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IMMORTAL BLOOD  作者: Allen
リオグラス編:異世界の少年と創造の少女
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03:彼の真意

「ザッツライト! 素晴らしい! 素晴らしい英知です!」

「・・・・・・喧嘩売ってんのかテメェは」










《SIDE:REN》











「・・・・・・この部屋で最後か」



 そう呟く兄貴の声は、どこかイライラしてるようだった。

まあ、無理も無いかもしれない。

兄貴は、どうやらここの建物にはまだ続きがあると踏んだようだったが、そこへの入り口が一向に見つからないのだ。

まあ、そういうのって簡単には見つからないようになってるもんだと思うけど。


 で、俺達が今いる場所。どうやらここは書庫のようだ。

大きな本棚がいくつも並び、読めない文字で大量の本が並んでいる。



「古代語の本か・・・・・・物によっちゃ一財産だが、持ち出す訳にはいかねぇんだよな・・・・・・」



 溜め息と共に兄貴が一人ごちる。

学術的な価値があるとされているこの遺跡は、依頼の時点で既に物品の持ち出しが禁じられていたらしい。

まあ、魔物から剥ぎ取ったものや壊れた物は別に構わないらしいけど。

壊れた物の中にもたまに掘り出し物があるらしく、兄貴やリルはそれを探していたようだ。

曰く、『美品を求める頭でっかち共には分からん』らしい。



「しかし、いかにも隠し通路とかありそうだよな、兄貴」

「そうか?」



 周囲を眺めながら、兄貴は眉根をひそめて呟く。

小説とかゲームだと、そういうのって大体本棚の裏とかにあるような気がするんだけど。


 リルは一足先に部屋の中に入って、周囲を調べていた。

罠とかが無いかどうかを確認してるらしい。

とりあえずそれらしい物は無いと言う事で、俺達も中に足を踏み入れてる訳だが。



「うーむ」



 出来るだけ兄貴から離れないようにしながら、周囲を見渡して呟く。

調べてみようとは思うんだが、俺はここに並んでいる本の文字が読めないのだ。

翻訳魔法?とか言うのは、喋る言葉しか効果が無いのか・・・・・・って、あれ?



「・・・・・・こいつは読めるな」



 もしかして、古代語とか言うのは読めないんだろうか。

俺が見つけたのは、本棚の板の部分に刻まれた文字だ。



「『白と黒の双子の蝶、互いは互いを胸に抱く』」

「―――ッ!?」

「ん、兄貴?」



 俺がそう読み上げた途端、兄貴が驚いた表情で俺の方に向き直った。

俺、何か変な事言ったか?



「双子の蝶・・・・・・」

「兄貴、何か心当たりがあるのか?」

「・・・・・・いや。それよりお前、それが読めるのか」

「ああ、翻訳魔法って便利だな」

「正しくは翻訳疎通系魔術式メモリーだ」



 メモリーってのは良く分からないんだよな・・・・・・ここから出たら教えてもらうか。

どうも、そのメモリーってのが魔法みたいなもんらしいし、男としちゃ魔法を使うのは夢の一つだ。

まあ、ともあれ今はこの本棚な訳なんだが。



「・・・・・・また、見るからに怪しいな」



 本棚を見上げて出てきたのは、そんな正直な感想だった。

段がいくつかある中、一番上の段に空いている場所が一つ、一番下の段にも空いている場所が一つ。

そして上から下まで緑の本で埋まっている中、真ん中の段にだけ黒と白の本が一冊ずつ置いてあった。


 とりあえず、その二冊の本を手に取ってみる。

これらの本も、文字を読む事が出来た。


 黒の本には、『黒き蝶は地に堕ちる』。

 白の本には、『白き蝶は天へと昇る』。

また分かりやすいヒントだ・・・・・・が。



「『互いは互いを胸に抱く』ってのが分からないんだよな・・・・・・お?」



 とりあえず、パラパラと本を捲ってみる。そうすると、これらの本には何の記述も無い事が分かった。

そしてもう一つ、真ん中辺りのページは中心に穴が開いていて、多くのページが積み重なることによって箱のようになっていると言う事だ。


 ・・・・・・もしかして、胸ってこれの事か?

なら、これの中に何かを入れればいいんだろうけど―――



「あー、リル、ちょっと来て」

「がう」



 俺の声に、リルはしっかり答えてくれた。相変わらず何言ってるのかは分からなかったけど。

しかしこの子、ヘソ出しルックで寒くないのかな。



「この辺りで、白と黒のチョウチョみたいな物を見なかった?」

「わうぅ」



 リルは首を横に振る。

うーむ、じゃあ何だろうか。

蝶、蝶・・・・・・もしかして、この本の形の事を蝶って言ってるのか?



「なら、この穴に入りそうなぐらいの大きさの白と黒の本は?」

「わふ?」



 リルは首を傾げる。

少し考えると、リルは踵を返して書庫の奥の方へと走っていった。探しに行ってくれたのか。



「おい、小僧・・・・・・お前、何か知ってるのか?」

「え? いや、単にこういう謎解きが得意なだけだけど」



 まあ、これは謎解きって言うほど難しい感じじゃないけどな。

どっちかと言えば、こういうヒントとか必要な物を探す能力の方が重要っぽい。


 しかし、この先に何があるんだろうか。

ダンジョン攻略なんてゲームの中の話ばっかりだ、本当にやるなんて思ってもみなかったから、結構楽しみでもある。



「わん!」

「お? 見つけたのか?」



 声の聞こえた方に振り向くと、リルが両手に文庫本サイズの白と黒の本を持って走ってくる所だった。

受け取って、本を調べてみる。

やっぱり中には何も書いてなく、それぞれ背表紙に、黒の方にはA、白い方にEと書かれていた。



「・・・・・・まあ、とりあえず交互になるように入れてみればいい訳か」



 背表紙の文字は分からなかったが、これだけのヒントじゃ何だか分からない。

とりあえず俺は、白い本の中に黒い文庫本を入れて上の棚に、残りは下の棚の空いている部分に押し込んだ。

すると―――



「よっしゃ、正解だぜ!」



 本棚は奥の方にスライドして行き、そこに通路が現れた。

リルが先行して中をランタンで照らしてみると、右側に下に降りる階段があるようだ。



「ほぅ・・・・・・やるじゃねぇか、小僧」

「へへっ、まあな」



 少し驚いた表情で兄貴が言う。

本職のお株を奪って怒られるかと思ったが、特に何も言ってこなかった。

この人、もしかして俺を試してたりするのか?


 ・・・・・・まあ、考えすぎだろ。



「よし、罠は無いようだな・・・・・・下に降りるぞ」



 今度は兄貴が先行し、俺は足元をしっかりと照らしながら下に降りて行った。











《SIDE:OUT》





















《SIDE:JEY》











 思ったよりも使えるようだな、この小僧は。

我らが主が持ってきた伝言も、どうやらそれなりに信用できるようだ。


 俺がこの遺跡の依頼を受けたのは、元々はこの小僧に関する情報を受け取ったからだ。

そんな情報を誰がもたらす事が出るのかと言うのは、考えるまでも無い。

こいつをこの世界に呼び寄せた神、エルロードだろう。


 我が主は奴からの伝言を受け取り、俺に伝えた。

『そこに現れる子供は、お前が捜し求めている者だ』と。


 正直、一度会った事のある奴の性格から、あまり信用はしていなかった。

眉唾物ではあるが、主を通しての伝言となると従わざるを得ない。

渋々この面倒な依頼を受けたのだが・・・・・・どうやら、ある程度は信用できるものだったらしいな。


 戦闘経験は無い・・・・・・だろう。武器のような物を持っているが、玩具だと言っていた。

だが、コイツはどうにもちぐはぐだ。

コイツは、全力疾走するリルを瞳に収め、その動きを追っていた。

常人には不可能な行為だ。獣人、特にリルの動きは俺よりもさらに素早い。



(目が良いだけか? それでも、結構な資質だが)



 目の良さはそのまま戦いに利用できる。

反射神経、動体視力が優れていると言う事は、相手の攻撃を見切る事が得意と言う事だ。



(訓練次第で上を目指せるか・・・・・・今回ばかりは奴に感謝してもいいかもな)



 後はコイツをどうやって丸め込むか・・・・・・まあ、それはその時考えればいいだろう。

 さて、どうやら階段も下に着いた様だな。

そこにあった扉を押し開け―――差し込んできた光に目を細める。



「こいつは―――」

「うおお、すげぇ!」

「がう!」



 そこにあったのは、広大なドーム状の空間だ。

先程とは比べ物にならないほどの光を放つ照明石によって、奥にある祭壇のような物が照らされている。



「・・・・・・当たり、だな。こいつは相当なもんだ」



 時期的にはいつの頃か・・・・・・恐らくは、古代文明の生き残りによって作られたのだろう。

自分達を滅ぼそうとする邪神に対抗する為に、神殺しの兵器を作り出し、相討ちとなった者達。

彼らは、邪神が倒れた後もその研究を止める事は無かった。


 結果として、彼らは文明も失った訳だが―――



「とりあえず、ここを調べなければな」



 呟き、俺はドームの中へと歩を進めた。

ここの材質も先程の建物と同じ、途方も無く頑丈な石材だ・・・・・・あれは魔術式メモリーを刻んだが故の効果だが。

この空間を作るだけでも、相当な技術が組み込まれているはずだ。


 ならば、ここを作り出した目的とは一体なんだろうか。



「・・・・・・ま、調べるべきはあれだろうな」



 奥にある祭壇を見据える。

遠目には石碑のようなものが置いてあるようだが、ここからはよく分からない。



「わん」

「・・・・・・そうだな。リル、先行してくれ」



 罠などの探知や解除はリルの方が遥かに優れている。

出来ない仕事を無理にやる事に意味は無い。


 俺の言葉に頷いたリルは、走って祭壇へと近づき―――っ!?



「なっ、地震か!?」

「ちッ・・・・・・小僧、お前もリルの方へ走れ!」



 小僧の背中をはたき、俺は入り口へと向き直る。

いや・・・・・・入り口の傍で、天井を支えるように控えていた二体の像へとだ。

巨大な剣と鉄槌を装備していた二体の像は―――今、まさに動き出そうとしていた。



「エンシェントゴーレムか・・・・・・! 発動条件が厳しすぎるぞ!」



 ゴーレム系でも最上位レベルのSクラス・・・・・・古代の技術で作られた、破壊不可能と言われるゴーレム。

奴らは複数の核を持ち、それらを同時に破壊できなくばすぐさま再生すると言う能力を持つ。

要するに―――



「最悪だな、畜生め!」



 俺は槍を構え、奴らへと駆け出した。











《SIDE:OUT》






















感想受付がユーザのみになってたようなので変えてみたり。

前書きは『一言今回予告』です。

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