00-1:プロローグ
それでは始めよう。
自分勝手な神様の物語を。
《SIDE:???》
「―――世界のバランスはね、既に狂い始めているんだよ」
そう言って、僕は嗤う。
目の前にいながらいない相手に対し、その笑みを見せ付けるようにして。
「世界法則は絶対だ。新たな魔術式を刻める僕らですら、それに抗う事はできない」
「だが現に、未だ世界は安定している」
そう言って、目の前の女は僕に食って掛かる。
まあ仕方ないだろうね。彼女も、それを忘れてしまっているのだから。
「それは僕がここにいないからさ。この座にいなければ、天秤の秤に乗った事にはならない」
「普段出歩いているのはその為か」
「それより、君は随分と我侭な事を言うね。奴らを倒したいけど、世界を崩したくないと」
分からなくは無いけど、正直な所無理な話だ。
『僕ら』と言う錘は、あまりにも大きすぎる。
僕が座に乗れば、世界法則は新たな『奴ら』を用意して安定を図るだろう。
そこに巣食ってしまったものを取り出すのは、実質不可能だ。
「・・・・・・けど、方法が無い訳じゃない」
「何だと?」
彼女は顔を上げる。
根は真直ぐな彼女の事だ、食いついて来ない筈が無い。
「僕の力で、駒を用意しよう。バランス良く乗せながら、いかに相手を追い詰めて行くかのゲームだ」
「ふざけている場合では―――」
「そうだね、ふざけている場合ではないよ?
君の駒はもうすぐ使い物にならなくなる。奴らと戦うつもりなら、それは困るでしょう?」
押し黙る彼女に、僕は小さく笑みを浮かべた。
奴らは、世界にとって必要なくせに世界を食い破ろうとする厄介な存在だ。
まあ、それだけなら問題なかったんだけどね。
「世界に希望を配布しよう。その内のどれだけが僕達の元に辿り着くか。そしてどれだけが、僕らを超えて世界の真実に辿り着くか。天秤に乗らずに害悪を排除する事が出来るのなら、問題は無いだろう?」
「そんな事が・・・・・・可能なのか?」
「そうさ。加護を受けたとしても秤には乗らない。祝福を受けない限りはね」
「この世界の者に、祝福を与えないつもりか!」
激昂し、吼える彼女を小さく嗤う。
堅物だ。彼女ももう一人も、この世界の民を愛しすぎている。
まあ、それこそが彼女達の在り方なのだろうけど。
「怖いなぁ。忘れたのかい、僕の持つ力をさ」
「何?」
「見ててごらんよ。きっと、君も気に入るからさ」
言って、僕は歩き出す。
世界はそうして姿を変える。
―――次に見えた景色は、ただただ喧騒だった。
《SIDE:OUT》
知ってる方はまた会いました、初めましての方は初めまして、Allenと申します。
実に九年ぶりぐらいのオリジナルなので若干もたついてはおりますが、まったりと更新して行きたいと思います。