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IMMORTAL BLOOD  作者: Allen
リオグラス編:異世界の少年と創造の少女
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08:引き金の重さ

異常者は、己の異常に気付けないから異常者なのだ。












《SIDE:REN》











 ……何つーか、今更なんだけどファンタジーなんだよなぁ。


 リコリスに連れられて通りを歩きながら、俺はそんな事を考えていた。

手の中にあるのが近代兵器で、同じ言語で喋ってる―――ように感じる―――から実感が湧かないけど、ここは俺のいた世界ではない。



「帰る、か」



 エルロードと言う神を見つけて、願いを聞いてもらえれば俺は帰る事が出来る。

けど、本当に大丈夫なんだろうか。

願いを聞き届けられなかったら、俺はずっとここで暮らしていく事になるのか?

うちの両親や兄貴は―――



「レン様?」

「あ……リコリス? どうかした?」

「どうかしたかはこちらの台詞ですよ。何やら思いつめたような表情でしたが、大丈夫ですか?」

「あ、ああ……うん、大丈夫」



 まあ、昨日今日会ったばかりの人にこんな事を聞いても困惑されるだけだろうしな。

今は考えないようにしておこう。神様の事情なんて、考えた所で分かる筈もないし。

帰れなかった時の事は帰れなかったら考える。今は帰れる前提で行くか。



「で、リコリス。今日はどこに行く予定なんだ?」

「傭兵ギルドで簡単な依頼を受けてくる所存でございます」

「……え?」



 ええと……それは、俺達二人でって事だろうか?

ま、まああんまり厳しい依頼でもないだろうし―――



「まあ、軽めに盗賊退治と言った所でしょうか」

「……それって軽いの?」

「この土地ではBランクが妥当な所でしょう」



 いや、それって俺のランクの二つ上なんだけど。

 リコリスが言うには、この辺りにいる盗賊は冒険者の持ち物を狙ってくるものが多いらしく、その為結構な実力者がいるそうなのだ。


 ……いや、本当に大丈夫なのか、それ。



「心配ありませんわ、レン様。私がついておりますので」

「ああ、うん……そうなんだけどさ」



 彼女のランクがAだと言う事は聞いている。

だが、リコリスは女の子だし、しかも戦っている所を見た事がある訳じゃない。

信じられないと言う訳ではないが、実感が湧かないのだ。



「ふふ……では、今回私の実力をお見せするとしましょう」

「う……」



 この人、どうも人の心を読んだような言動をして来るんだよなぁ……俺ってそんなに分かりやすいか?

そんな事を考えているうちに、俺達はいつしか傭兵ギルドに到着していた。

中に入ると、喧騒が一瞬静まり返る―――が、兄貴の時とは違い、またざわざわとした雑音が戻ってきた。

ただし、俺に対する様子を窺うような視線は変わらなかったが。


 あんなモンを見せたからだろうなぁ……やっぱり考え無し過ぎたか。



「レン様、こちらにどうぞ」

「あ、ああ」



 視線を全く気にしないリコリスの後に続き、俺は奥の方にあった掲示板の前に立った。

ここには幾つもの紙が画鋲で止められている。

どうやらこれが依頼書のようで、依頼の内容や難易度、報酬などが書かれていた。

ペット探しから魔物の討伐まで、簡単なのも難しいのも大量に揃っている。

迷宮に近いという兄貴の話があっただけに、魔物討伐の内容が多いのは納得だ。


 と、俺が色々な依頼を眺めている横で、リコリスが一枚の紙に手を伸ばした。

わざわざ画鋲を外して取ったそれは、先程言っていたとおり盗賊退治の依頼。

ランクは……C。



「意外と簡単そうなのもありましたね。これで行きましょう」

「……それでも俺よりランク上なんだけど」

「問題ありませんわ」



 リコリスはしれっとそう答えると、その紙を受付の方へ持っていった。

慌てて、俺もその後を追う。



「この依頼で登録をお願いします」

「はい。個人での参加ですか?」

「いえ、パーティで。『黒狼の牙』のリコリスと申します。こちらの方もメンバーのレン様ですわ」



 受付の人は昨日とは違い、落ち着いた感じの男性だった。

おかげでスムーズに登録は行われ、俺もさっさと用紙に名前を書く事が出来た。

と、そこで男性から声がかかる。



「レン・クジョウ様にはこれを」

「あ、はい……何ですか、これ?」



 手渡されたのは銀色の腕輪だ。

何やら文字が刻まれていて、二つに開いて装着する事ができるようだ。



「ギルドに登録したものの証です。魔術式メモリーの刻印が済みましたので、お渡しします。

それは依頼の受理や完了の報告の際に必要な他、身分証明書にもなります。

紛失された場合、再発行には金貨三枚が必要となりますので、ご注意下さい」



 こっちでの物価がどんなもんだかは良く分からないが、結構な大金なんだろう。

無くさないように、極力身につけていることにしよう。



「依頼の受理は完了しました。詳細はこちらにありますのでご確認下さい。では、ご武運を」



 受付の男性の言葉を受け、俺たちはまず近くにあったテーブルに着いた。

そこで書類を広げ、内容の確認を行う。



「ふむ……最近結成されたばかりの盗賊団のようですね。団と言うよりは子供の遊戯ですか」

「えーと、記録を見る限り結構な被害が出てるような気がするんだけど」



 これでも子供の遊び扱いなのか?

被害総額に関しては相場が分からないので何とも言えないが、正直結構悲惨だと思う。

金貨三桁に達しようと言う単位だ。



「それにほら、女性冒険者が連れ去られてるって話もある。助けなきゃ拙いんじゃないのか?」

「それは確かにそうですが、女性冒険者の被害が最後にあったのは三週間以上前です。

本拠地も割れていない以上、今からでは手遅れでしょう。当の昔に奴隷として売り払われている筈です」

「奴隷なんてものがあるのか?」

「法律的には存在しませんがね。何事も、裏では好き勝手してる人間がいると言う事です」



 その言葉に、俺は思わず顔をしかめていた。いくらファンタジーと言っても、これは現実なんだ。

そういう事だって存在するんだろう―――納得は出来ないが。



「出没時刻は主に夕方から夜にかけて……街に戻ってくる疲弊した冒険者を狙うようですね。まあ、単純かつ確実な手段でしょう」

「いや、感心してる場合じゃないだろ……それで、どうやって誘き寄せるんだ?」



 おや、とリコリスが何やら驚いたように目を見開く。

 俺、何かおかしな事を言ったか?



「いえ、すんなりと『誘き寄せる』と言う言葉が出てきたので少し驚いただけです。良くお分かりになられましたね」

「まあ、そりゃ何処にいるか分からない相手なんだし、そうした方が確実だろ?」

「ふふ、そうですね」



 何が嬉しいのか面白いのか、リコリスは小さく笑みを浮かべている。

何だか、手玉に取られてるみたいな感じだな……まあ、年上なんだろうけど。



「まあ、そうですね。しかし疲弊した様子を装うのも面倒ですし……ここは、他の冒険者の方々を利用させて頂きましょうか」

「いいのか、それ?」

「助けるのですから、文句はないでしょう」



 リコリスはしれっとした表情でそう答える。

何つーか……この人の性格もだんだん分かってきたような気がするな。



「さて、それでは夕刻の辺りまで待たせていただきましょう。時間になったら出発ですわ」

「いいのかなぁ、ホント」



 何となく首を傾げながらも、俺はリコリスの後に付いて行った。





















 準備と言っても日が変わらない内に戻ってくる予定なので、簡単に水と携帯食料を持って俺たちは出発した。



「今更だけどさ、夜間の移動って危なくないのか?」

「本来なら危険です。夜間に活発に狩りをする魔物も存在しますからね。

けれど、私にとっては大した問題ではありませんので」



 何か、魔物を追い払う為の道具でもあるんだろうか。

まあリコリスは先輩だし、彼女が大丈夫だと言っているのなら大丈夫なんだろう。


 そんな事を考えていると、ふとリコリスはスカートのポケットから何かを取り出した。

手のひらの上にあるそれは……菱形の結晶体?

彼女はそれを指で摘むと、小さく囁くように声を上げた。



固有魔術式オリジナルメモリー、《光糸ストリングス》」



 言いつつ、リコリスは結晶体から指を離す。けれど、落下すると思ったそれは彼女の中指の先から伸びた光の糸によって繋ぎ止められた。

日光の中で光は掠れがちだが、その色は鮮やかな青。

そして繋ぎ止められた結晶体もまた、同じ色に輝き始める。



「リコリス、それは?」

「魔力探索用のダウジングクリスタルですね。遺跡などで魔力を持った物を発見する際などに使用します。

扱いが難しい品なのであまり利用する人間はいませんがね。

今回はこれで、近場で魔力行使の痕跡が無いかどうかを調べます」



 そういうと、リコリスは目を閉じて集中し始めた。

 また魔術式って奴か……そういえば、今オリジナルとか言ってたけど、兄貴が使ってたのとはまた違う種類なのか?

俺達の言う所の魔法だ、と兄貴は言っていた。呼び方が違うのは、この世界独特と言う事なんだろう。


 リコリスがこうしている間は俺もやる事がないので、所在無く周囲を見渡してみる。

目の前に続いているのは、舗装なんてされていない茶色い地面の道と、その両側に広がる草原、近くには森があるようだ。

また、遠くの方には山が続いているのが見える。

振り返ってみれば、そこにあるのは巨大な外壁に囲まれたゲートの街。

そして、その向こう側にそびえる銀色の杭。


 ……思わず、苦笑した。



(まだ現実感が沸いてないのか、俺は)



 とんでもない経験をして、色々と衝撃を受けた。

どれもこれも、かつていた世界では観る事の出来ない非現実。けれど、この世界では紛れも無く現実なんだ。

目を背けたって、意味は無い。



「郷に入れば郷に従え、か」

「貴方の世界の格言ですか?」

「あ……ああ、その通り」



 ふと気が付くと、リコリスが目を開き、俺の方を向いていた。

どうやら、ダウジングとやらは終わったらしい。



「この世界のルールに従う、という事ですか……そうですね、そうするべきでしょう」

「リコリス?」



 リコリスの様子に、俺は小さく首を傾げていた。

何か、さっきとは少し様子が違う。さっきとは違い、鋭く冷たい雰囲気が―――



「では、レン様。貴方には、『殺す覚悟』と『殺さない覚悟・・・・・・』が有るでしょうか?」

「殺さない、覚悟?」



 殺す覚悟って言うのは、何と無く俺も理解していた。

この世界でだって、人と人の殺し合いがある。それも、前の世界よりもよほど身近な場所に。

兄貴に付いて行く、即ち戦っていく事を決めた時点で、綺麗なままではいられないと言う事は分かっていた。


 けど、殺さない・・・・覚悟だって?



「それは、どういう?」

「……そうですね、では道すがらご説明しましょう。付いてきて下さい」



 そう言うと、リコリスは右前方、森がある方面へ歩き出した。

そして、そのまま俺の方を見ずに声を上げる。



「レン様、相手を殺害すると言う事はどのような事であるとお思いでしょう?」

「どのような事って、それは……」



 改めて言われると、説明できない。

引き金を絞れば、相手は死ぬ。そんな映画をいくつも見てきたけど、生憎とそんな事を考えた事はなかった。


 俺が答えられないのを知ると、リコリスは再び声を上げた。



「『殺す』と言う事は、即ちこれからその人物が起こすであろうあらゆる可能性を奪い去ると言う事です」

「可能性……?」

「その人物が誰かを殺すかもしれない。或いは、その人物が誰かを助けるかもしれない。そのあらゆる可能性は、貴方の一存で奪われてしまう。

また、それによって貴方は恨まれるかもしれない。或いは、感謝されるかもしれない。

たった一度、貴方がその武器の力を振るうだけで、これだけの可能性が動くのです」



 ―――思わず、俺は唾を飲み込んだ。

殺せば、誰かが救われるかもしれない。それと同時に、誰かが傷付くかもしれない。

その二つを天秤に掛けて、判断しろと言う事なのか。



「同時に、殺さなければどうなるでしょう?

その人物が持つ可能性は奪われません。そうなれば、その人物は貴方に報復に来るかもしれない。

もしくは、その人物を生かした事で傷付いた人が貴方を恨むかもしれない。

その逆もまた然り、です」

「なら……」



 それなら、俺はどうすればいいんだ?

そんなものに、正解なんて無いじゃないか。



「故に、貴方は覚悟しなくてはなりません」

「覚悟……?」

「どちらを選んだ所で、貴方にはそれ相応の責任が降りかかる。

自分の命と、他者の命。そして巻き起こる責任。全てを天秤にかけた上で、その全てを抱え込む覚悟を決めなさい。

自分の力と、誰かの力。それらを理解した上で、自分に可能な選択をしなさい。

そうしなければ―――」



 ―――貴方はいずれ、己の責任に食い殺される。

リコリスは何も言わなかったが、その続きの言葉は容易に思い浮かべる事ができた。


 ここには、責任を押し付けられる大人はいない。

いたとしても、それを当てにしてはいけない。

だから、しっかり考えて選べと……彼女は、そう言っているんだ。


 俺は、どうするだろう。

今まで、殺す事について考えなかった訳じゃない。武器を持っている以上、それを向ける相手がいるのだから。

ただ、俺は殺す事それ自体しか考えていなかった。

その結果どうなるかなんて、考えてもみなかったんだ。


 覚悟を決めただけで、エルロードに辿り着ける訳じゃない。

俺は、この世界で生きる術を学ばなくちゃならない。

そしていつか帰る為には、兄貴に付いて行かなくちゃならない……座して待つなんて甘えは、兄貴が認めるとは思えないから。


 だから、俺は―――





















 考えながら歩いている内に、俺たちは先程見えていた森の入り口まで到着していた。

鬱蒼と茂る森の中は奥を見渡す事が出来ず、茶色と緑の壁のようにすら思える。



「とりあえずここですね」

「……そういえば、リコリスはさっき何を探していたんだったっけ?」

「魔力の残滓です。過去に幾度か戦闘が行われていた場所を探していました。

この森の前は最近何度か戦闘が行われていたようですね。恐らく、この森の中から奇襲してきたのでしょう。

いえ、正確に言えば―――」



 ちらりと、リコリスは周囲に視線を走らせる。

その視線が一瞬止まったのが、左後方に有る岩場。岩場と言うより、街の建築に使う石材の置き場か?

……成程、俺にも何となく分かった。

つまり―――



「……おや、どうやらちょうどいいタイミングだったようですね」

「っ!」



 リコリスの言葉に、俺は慌てて視線を森へと戻した。

それと同時、森の奥の方からガサガサと木々を掻き分けるような音が響いてくる。

咄嗟に腰を落とし、太腿のホルスターを開けて銃を―――



『故に、貴方は覚悟しなくてはなりません』

「―――ッ!」



 脳裏に響いた言葉に、俺は一瞬手を止めていた。

銃を抜いて、相手に向けて、引き金を絞る。ただそれだけのプロセスで、相手は死ぬ。

だからこそ、それを安易に行う訳には行かない。


 そのふとした逡巡の内に、音の主は森の中から姿を現していた。



「しまっ……ん?」



 隙を晒してしまったかと焦ったが、どうやら予想していたのとは少し違う状況だったようだ。

森の中から出てこようとしているのは、ボロボロの姿になった男女合わせて三人。

どうやら、件の盗賊とやらは森の中で彼ら奇襲して、ここまで追い詰めてきたようだ。

となると―――このまま彼らを進ませるのは拙い筈だ。

何とか彼らを止めようと口を開けた瞬間、横からリコリスの声がかかった。



「予定とは少し違いましたが……レン様、ここは私が」

「リコリス?」



 同時、リコリスは右手を顔の高さまで上げる。

指先には、さっきの物と同じ光が宿り―――



「《光糸ストリングス蜘蛛の捕らえ糸スパイダー・ウェブ》」



 その言葉と共に、リコリスはその手を冒険者達へ向けて振るう。

それと同時に、指先に宿っていた光は糸となって三人の冒険者へと伸び、彼らの体に巻きついた。

そしてリコリスは、その糸を思い切り引っ張る。



「うおっ!?」

「ぐぉッ!」

「きゃあっ!?」



 三人の冒険者は、三者三様の悲鳴と共にリコリスの足元まで引っ張られていた。

そしてその一瞬後、三人の進行方向だった場所に無数の矢が降り注ぐ。

誰もいない場所に突き刺さったそれは、やはり先程の石材の置き場から飛んできていた。



「―――レン様!」

「っ、ああ!」



 場所が分かっているにもかかわらず、リコリスはあの場所に攻撃を仕掛けようとはしない。

俺を試しているのか、それとも攻撃があそこまでは届かないのか。

どちらにしろ、俺がやらなきゃいけない事に変わりは無い。


 俺は銃を引き抜き、その威力を三段階の内最大の物へと引き上げた。

ハンドガンやマグナムの威力では、石の向こうに隠れる連中に撃った所で牽制にしかならない。


 殺される訳には行かない……だから、覚悟を決める。責任を背負う、その覚悟を。



「死ぬかどうかは分からんけど……少なくとも気絶ぐらいはしておけよ!」



 そして俺は、引き金を絞った。

威力と音に比してあまりにも軽すぎる反動と共に放たれた銀色の光は、一瞬で目標まで到達する。

そして―――轟音と共に、石材の置き場は吹き飛んだ。

視力だけは自慢な俺の目は、その煙の中に一瞬だけ血煙が舞ったのを捉える。



「……大丈夫ですか、レン様」

「そんな事言うぐらいだったら最初から任せるなよ、リコリス」



 視線を戻すと、リコリスは案ずるような視線を俺に向けていた。

小さく苦笑して、俺は森の方へと視線を戻す。



「大丈夫だよ、ちゃんと考えた。俺がやらなかったら、俺たちが殺されていたかもしれない。

この人達だって、そしてこれから被害に遭うかもしれない人達だってそうだ。

けど、殺した代わりに俺はここから出てくる連中から報復を受けるかもしれないな。

俺の責任なんだから、それはしっかり受け止めるさ」

「……分かりました。では参りますよ、レン様」



 安心したような、けれど少し悲しそうなリコリスの表情。

どうせなら兄貴ぐらい厳しければいいのにな。


 とにかく、これで後戻りは出来ない。

俺はこの世界で戦っていく……その覚悟を決めた。

そう、いつか、俺たちの世界に帰る為にも。





















 後の戦闘は、殆ど一方的だった。

俺が引き金を引くまでも無く、リコリスの指先から放たれた光の糸が盗賊たちを捉え、バターのように切り裂いてゆく。

あっという間に残り一人まで追い詰めたリコリスは、情報を引き出すために戦闘をそこで終わらせた。


 引き出した情報によれば、盗賊たちはこれでほぼ全員だったらしい。

アジトの位置も割り出し、そこに向かうのかと思ったが、後はギルドに任せるだけでもいいらしい。

金品を押収するのは俺達だけじゃ無理そうだから、だそうだ。


 そして、俺が撃った場所だが……あそこには八人の盗賊が隠れていた。

が、俺の一撃で吹き飛ぶか、或いは打ち上げられた石材に潰されたかで、生き残ったのは二人のみ。

胃の下の辺りが重くなった錯覚を覚えたが、それでもアレは間違いではなかったと確信できる。


 とにかく、今日は疲れた。

初めての仕事にしちゃ、ちょっと重かったと思う。

兄貴が何か言っていたが、それを気にする余裕も無かった俺は、さっさとベッドに入って眠りに就くのだった。











《SIDE:OUT》





















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