10.決められた運命
黒ローブの男たちは全滅し、大聖堂は静寂に包まれ、
脅威は消え去った。
ひなた「ふぅ…」
安堵のため息をつき、
双剣を下ろして腰の鞘に収めようとしたその時、
急に視界全てが歪んだ。
まるでゲームのセーブデータでもロードするように全てが歪み、
倒したはずの黒ローブの男たちも床の血も消え、
破壊された壁も物も、全てがなかったかのように
綺麗に元通りの状態へ戻っていく…。
ひなた(え…なにこれ?どうして…)
そして、さっきの戦闘がまるでなかったかのように
元に戻ると、人も物も、時が止まったように動かなくなった。
ひなた「これ…どういうこと…?」
辺りをキョロキョロと見回してみるが…、
アラタもアリシアも微動だにしない。
ひなた(私だけが動けるの?…なんで、こんなこと…)
その時、青い半透明のウィンドウ画面が目の前に現れる。
【!!システム警告!!】
ここでの運命はすでに決まっています。
あなたによる改変は認められない為、
神の力により世界の修正力が働き、
戦闘前の時間まで強制的に戻しました。
ひなた「『決まった運命』…?『世界の修正力』…?」
目の前の画面の字をなぞるようにぽつりと呟く。
ひなた「…ははっ…何それ…。
じゃあ何? 私があの黒ローブの男たちを倒したことは
『間違った運命』だって言いたいの?
本来はあいつらにこの大聖堂が滅ぼされる運命だとでも?」
思わず皮肉な笑いを浮かべ、画面のその警告に抗議するように
誰に言うでもなく言葉を放つ。
【システム】
はい。ここでの運命はすでに定められていました。
あなたがこれを変えることは
神の意向により認められない為、
世界の修正力により、あなたは先ほど世界と一緒に死亡し、
神により時間を戻されました。
もう一度死亡したくなければ、
これからは何もせず、運命に従ってください。
ひなた「…なんで…。
今まで神様は、私がゲームクリアする度にただ報酬をくれるだけで、
邪魔なんて一度もしてこなかったじゃない!!」
【システム】
はい。それはあなたの運命だからです。
ですが、あなたがアラタという青年の運命に関わることは
神の意向により許されていません。
ひなた「…アラタくん…?」
【システム】
あなたはその存在だけで、とても強い影響力を持ちます。
アラタという青年の運命も、世界も変えるほどに。
ゆえに、神はあなたがアラタという青年の運命に関わることを
禁じました。
ひなた「なにそれ。…ふざけないで!!
決められた運命?ただ従え?アラタくんに関わるな?
…元はといえば、神様がアラタくんの幸運値を
ー99999なんていうふざけた数値にしてこの世界に転生させて、
何度も死に戻りまでさせて…そうやって弄んでるくせに…っ!
でもどうせあなたたちはそんなアラタくんもことも、
ただ『決められた運命』だって言うんでしょうね…きっと!!」
不条理なこの世界に…
そのルールに…
どうしても納得できなくて、
行き場のない怒りとともに、
ただただとめどなく言葉が溢れた。
ひなた「…ははっ…
誰がそんな『決められた運命』なんかに従うもんか…」
乾いたように笑い、吐き捨てるようにぽつりと呟く。
すると突然…
ピコンーー!
そんな機械音とともに、
画面にはさっきとはまるで違う文章が表示される。
【緊急クエスト】
『世界の修正力から逃れろ!』
重要度:S
内容:神はあなたとアラタの運命が交わることを認めません。
このままでは、あなたが何度運命を変えようとしても
世界の修正力により改変されず、あなたはまた死亡します。
この運命を変えたいのであれば、
あなたとアラタの関係性を変え、
アラタの運命を上書きしてください。
達成条件:アラタの幸運値を0に戻す。
ただし今後、
神が時間を戻して助けるなどの救済措置は実行されません。
あなたが死に戻ることは二度とありません。
また、この緊急クエストに失敗した場合、
あなたの命とともに世界も崩壊する可能性があります。
受諾しますか?(はい/いいえ)
…
ひなた(死に戻らない…。
今回みたいに神様が時間を戻して救済しないって?
つまり、こういうことだよね。
『決められた運命を変えるために、
私の命を懸けられる覚悟があるか』って?)
ひなた「ふふ…挑んでやろうじゃない。
そんなの、一択に決まってるでしょ。「はい」。」
不敵な笑みを浮かべ、
迷うことなく『はい』を指でタッチする。
青い半透明のウィンドウ画面で
『クエストを受諾しました。』
と表示され、その後すぐに切り替わり、今度は…
【システム】
緊急クエストの受諾により、
一時的に運命への介入が許されました。
今後、この緊急クエストが完了するまで
神があなたとアラタの運命に干渉することはありません。
その画面の文字を読み終えた時、
画面が消えるとともに止まっていた時間も動き出し、
世界はまた、何事もなかったかのように
元の姿へと戻っていった。




