16.アラタの小さな嫉妬と、次の行き先
ひなた「アラタくん、いいの?勇者様の神聖力を試さなくても。」
アラタに手首を掴まれたまま、
足早に歩くアラタの背後にそんなことを尋ねる。
アラタ「いいんだ。
あんなやつの力なんてきっとろくなことにならない。
それに…今はお前さえそばにいてくれたら、俺は別に…」
ひなた「え?アラタくん、なぁに?
後ろの方、ちょっとよく聞こえなかったよ?」
後半になるにつれ小さくなったアラタの言葉に、
私は不思議そうに小首を傾げた。
アラタ「…いや、なんでもない。大したことじゃないから…。」
背を向けて歩いたまま答えるアラタの声が、
どこか動揺したように聞こえた。
ひなた「そう?」
アラタの返答を不思議に思い、また小首を傾げるものの、
それ以上の追及はよしておいた。
…
アラタ「この後、どうしようか?」
アークベルの噴水広場に着くと、
私の手首を解いて止まり、そんなことを尋ねてきた。
ひなた「そうだね。う~ん…。」
考えつつ、噴水広場をゆっくりと見渡す。
楽しそうに2人の女性が食べ歩いてお喋りしたり、
子供たちがはしゃいで噴水の周りを駆け回ったりする姿が
視界に映った。
ふと、たまにはのんびりするのもいいかもしれないと思った。
ひなた(アラタくん、今まで不幸な出来事も多かっただろうし、
のんびりする時間もあった方がいいんじゃないかな?)
ひなた「そうだ! 港町行こうよ!
ほら、ここから南の海辺にある、港町シーベルク!」
アラタ「シーベルク? 港町か…。
うん、いいかもしれないな。」
アラタがこくりと頷くと、
早速、南行きの乗合馬車に2人で乗り込んだ。




