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フリージア王国備忘録<第二部>  作者: 天壱
見かぎり少女と爪弾き

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Ⅱ394.騎士団は動き、


「伝令です!!騎士団長!指定された二番隊所属班の通信兵と映像が繋がりました!」

「伝令!三番隊所属班より直ちに付近別班とも合流し村へ向かうとのことです!」

「お待たせ致しました騎士団長!!七番隊いま全隊集合致しました!!」

「騎士団長!先行部隊を編成されないならば私の十番隊が演習場から出隊が可能です!」

「村の座標特定致しました!!」


騎士団演習場。

その作戦会議室では大勢の騎士が行き交い声を張り上げていた。

緊急出動令が発令した騎士団は全隊が演習を一時中断し集まる。次々と報告に振り返り駆け寄る騎士達の中心で指示を飛ばす騎士団長のロデリックは、それを上塗る響く声で指令を飛ばし続ける。


三番隊班は通信での指令を副団長のクラークが引き続き通信兵は各班待機地に通信を、四番隊班には優先遂行順をと命じる。

七番隊と十番隊騎士隊長を壁際に並び待たせ、座標の共有を的確に命じるロデリックに騎士達が円滑に行動へと移る。慌ただしさこそ激しく室内の空気を揺らし続けるが、混沌の欠片もなく誰もが命じられた司令を遵守した。


各隊へ作戦会議室への集合が呼びかけられたのは、ほんの少し前。

それまではいつも通りに騎士団演習場にいる者は課せられた演習に身を入れていた所で、突然騎士団長であるロデリック自らが収集命令を放った。

何の前兆もなく新兵達により本隊騎士へ伝令された緊急事態に演習場全体が一度は揺れた。集結する騎士隊が作戦会議室の扉を開く度、クラークが「全隊!報告後騎士団長の指示を仰げ‼︎」と指示を撃つ。


「騎士団長!現地付近に三番隊と四番隊がいるなら戦闘には一番隊が向かいます‼︎七番隊班と連携の許可をお願いします‼︎」

次々と集合する騎士隊長の意思を統合し、最終的な決定と許可を出すことも騎士団長の役目である。

救援地付近にいる騎士を動かすことを最優先にしたため、演習場からはまだ騎士隊は出ていない。出動準備が整った隊から現場の状況を鑑みて志願の声が上がる中、一番隊隊長であるアランの声は一際大きかった。


自分の胸をバンと叩き主張するアランは、自分の本隊が集合するよりも先に作戦会議室へ到着していた。

ハナズオ連合王国の王弟送迎を終えてからロデリックの元へ直行したアランもまた、騎士団の中で状況を把握している者の一人である。

人身売買組織による大規模な村人奇襲強奪。それを知ってからすぐ通信兵が所属する班へと通信兵を繋がらせた。国内に散らばった各班から、村に最も近い位置の班へ優先的に指令を通告する。

しかし村付近から動き始めている班は三番隊や四番隊の班。現在状況では確かに人身売買との戦闘に適した隊の出動も必要だとロデリックは判断する。


「一番隊は現地へ急行しろ!七番隊班はアランに従え‼︎」

ありがとうございます‼︎とアランが響かせる声を張り、直後には七番隊騎士隊長へと視線で指す。

「頼みます‼︎」と険しい顔で叫ぶアランに、七番隊騎士隊長は自身も含めた出撃人員をその場で指名する。一番隊は演習場に残っている全体の出動に対し、七番隊は同行するのも一部である。

次々と班名や個人が指定される中、アランを先頭に一番隊は馬場へと急ぎ走った。七番隊も呼ばれた騎士から次々と一番隊を追っていく。


「ロデリック!付近にも騎士班はいるが、通信兵所属班が少ない。一応指定位置班以外は急行前に付近の班へ合流するように命じた」

「ならば十番隊を散らして各班と合流し向かわせるか。半数は村の周辺包囲に動かしたい」

「先行部隊編成には待機数が少ない。十番隊なら一部でも村へ先行させるのはどうだ?一番隊よりは早い」

「山に囲まれすぎだ。範囲が広すぎる」

「数を割けないか。なら、包囲だけは八番隊にも任せるのはどうだ?三番隊四番隊‼︎今すぐ村と各班の位置情報を明記した地図を用意しろ‼︎」

クラークの指示に、続けてロデリックからも指令が飛ぶ。十番隊と八番隊の協力と十番隊は通信兵の同行をと命じれば、また大人数が次々と列を成して外へ飛び出していった。


「まさか重なるとはな……。ロデリック、一度私が預かろう。お前は先に」

「ああ……、頼んだクラーク」

立て続ける通信兵からの報告と出動隊への指示を飛ばしては情報の共有を進ませ、一通り指示を回し終えたところでのクラークの言葉にロデリックも息を吐く。あとは合流を待つばかりだと判断したところで、その場を一度副団長に任せた。

作戦会議室から席を外し、急ぎ足で騎士団長室へと向かう。

各隊への指示は終えたが、まだ彼には課題が残っている。大きい歩幅で進み、自分の部屋である騎士団長室へと扉を開ける前にノックする。

失礼致しますと声を掛けて開けば、そこには部屋主ではない人物が落ち着くことなく佇んでいた。


「お待たせ致しましたステイル様」

「いえ、僕も先ほど戻ったばかりです」


『人身売買組織です‼︎村ごと焼き払い連れ去るつもりです‼︎』

今回の情報源であるプライドの言葉を伝達した十四歳の青年に、ロデリックは深々と礼をした。

続けて簡潔に現状を報告しながらも、ステイルへ再び椅子を促した。騎士団長の椅子だけでなく客をもてなす席もあるそこに、それでもステイルは「お構いなく」と首を振る。現状を思えば腰を落ち着ける気には全くなれなかった。


ロデリックの元に瞬間移動で現れたのはやはり突然だった。


午後まで各隊の報告を騎士団長室でクラークと纏め、そこに飛び込んできたアランから報告を聞き終えたところだった。

早口で三人に現状とプライドの予知を説明したステイルだが、その後は作戦会議室までは同行もできない。十四歳の姿であった上、あくまでこれは騎士団の領域である。

プライドより先に自分が原因で潜入視察を知られるわけにもいかなければ、偶然居合わせた八年前とは状況も全く違う。

それにステイル自身、演習場内には出ずとも他にやるべきことは多かった。特殊能力を解くどころか着替えの暇もない。

プライドの所在についても伝えられたロデリックだが、騎士達には留めたままである。

あくまで極秘視察の姿である〝ジャンヌ〟をステイルと同じく自分だけの判断では騎士達に明かせない。


「……了解しました。流石です、騎士団長。僕の方からは〝見かけの若返りの特殊能力〟については時間を継続して貰うようにしました。その為、エリック副隊長がいるので大丈夫だとは思いますがアーサーはまだ十四のままです。いま、ハリソン副隊長にも報告を送りましたので間もなくノーマンと共にこちらに到着すると思います」

ロデリックの報告を聞き終え、次はステイルからも情報を共有する。

既にロデリックの指示で女王にも報告は入っているが、ステイル自らジルベールにも特殊能力に関して報告と共に延長を命じていた。もともと外周を回る為に時間の延長は伝えているが、更なる延長である。

ステイルの言葉に頷き相づちを打ちながら、ロデリックも腕を組む。

ステイルの報告では、プライドは〝既に村に降りたところで運悪く奇襲に巻き込まれて〟いる。せめてステイルに頼みプライドだけでも城に避難させられればと思うが、ステイルが聞いたという彼女の予知を考えればそれも難しい。


彼女が語った予知した生徒の詳細を聞けば、余計に。



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