馬剣アウトレイジ》!」



 呼び出すのは先程使った両手剣の上位形態。

俺の身長の二倍ほどもある巨大な大剣が、魔力によって構成される。

そして―――



「へし折れやがれッ!!」



 俺を叩き落そうと振るってきた巨大な剣に、こちらから刃を叩き付けた。

重さで叩き斬る剣とは言え、魔力刃の鋭さは名剣に匹敵する。

俺の大剣は、ゴーレムのそれを容赦なく叩き斬った。

さらに、その折れた剣を相手に向かって蹴り飛ばす。



『―――っ!?』



 流石にと言うか何と言うか、ゴーレムもその衝撃に転倒した。

そして空中に投げ出された剣を足場に、俺は天井へ向けて跳躍し、さらに天井を蹴る。

向かう先は、転倒したゴーレムの頭部!



「砕け散れッ!!」



 一回転して叩きつけられた大剣は、ゴーレムの頭部と首元を見事に粉砕した。

よし、完全に粉砕して残りの核を―――



「ぎゃうん!?」

「っ、リル!?」



 響いたリルの悲鳴に、俺は咄嗟にもう一体のゴーレムの方へと視線を向けた。

リルの奴は、どうやら奴の足元を魔術式で凍らせたようだが、その隙に敵の攻撃を一発貰ったらしい。

掠った程度だろうが、あいつは回避を重点に置いている為防御能力は低い。

まあ、あの武器じゃ死なないだろうが―――



「チッ・・・・・・放って置く訳にもいかねぇか」



 足場ゴーレムに舌打ち混じりに一撃加えながら、俺は地面に転がるリルの方へと駆け寄った。

今まさにトドメの一撃を放とうとするゴーレムの攻撃圏内から、リルを抱えて逃れる。

確認した所、どうやら傷らしい傷は負っておらず、衝撃で動けなかっただけのようだ。



「ッたく・・・・・・世話焼かすんじゃねぇ」

「わう・・・・・・ごめん」



 あの程度じゃこいつは死なないが、こいつの母親こと我らが主から何を言われるか分かったモンじゃない。

まあ、こいつの氷の魔術式はそうそう破壊できる物ではないから、さっきの奴に集中―――ッ!

あの野郎ッ!?



「小僧、避けろ! 狙われてるぞ!」



 咄嗟に叫ぶ。

あのゴーレムは、折れた剣をあの小僧に向かって投げつけていたのだ。











《SIDE:OUT》





















《SIDE:REN》











「何なんだよあれ!? 巨大ロボットかよ!?」



 ぶっちゃけ見た目はそんなもんだ。胸からミサイル撃って来た辺りそんなもんだと思う。

しかしあの二人は凄いな、あの巨大ロボット相手に生身で―――



「小僧、避けろ! 狙われてるぞ!」



 はあっ!?

思わず、内心で悲鳴を上げた。

すぐさま振り返ると、俺に向かって飛んで来る半ばで折れた巨大な剣。

当たったら軽く死ねる。跡形も無く吹っ飛ぶだろう。

けど、この角度は―――



「あと、5メートル・・・・・・!」



 すぐさま向き直って全力疾走。

飛んで来る角度と回転速度から、俺がさっきまで立っていた場所が着弾地点であることが読み取れた。

だから、あと少し動けば―――



「避け―――がっ!?」



 瞬間、視界が回転した。

ぐるんぐるんと廻る世界と浮遊感を一瞬体感し、次の瞬間には衝撃と痛みが身体を突き抜ける。

ちっくしょう・・・・・・近くに落ちただけなのになんて衝撃だよ!?


 着弾地点を見てみると、そこには折れた剣は無く、俺の右前方の方に落ちている事が分かった。

地面に突き刺さる事も無ければ、着弾地点にへこみも無い。

・・・・・・この地面、一体どれだけ頑丈なんだ。



「痛ってぇな、畜生・・・・・・ん?」



 手に着いた壁を支えに立ち上がると、それがさっき俺が目指していた祭壇の石碑であった事に気が付いた。

俺をここに近寄らせたくなかったのか。一体何が―――ん、これも読めるのか?



「えーと・・・・・・『我は罪の獣。我は神に弓引く者』」



 何だ、これ。綺麗に祀られてる割には、神様に喧嘩売ってるような事が書いてある。

邪教の神殿とかなのか?



「『皿に乗る者たちに祝福を。天秤の守護者に鉄槌を。我が名は―――』」



 そうだ、これではまるで―――



「『―――背信者アポステイト』・・・・・・って、うおお!?」



 瞬間、石碑から銀の光が放たれた。


 目を焼くような光に咄嗟に目を瞑る。背後からは、兄貴の声が響いてきた。



「小僧!? テメェ、何しやがった!?」



 俺が悪いのか!?

いや、確かに俺が読んだのが原因みたいだけど!


 少しして、ようやく光が収まってくる・・・・・・目を開ければ、先程と変わらない石碑があった。

何だよ、何も起こらな・・・・・・ん? 何か下の方が光って―――



「・・・・・・え?」



 俺は、思わずそう呆然と口に出していた。

両太腿につけていたホルスター・・・・・・正確にはその中に入っているデザートイーグルのエアガンが、銀色の光を放っていたのだ。

手にとって見れば、黒いプラスチックだったはずの銃が、銀色の金属に変化している。



「ステンレスタイプになった・・・・・・って訳じゃないよな」



 弾を装填した覚えも無いのに、引き金に重さを感じる。

マガジンを取り出してみれば、BB弾を入れるような穴は無く、ただ銀色に光っている窓のようなメーターが二十あっただけだ。


 分からない、分からないけど―――



「はっ、ははは・・・・・・っ!」



 ―――気分が、高揚してる!

こいつから伝わってくる『何か』のおかげで分かる!



「こいつは・・・・・・本物だ!」



 振り返り、さっき剣を投げつけてくれやがったロボットに向き直る。

手に武器はない。狙うは頭とコックピット・・・・・・のありそうな場所!

引き金を、絞るッ!!


 二発の轟音と、手の中に残る手応え。

そして視線の先では、あの忌々しい巨大ロボットが後ろに向かって倒れて行く。



「BINGO!」



 ハッハァッ!

こっちに来てから色々流されっぱなしだったが・・・・・・最高の気分だ!











《SIDE:OUT》





















《SIDE:JEY》











 あの小僧、今何をした!?

エンシェントゴーレムをたった二発で倒したってのか!?


 エンシェントゴーレムの核の数は、最低でも二個。頭が再生していたと言う事は、正確に二つ撃ち抜いた事になる。

ただの勘か、それとも何かが見えているのか・・・・・・まあいい。ともあれ、後一体なんだ。



「リル!」

「わん! 第三位魔術式サードメモリー、《戒めの氷嵐フロストスコール》!」



 リルを中心に、白い氷の嵐が巻き起こる。

正確に対象を指定した魔術式メモリーは、ゴーレムの身体に氷を張り付かせてゆく。

殺傷能力は低いが、相手の機動力を奪う魔術式。

リルは、氷系の魔術式使いメモリーマスターだ。


 奴を潰すには、巨大な威力で纏めて核を叩き壊すしかない。

その為には大振りな一撃が必要だったのだが、奴の機動力ではそれが避けられかねない。


 奴の死角に回り、その一撃の魔術式を起動―――しようとした瞬間、先程と同じ轟音が響いた。

それと同時、ゴーレムの持っていた巨大な鉄槌が砕け散る。



「Jackpot!」



 あの小僧か・・・・・・中々いい仕事をする!

あの距離から狙ったのは信じがたい腕だが、今はそれに感謝しておこう。



最高位魔術式ファイナルメモリー・・・・・・《雷神槌トール》!」



 槍を両手で持ち、頭上に掲げる。

同時、莫大な魔力が槍から放たれ、ゴーレムの大きさに引けを取らないような巨大な鉄槌を作り出した。

雷を纏う、斧系変化形態の最高位。



「ブッ潰れろぉッ!!」



 俺は、それをゴーレムに向け全力で振り下ろした。

咄嗟に振り向き、ゴーレムはそれを両手で受け止める。

ズン、と重い音が奴の足元から響いた。


 ―――瞬間、奴の膝が先程と同じ轟音と共に、二つ同時に砕け散る。



「ハッ、ハハハハハハ!!」



 成程、こいつは掘り出し物だ!

初めてお前に感謝するぞ、エルロード!


 鉄槌の光が高まる。半ば球電と化した鉄槌は、その熱量を更に高め―――ゴーレムを、融解させながら叩き潰した。











《SIDE:OUT》





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ