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フリージア王国備忘録<第二部>  作者: 天壱
嘲り王女と結合

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Ⅱ499.双子は見回り、



「お待ちしておりました。プライド第一王女殿下、ティアラ第二王女殿下、ステイル第一王子殿下、セドリック王弟殿下」


騎士団演習場。

王族の馬車二台を門前で迎えた騎士団長と率いる新兵に、プライド達はそれぞれ挨拶を返した。

事前に知らされていた王族の訪問だが、時間は指定されていなかった為に騎士団長であるロデリックと副団長のクラーク以外は全員が新兵だった。

他の騎士達が演習に集中する最中、新兵だけでも王族を迎えるに充分な人数が王族達を出迎えた。一人一人が順々に馬車から降りてくる中で、整列する新兵達も珍しく大勢揃う王族に姿勢を張り詰めさせる。


ただでさえ騎士団長と副団長自らの出迎えというだけでも大事。プライドが近衛騎士として背後に連れている騎士すら、自分達にとっては上官でもある隊長格。しかも今揃っているのは二人揃って一番隊の隊長副隊長だ。

新兵でも憧れる者が多い一番隊の頂点二人。そしてその二人が守る、騎士団でも憧れない者はいないと言える第一王女だ。

王族姉弟妹だけでも揃っていることが最近では珍しくなってきている。ハナズオ連合王国のセドリックも単独ではいまだに時々演習視察に訪れることはあるが、その四人がずらりと揃っていることは珍しい。

そんな豪華な面々に対し、緊張するなと言う方が無理な話だった。

しかし、最後の最後に馬車から降りて来た少年二人が地面に足をつければ、ほんの少しだが騎士達は気付かれないように呼吸を再開させた。

騎士団長から報せは受けていた、今日セドリック王弟と共に視察へ訪れるその下働き見習い二人という客人に。


「うわぁぁあぁぁぁすごい……クロイ、騎士が、騎士様がこんなにいるよ!」

「いやそりゃいるでしょ騎士団演習場なんだから。……ちょっとディオス、はやくそこどいて」

口を大きく「あ」の形に開けながら馬車を降りてそのまま騎士達の整列に目を輝かせる白髪の少年に、更に続いて降りてくる少年もまた全く同じ顔だった。

来訪は知らされていた騎士達も、同じ顔の少年二人には少しだけ不意をつかれた。一瞬そういう特殊能力かとも考えたが、互いに名前を呼び合う様子とセドリックからも改めて「ディオス、クロイ、紹介するからこっちに来てくれ」と声を掛けているのを見ればすぐに別個の人間だと判断もついた。

セドリックからの呼びかけに声を揃えて返事をした二人は、騎士達の視線を前に物怖じする暇もなく駆け足でセドリックの背後に付いた。

自分の背後にくっつく二人をセドリックは背中へ手を添えゆっくりと隣まで押し出すようにして騎士達へと示して見せる。


「私の連れです。ディオス・ファーナムとクロイ・ファーナム。あくまで使用人という立場ではあるので紹介するまでもないと承知しておりますが、今日は彼らにも騎士団演習場を見学させたいという目的をあり連れましたので一応ご紹介を」

よろしくお願いします‼︎と、直後にはセドリックから放たれた紹介へ後押しするように二人は頭を下げた。

服装に違いこそあれど、そっくり同じ顔同じ声で動きに言葉まで揃えてくる双子にロデリックも一言返した。既にプライドから話を通されている以上、自分からは何も問題はない。

あくまで〝客人〟とはいえ使用人という立場の少年達に「決して演習所内や建物の中に勝手に入らないように」と注意だけ告げた後は、クラークも簡単な挨拶に一言二言のやりとりを終えた。

早速プライド達からの依頼通り騎士団演習場内の案内をとロデリックとクラークが背中を向けたその時。


「ねぇ、ねぇクロイ。この人ジャックじゃない?騎士団長⁇騎士団長だったの⁈」

「いやまさかないでしょ。ジャックはもっとなんかこう緩いっていうか……空気からして違うし。やめてよ聞こえるでしょ」

「でも顔すっごく似ているよ?!!」


……聞こえている。

そう、ロデリックは言葉を飲み込むと振り向かないままに表情筋へ僅かに力を込めた。

眉間が寄ってしまっている表情は怒っているようにも見えるが、隣に立っているクラークはそうではないとわかった上で笑ってしまう。こそこそと言い合う少年達の〝ジャック〟が誰の借り名かは極秘視察に協力したロデリックと同じくクラークもよく知っている。


更には周囲に控えていた新兵達も、その名前こそ知らないまでもアーサーが極秘視察に協力していたことと双子が騎士団長に「似ている」と語る人物となれば誰かは考えるまでもなかった。思わず自分達まで笑ってしまいそうになる中、今は引き締めなければと肩に力を込めて押さえた。

しかし、ロデリックの背中に続く王族姉弟妹は、お互い目配せで笑んだ。その背後に並ぶ近衛騎士のアランは明らかに顔が笑ってエリックと目を合わせている。エリックもこれには音には出さず苦笑してしまった。


くすくすっと両手で口を隠しながら笑うティアラに、プライドも無理もないと思いながら結んだ口角が上がりそうになる。

ステイルも予想ができたとはいえ、あまりにも絵に描いた通りのディオスの反応に眼鏡の黒縁を指で押さえたまま肩が微弱に揺れた。

セドリック一人が笑うことはなく、しかし納得したような眼差しでロデリックの背中とファーナム兄弟を見比べた。

騎士団長であるロデリックの威厳と覇気に気圧されて直接は言えなかったディオスとクロイだが、あまりにも似ているその顔に見間違いと検討づけるのは難しかった。


「セドリック様!あの人っ、あの騎士団長さんがジャックですか?!そうですよね?!」

「ディオス!!騎士団長相手に指差さないで!!捕まったらどうするの?!」

でもジャックだし、まだ決まってないでしょ‼︎とセドリックを間に言い合う二人はもうひそひそ声ですらない。

敢えて振り向かないまま一人長く深い溜息を吐くロデリックに、クラークはパンパンと背中を叩いた。「似ているらしいぞ」と当たり前のことを言われてしまえば、言い返す気にもなれなかった。アーサーと自分が似ているなどもう飽きるほど言われている。

セドリックから潜ませた声で「いやあの御方はジャックではない」と否定がやっと入るのを確認すれば、やれやれと無言のまま肩を落とした。

何故セドリックが学校の生徒を使用人に誘ったのかは知らないが、今のやり取りだけでは使用人どころかセドリックが面倒を見ているように聞こえてしまう。


双子の為に案内を任されたロデリックにより、歩きながら演習場内を説明が語られる。

説明になればディオスもクロイも口を閉じて説明一つ一つに耳を傾け指し示す方向を注視するが、また次の場所へ移動となればその合間合間を縫うようにまたコソコソと口が開かれた。そして子どもの中途半端なひそひそ話を近距離から拾い損ねる騎士でもない。


「本当にジャックじゃない??ねぇ、一回笑ってくれるかな……」

「セドリック様が嘘吐くわけないでしょ。ていうかわかってる?騎士団長って騎士で一番偉い人だよ??」

「だからクロイに言ってるんだろ!あの人なら絶対熊倒せるし‼︎似てるってクロイも思ってるくせに!」

ジャックがあんな表情したらもっと似てる、まずジャックはそういう表情しない、いま悪口言った、と。合間の度にジャックと似過ぎているとこそこそ話し合う二人の会話に、ロデリックは顰めた表情のままに片方の肩だけに力が入りそうになる。似ているとは何度も言われたことはあるが、こんな風に子どもに囁かれ続けたことはない。


ステイルとプライドから事前に、高台での演習見学は最後にと言われているが本音としては早々に彼らを案内してしまいたくなる。

繰り返される囁き声にとうとう隣の友人がくっくっと喉を鳴らして笑い始めた。クラーク、と彼にだけ聞こえるように一言諫めれば、楽し気な笑みで返された。


出会いがしらから早速ディオスとクロイから標的にされてしまったロデリックに、プライドも付いて歩きながら申し訳ない気持ちになる。

最初はアーサーとロデリックが似ているという事実に純粋に微笑ましい気持ちになったが、セドリックが弁明しても変わらずディオスからの興味は止まない。

ここは別の話題で興味を引けないだろうかと考えると、そこで背後に続くアランから珍しく声が放たれた。


「おっ、見ろ見ろ」

普段自分とプライド達だけの時は話題に乗るが、公的な場は護衛任務に徹してあまり自分から発言に入らないアランからのファーナム兄弟への呼びかけにプライドも一緒に振り向いた。

ディオスとクロイもくるりと顔を向ける中、アランが指差したのは演習所の一角だった。既に大勢の騎士が演習を行っている中で、たった一人を指差す先にはファーナム兄弟もよく知る人物の一人が今も声を張っている。


「三番隊‼︎四番隊に後れを取るな!二班と三十二班が全滅するぞ‼︎第一小隊と第三小隊を中心にもう一度各小隊で纏まり、どう動くべきか再検討だ‼︎」


カラムだ。


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