29.何より大切な人とともに…
アラタ「はぁ…はぁ…っ」
苦しい呼吸も無視して、必死に森を走り回って探した。
ザザッーー。
その時、視界の先で、大きな物音がしたと思ったら、
髪をなびかせて走る…あの子の後ろ姿を見つけた。
やっと…会えた!!
アラタ「ひなた!!!」
気づいたら思いきり叫んでた。振り向いて欲しくて。
ひなた「え?…あれ?アラタくんだ。久しぶり~」
振り向いて不思議そうな顔をしたと思ったら、クスッと微笑んだ。
アラタ(あぁ…ずっと見たかったひなたの笑顔だ)
色んな感情が…想いが込み上げてきた。
アラタ「…ずっと会いたかったよ」
ひなた「うん、私も会えて嬉しいよ」
応えるようによりにこりと微笑んだ。
アラタ「ひなた、俺…」
ひなた「あ、でも…ちょ~っとだけ、待って?アラタくん。今…」
ドゴーーンッーー!!!
轟音とともに辺り一帯の樹木をなぎ倒し、
巨大な蜘蛛がひなたの来た先から姿を現した。
ひなた「まだ戦闘中なんだ~」
ひなたを認識した巨大な蜘蛛がひなたの背後から狙いを定め、
ひなたに糸を無数に放出する。
アラタ「ひなたっ!!!」
危険を知らせようと叫んだ。
…が、ひなたはそれを双剣でいとも簡単に全て弾いた。
ひなた「アラタくん、ちょっと待ってね。
今、片づけちゃうから。」
振り向いてそう言うと、すぐに巨大な蜘蛛に向き合った。
そして、双剣を胸元でクロスさせて構える。
すると、その足元から強い魔力の波動が螺旋状に噴き出す。
ひなた「己の罪を償うがいい…
『青き王の絶対なる裁き』
…!!」
クロスさせた双剣を左右に斬るように振ると、
そこから放たれた巨大な衝撃波が巨大な蜘蛛を襲い、
それに触れた巨大な蜘蛛が冷気に氷漬けにされ、
その後すぐ、ガラスが砕けるような音とともに、
巨大な蜘蛛の体が粉々に砕け散った。
そしてその場にはただ、
雪のように周囲にキラキラと氷の破片だけが静かに舞った
神秘的な光景が広がった。
アラタ(あぁ…あの時と同じだ。
アークベルの大聖堂でひなたが黒ローブの男どもを倒したあの時と。
やっぱり、ひなただ。)
前の出来事を思い出し、思わずクスッと微笑んだ。
ひなた「ふぅ~…終わった」
巨大な蜘蛛の消滅を見届けると、双剣を腰の鞘へと収める。
アラタ「ひなたっ!!!」
ガバッと勢いよくひなたに抱きつく。
ひなた「わっ!! え?…え??」
びっくりして目をぱちくりさせて戸惑うひなた。
アラタ「なんであんな急にいなくなったんだよ!!あの時!!」
ひなた「あの時…?」
アラタ「そうだよ、あの時!!
ひなたが魔王倒してゲームクリアして、
神様が俺たちを『はじめから』にさせて戻して、
俺があの郊外の家から開始になって…。
そこにお前、来たじゃん。あの時だよ」
ひなた「…。あぁ~あの時かぁ。」
考えていたのか、少しの間を置いて思い出したように話す。
ひなた「だってアラタくん、私のこと覚えてなかったみたいだし。
それに、前に普通の暮らしがしてみたいって
アラタくん言ってたの思い出して。
…ほら、私といたら今みたいに戦闘になって、
普通の暮らしなんてまるでできなくなっちゃうでしょ?」
思い出しながら小首を傾げて言う。
アラタ「いいんだよ、それでも!!
俺にとってはひなたと一緒にいた時間が普通だったんだ…
当たり前だったんだよ!!!」
ちゃんと聞いて欲しくて、伝えたくて、見つめて叫んだ。
アラタ「なのにお前は、あんな去り方して…。
俺のこと、殴ってでもいいから思い出させればよかったじゃん…
勝手に行くなよ…」
恥ずかしげもなくボロボロと泣きながら、
さらにぎゅっとひなたに抱きつく。
ひなた「アラタくん…」
アラタ「あんなこと…っく…二度としたら…
許さないんだからな…っ!!」
泣きながらも震える声で必死に言う。
ひなた「うん…ごめんって。しないよ、しない。」
俺をそっと抱き返し、優しく背中をとんとんする。
アラタ「二度とだぞ!!絶対だからな!!!」
ひなた「うん、わかったよ。絶対ね」
アラタ「もう、絶対にお前のこと…離さない。
あの時みたいに、逃がしたりなんてしねーからな、一生。」
決意を表すかのように、もっとぎゅっと抱きついた。
ひなた「うん。一生、ね」
どこか柔らかな眼差しでクスッと微笑んだ。
アラタ「ひなた…好きだ。大好きだ。
俺の一番愛しい人…。
きっと、最初からお前だけだったんだ…
俺の『幸運の星』は。」
ひなたの両頬をそっと手で包み込んで引き寄せ、
優しく口づけた。
…
もしかしたら、最初から決まってたのかもしれない。
俺がこの世界に転生することも…
俺が、幸運値ー99999になって不幸でい続けたことも…
何千何百と苦しい思いをして死に戻り続けたことも…
きっと全部、お前に会うためだったんだ…ひなた。
みんなに、ただの思い込みだってバカにされたって構わない。
ここにこうして、ひなたとずっと一緒にいられるっていう事実だけが
俺には一番重要だから。大切だから。
何度も死ぬのは本当に苦しかった。痛かった。
でも、あれがあったからひなたに出会えたんだったら、
今は俺、『良かった』って思えるよ。
実はさ、俺…
幸運値ー99999のこと、
別にもうそのままでもいいやって思ってたんだ。
ひなたに会って、ひなたとたくさん一緒に過ごすようになって…
俺のこのステータスが一生直らなくて死に続けたとしても…
それでも、ひなたがずっとそばにいてくれるなら、
それでいいかなって思ってた。
俺にとって一番失いたくないのはもう、
俺の命よりも、他の何よりも…『ひなただけ』だったんだ。
だからどうか…
今もこれからも…この先の未来もずっと…
俺のそばにいてくれよな、ひなた。
俺の一番大切な人。
もう一度、そっとひなたに口づける。
俺の気持ちを…全てを伝えようとするかのように。
…
こうして、幸運値ー99999というおかしなステータスのために
死に戻り続けてた俺の人生は、
『ひなた』という、何より愛しい人と生涯を共にするという
幸せなエンディングを迎えられましたとさ。
うん。やっぱハッピーエンドが一番だよな。
な、俺だけの何より愛しい『幸運の星』、ひなた。
一生、一緒に歩いていこうな。
~END~




