19.ただ『普通に過ごす』ということ
私の笑いが落ち着いた頃、また2人で海をゆっくりと眺める。
ザーッ…ザザー…。
波の満ち引きの音が心地よく耳に聞こえてくる。
アラタ「…ほんとはさ、こうやって…
ただ、美味しい物食べて、ただ、はしゃいで遊んで…。
これが、普通なんだよな…」
海を眺めながら独り言のように呟く。
膝の上に置いた腕で腕枕をしてた顔をくるっと向け、
無言でアラタを見つめて耳を傾ける。
アラタ「…ずっと知らなかった。俺だけだったら。
ひなたがこうやってそばにいて、俺のこと守ってくれてたから、
初めて普通に過ごせて、気づけた。
…ほんと、お前のおかげだ、ひなた。」
私を見て、柔らかな眼差しで微笑んだ。
ひなた「…うん。楽しかったでしょ?今日。」
穏やかな声で返事をすると、クスッと微笑む。
アラタ「あぁ、とても。」
目を細めて嬉しそうに微笑む。
アラタ「普通って、こういうことなんだな…」
再び海を眺めてそんなことをぽつりと呟く。
ひなた「…」
そんなアラタを見つめていたら、
ふと、あることを聞いてみたくなった。
ひなた「ねぇ、アラタくん。」
アラタ「うん?なんだよ」
ひなた「もし『普通』になれたら、何したい?」
ただ、小首を傾げて尋ねる。
アラタ「…『普通』になれたら…。」
言葉を反芻すると少し間を空け…
アラタ「『普通』…って、何すればいいんだろうな…」
海を見つめてぽつりと呟く。
ひなた「アラタくんの好きなことしたらいいよ。」
そう言って、ただ微笑んだ。
アラタ「『俺の好きなことをする』、か…。」
考えてるのか、ただ海を見つめた後少しして…
アラタ「それなら…
普通に生活して、普通に友達と話して、普通に恋愛して…。
…うん。ただ、そうやって普通に過ごしてみたいな。
不幸なことが何もなくて、平和で穏やかな日常を、さ。」
ひなた「そっか。うん、それは素敵だね」
アラタを見つめて柔らかな笑みを浮かべる。
アラタ「…うん。」
はにかんだ表情で照れくさそうに笑う。
段々と日が水平線に沈んでいく。
空がオレンジ色と紺色のグラデーションに移り変わり始めた。
ひなた「マジックアワー。…綺麗だね。」
水平線と空の、そんな自然のコントラストを眺めてぽつりと呟く。
アラタ「あぁ…そうだな。」
2人でしばらく、そんな自然の絶景をのんびりと眺めていた。




