18.港町シーベルク02
アラタ「はぁ~、食ったな♪ この後はどうする?」
食べ終えて2人で満足そうにお店を出てくると、
アラタが歩きながら私に尋ねてきた。
ひなた「食後のお散歩行こうよ」
アラタ「いいな、それ。」
そして2人でブラブラと港町をゆっくり散歩する。
しれっとまた、アラタに降り注ぐ不幸を退けながら。
ひなた「あ、砂浜!!」
目の前に浜辺が見えてきて、思わずそっちへ駆けていく。
アラタ「ははっ、そんなにはしゃいで転ぶなよ~」
私の様子を見て楽しそうにクスクス笑い、後から歩いてついていく。
浜辺に到着すると、全体をぐるっと見渡した後、
いそいそと靴や靴下を脱ぎ始めて裸足になった。
アラタ「ひなた?何する気だよ。」
不思議そうにこっちを見て小首を傾げるアラタを気にも留めず、
砂浜を小走りで駆けていくと、
波の打ち寄せる浅瀬へ躊躇いなく入っていった。
ひなた「ひゃっ、冷たい~」
楽しそうに水をパシャパシャと跳ねて進む。
アラタ「おい、ひなた?!
あんま遠く行くなよ?! マジで危ないんだからな!!」
心配して浅瀬のそばまで近寄って叫ぶアラタ。
ひなた「アラタくん~えいっ!」
パシャンッーー!!
両手で海水をすくってアラタに向けて勢いよくかけた。
アラタ「うわっ?!冷たっ!! おい、何すんだよ!!」
ひなた「ほらほらほら~♪」
驚くアラタに構わず連続で海水をすくってはかけまくる。
パシャパシャパシャッーー!!
アラタ「やったな、このっ!!!」
ニヤリと笑ってアラタも反撃を開始する。
ひなた「ひゃっ!!あはは、このこのこの~~~♪」
海水を浴びて叫びながらも楽しそうに応酬する。
しばらく2人で海水のかけ合いっこをして思いきり遊んだ。
おかげで2人とも全身びっしょりと濡れたのだった。
ひなた「あはは、ずぶ濡れだね♪」
アラタ「ほんとだな」
ひなた「あっちで乾かそうよ」
少し離れた場所にある座れそうな岩場を指差した。
アラタ「そうだな」
2人で一緒に岩場に行くと、軽く服と髪を絞ってから座った。
ひなた「ふぅー、遊んだね~」
アラタ「マジそれな。
こんなに遊んだの、子供の頃以来かもしれないわ」
ひなた「楽しかったね」
アラタ「あぁ。楽しかった」
そんな他愛ないことを話して、お互いに笑う。
少しの沈黙。
ひなた「海、綺麗だね」
両膝を抱えて座り、膝に腕と顎を乗せ、
ぼーっと前方に広がる海を眺めてぽつりと呟く。
アラタ「…あぁ。」
アラタもゆっくりと前方の海を眺める。
しばらくそのまま2人でただ海を眺めた。
アラタ「…なぁ、ひなた」
ひなた「うん~?」
アラタの呼びかけに、気の抜けたような声で返事をする。
アラタ「…俺さ、本当に…初めてだ。この世界に転生してきて、
今日みたいなこんな平和でのんびりした日、過ごしたの。」
ひなた「…うん。」
ゆっくりと頷いて聴く。
アラタ「こっちの世界きてからこの幸運値のせいで、
不幸なことばかり起きてさ…。
ひどいとその場で死んでまたすぐ死に戻りさせられたりもしてた。」
海を眺めながら淡々と話す。
アラタ「痛くて苦しい思いを何度も何度も繰り返して…
転生して、死に戻って…。
嘆いたりもした。なんで俺ばっかって…。」
ひなた「…うん。」
アラタ「それを何十回、何百回って繰り返して死に戻っても
一向に終わらなくて…。
もうなんか、色々嫌になって…自暴自棄になってた。
でさ、誰かに聞いて欲しくなって、ユーザー掲示板に投稿したんだ。」
ひなた「そうだったんだね」
アラタ「でも誰もあの時まともに取り合ってくれなくて。
あれ、ほんときつかったなぁ~マジ。」
ははっと乾いた笑いをする。
ひなた「死んだら普通は死に戻ったりしないからね。
みんなきっと信じられなかったんだよ。」
アラタ「そうだな。そうかもしれないな。
でもその中で、聖女様だけは唯一、俺の話を信じてくれたんだ。」
ひなた「そっか。」
ひなた(私もそのユーザー掲示板、あの時見てたけど…
ほんと、『見てた』だけだったもんね…)
あの時のことをふと思い出して、そんなことを内心で思う。
アラタ「聖女様が俺に会ってくれるって言ってくれた時、
ほんと救われた気分になったわ」
ひなた「さすがアリシア様だよね~」
クスッと微笑む。
ひなた(あんな批判の中でも平然と名乗りを上げて、
協力するって言ったんだもんね。聖女ってみんなああなのかな?
…いや、この世界だと聖女って1人かもだけど。)
海を眺めながらアラタの話に耳を傾けつつ、そんなことを思う。
アラタ「…あのさ…ひなた。」
ひなた「ん?」
急に躊躇いがちに話しかけてきたアラタを不思議そうに見つめる。
アラタ「お前は…あの時、俺の投稿…見た?」
ひなた「え?…ええと…なんで?」
ふと気まずくなり、思わず戸惑って聞き返す。
アラタ「あ、いや、その…。」
頭を掻いて目を逸らし、明らかに動揺すると、
躊躇いがちに続けた。
アラタ「…お前も、俺の投稿…見てくれてて…
それで…もしかして、俺のこと心配して聖女様とともに
俺の元に来てくれてたんだったら…その…
嬉しいなって…思って…。」
目を逸らしたまま、少し顔を赤らめて恥ずかしそうに言う。
ひなた「…」
意外なアラタの言葉と反応に、
目をぱちくりさせ、キョトンとアラタを見つめた。
アラタ「あ、いや…な、なんでもない!!
俺が勝手に思っただけっていうか…ほんと、忘れてくれ!!!」
顔が更に赤くなり、動揺してパタパタと手を顔の前で振って
必死に誤魔化そうとするアラタ。
ひなた「…」
そんなアラタの行動を、まだ目をぱちくりさせて見つめると、
今度はクスクスと笑い出した。
ひなた「ふっ…あはは」
アラタ「…な、なんだよ…そんなに笑うなって…。」
恥ずかしそうにアラタが顔を赤らめながら文句を軽く口にする。
ひなた「あはは…うん…ごめんって。」
尚も笑いながら謝る。
アラタ「まだ笑ってるじゃん」
そう言いつつも、私を見てクスッと微笑む。
少しの間、2人で笑い合い、私の笑い声が辺りに響いた。




