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フリージア王国備忘録<第二部>  作者: 天壱
無頓着少女と水面下

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番外 男も言い訳ができない。


その日は、〝彼〟にとっても念願の日だった。


「それでは奥様、これからこちらにご案内させて頂きます」


緊張の張り詰めた部屋で、ベッドの女性は微かな声でそれに返した。

いつものように寝衣ではなく侍女達の手を借りて来客用の衣服に着替えた彼女だったが、やはり椅子に座ることも足が震え厳しかった。

細い喉を鳴らし、今にも心臓が止まりそうなほど苦し気に顔を歪める女性に、周囲に控える使用人達は誰もが同じように胸をざわめかせる。誰もが使用人として以上にベッドの女性へと心を傾けていた。


そして、扉の横に槍を持ち控える衛兵もまたその心は同じだった。

レイ達を送迎し終えてからも馬車の後始末、そして屋敷の中に戻れば客間に控えていた筈のライアーから着替えの相談まで持ちかけられた彼はやっと自分の本当の主人の部屋へ戻ってこれたばかりだった。

この家の主人だった男の服をよりにもよってレイの探し人だった男に着せるわけにもいかず自分の私服を貸したが、一度も勿体なくて袖を通すことがなかったアレがこうして役立ったなら良かったと思う。

使用人見習いだった自分が衛兵として雇われることが決まった時に、まだ元気だった夫人に祝いとして贈られた服だ。


親を亡くし田舎の路頭に迷った自分を拾い、使用人見習いとして雇ってくれた。


部屋を与え仕事を与えてくれた領主でもある男爵の家で、それは決して珍しいことではなかった。自分の前にも後にも、そういう路頭に迷う人間を積極的に使用人見習いとして雇ってくれたのがカレン家だ。

自分達の領地にいる人に等しく仕事を与えたいと強く望む夫人の意向に、カレン男爵も快く頷いた。人だけは大勢雇うカレン男爵家での給与の殆どは金銭ではない。あくまで衣食住だけ賄われる最低限の見返りと、子どもの小遣い程度だ。

しかし経験や技術を身につけた後も使用人の誰もが恩義を感じ、カレン家を離れたいとは思わなかった。



あの頃が最も幸せな時代だったと。屋敷の誰もが思う。



ある日視察に訪れた侯爵家。

カレン家が統治を任されている地を含めた広大な領地をいくつも任されるその男が、美しいと若い頃から評判だったキャロル夫人に一目で魅入られるのもそれ自体は無理もなかった。侯爵の住む城下でもそうそう見ない域の美人だ。

揺らめく宝石のような翡翠の髪も、憂いを帯びた瑠璃色の瞳も、きめ細やかな肌もその全てが侯爵の理想そのものだった。


カレン男爵へ遠出になる仕事をわざと任せ、留守の間に男爵について話をと夫人と二人きりの密室をつくることも簡単なことだった。

部屋の外へ人払いされた使用人達が部屋に入ることを許された時には、全てが取り返しのつかないことになった後。控えている間にも「領地を取り上げることも考えている」「もともとここの領地は税の徴収額も余裕がない」という侯爵の高らかな声や、それにどうかどうかと懇願する夫人の声が最初に聞こえていた。

侯爵からの呼びかけで部屋に入ったところで、ベッドの中から出てくることもできず泣き伏している夫人と、この屋敷の王とばかりにふんぞり返る侯爵に誰もが絶句した。


「何もないの」「誰にも言わないで」「今回だけだから」と泣きながら言い聞かせるように繰り返す夫人に、衛兵も他の使用人も侯爵を殴るどころか咎めることもできなかった。

夫人が夫の為に屈辱に耐え身体を差し出してまで守ろうとしているのに、自分達がそれを壊すことなどできるわけがない。

「見る目のない女だ」「いつまでも男爵の名ばかりを呼んでシラけさせられた」と言い捨て足早に去った侯爵は、本当にそれから一度も屋敷には訪れなかった。良くも悪くも夫人との〝約束〟通り、男爵家も男爵領地も変わらずそのままの繁栄を許された。


男爵待望の第一子が産まれたが、その時期はあまりにも判断に難しい曖昧な日だった。

時が経ち、人が変わった男爵に夫人が暴力を振るわれるようになっても使用人達の誰もが満足に止められない。自分達を拾ってくれたのは夫人だが、実質的にそこで快く雇い入れてくれここまで養い育て続けてくれたのは男爵だ。

間違いなく、人が変わる前の男爵は彼らにとって夫人に相応しい心優しい領主であり恩人だったのだから。



そして恩義に反し、夫人の不義を黙し続けたのも事実。



どういう理由であれ、夫人の為でも、その夫人が夫の為の沈黙だったとしても、自分達が男爵を騙し続けていたということは変えられない。

奥様は問題なく留守を守られました。体調を崩しておられますが大丈夫です。奥様のご懐妊おめでとうございます。おめでとうございます旦那様の第一子です。旦那様にも面影が見られます。特殊能力者とは流石旦那様の子です。

……誰もがあの日の悲劇を知りながら、笑顔で隠し男爵へ心にもない言葉で誤魔化し続けたのだから。


夫人や息子に侵す暴力を全て認められるわけではない。

しかし溺愛していた妻に裏切られ、浮気相手にその事実を嬉々として告げられた男爵の心もまた人格を変貌させるに充分だということもよく理解できた。

何より、夫人が最もそこに使用人達の立ち入りを望まなかった。

私は大丈夫、あの人が許さないのは当然だからと。そう言って、その日を知る使用人達全員にも固く口留めをした。あの日のことは知らなかったと言い張るように、そう夫人が命じた理由は行く当てのない使用人達が解雇されないように庇っただけではなかった。




『あの人が私だけでなく貴方達にまで〝隠されていた〟と知ったら、本当に心まで一人になってしまうから』




いくら暴力を受けても、夫人が愛した男性は変わらなかった。

妻にも子にも憎悪を宿し、そんな恥を周囲へ打ち明けることもできず一人苛まれた男爵に唯一残されたのは、自分が家族のように接していた使用人達だけだった。

あの女は私を騙した、私の家族はどこにもいなかった、あんな悪魔をどう愛せと言うんだ。男爵としての職務に追われながら嘆き吐き捨てる主人の話を使用人達も真摯に聞き、少しでも元の男爵に戻って欲しいと願い続けたが結局それは叶わなかった。


唯一夫人の味方となることを堂々と許されたのは、本当にもっとも罪のない息子が取り返しのつかない大火傷を負わされてから。

息子を部屋に閉じ込めるようにして護り、夫の怒りを正面から一身に受け続けることを夫人が決めた。

レイの部屋前で夫へ初めて正面から対峙した夫人に、その時だけは使用人達も並んだ。


「旦那様、どうかレイ様にだけはこれ以上おやめください」「生まれて来た子に罪はありません」「レイ様はまだ貴方様を父親と思っております」「血など関係ありません、レイ様は生まれてから愛し続けた貴方の子です」「血の繋がらない我々のことも家族のように愛して下さった貴方なら」と毎日のように訴え、壁になり続けた。

たとえ夫人の望む通り事情を知っていたことを隠し続けても、夫人が使用人だけでも夫の味方として寄り添い続けることを望んでも、夫人の為にその息子だけでも守り通そうと決意した。


一年間は、それで息子だけでも守り通せた。

夫人は変わらず夫から暴力は受け続けたが、それでも息子をこれ以上傷つけないという決意は彼女を奮い立たせた。今まで口喧嘩の一つもしたことのない女性を、それこそ悪魔のように憤怒を滾らせる夫に向き合わせた。

邪魔をされればされるほど男爵の中で息子への憤りも殺意も増し、指一本出せない苛立ちが余計に夫人へ倍増してぶつけられた。

髪を切り、顔へ拳を叩きこみ、冬に水を浴びせ、夏に水も与えず衣装棚へ閉じ込め、使用人以下の奴隷のような扱いを繰り返し、そしてとうとう夫人の心よりも身体の方が限界を迎え、倒れた時。……使用人達も、限界を迎えた。


『旦那様。私達は貴方を心よりお慕いしておりました』

『奥様の意向の元、我々を養って下さったのは貴方です』

『ですが、もう貴方は変わってしまわれました』

『奥様は心から貴方を愛しております。ですが、もう我々は貴方を愛せません』

『今、この時をもって我々の主人はキャロル様です』

『解雇するというのならばどうぞご自由に。その時は、この事実を全て外に明かします』

唯一信用していた使用人に反旗を翻され、妻の部屋に入ることすら主人の自分が許されなかった。

生死の境を彷徨う夫人へ医者だけでなく屋敷中の使用人が詰め寄り安否を祈り、男爵には目もくれなかった。夫人が予期した通り男爵の味方は屋敷のどこにもいなくなった。

そして誰も視界にすら止めない男爵へと彼らの関心は消え、……その夜の内に夫人が命を懸けて守り続けようとした息子が父親にさらわれたことにもすぐには気付けなかった。


馬車を引く蹄と車輪の音に慌ててレイの部屋へ戻った使用人達は自分達の迂闊さを呪った。

結局使用人達が最も守りたかったのは息子ではなく、夫人だった。

夫人が生死の境目と聞いてから誰もその息子が父親の手にかかることを案じるよりも、夫人の部屋に詰め寄ることしか頭になくなってしまったのだから。

翌日、妙にすっきりした顔で馬一匹と共に帰って来た男爵に詰め寄れば「息子?そんなのは一年前に死んだだろう」と全てをなかったことにした。

夫人も最後の糸が切れてしまったように泣き伏し、顔も上げられなくなった。


転機が訪れたのは、それから二年後。


『坊っちゃまは生きておられるかもしれません』

使用人達に守られ、屋敷で何事もなく静かに暮らしていた夫人へ真夜中に使用人の一人が飛び込んだ。

屋敷内で孤立し、一人酒に溺れる男爵による愚痴だった。あの悪魔は結局最後まで役に立たなかった、折角アンカーソンの屋敷のある領に捨てたのに、あれから火事の一つも噂に聞かないと。そうグラグラと喉を鳴らし零す男爵の独り言を知らされた夫人は、すぐにペンを取った。


夫人からの手紙を受け、屋敷へ数年ぶりに訪れたアンカーソンもまたそこで初めてカレン家の現状を把握した。

子どもに恵まれなかった自分と異なり、下級貴族でありながら希少な特殊能力者の息子を鼻高々に自慢したカレン男爵へ嫉妬し暴露したのは自分だが、まさかこのようなことになっているとは思いもしなかった。

夫人からの手紙には「貴方の子どもだと仰るのなら、あの子をお救い下さい」「見つけてくれないのならば私は全てを白日の元に晒します」と脅しまがいの内容も書かれ、慌てて足を運んだアンカーソンも、事情を聞けば夫人への口封じ以外の手段も思いついた。


何度も何度も、どの女性と試みても子どもができなかった。

自分の子を授かったら侯爵夫人にしてやると、自分へ詰め寄る女性へ条件を提示するほど侯爵家としては差し迫った状況だった。

そんな中で自分と血が繋がっているかもしれない、希少な特殊能力者の男児。本当にレイが自分の子なら侯爵にとってまたとない機会だ。

レイを探すのは協力する。ただし、レイを生きて見つけられたらもうカレン家とは繋がらせない。自分の後継者として育てる。そう告げた侯爵に、夫人もまた迷わなかった。

他人の子になってしまっても構わない。この家にいるよりも遥かに幸せで恵まれた生活ができるならそれで良い。自分の所為であんな目に遭ってしまった息子が、今もどこかで飢えているのならば助けたいという一心だった。

レイについて自分達が把握している情報を細かく伝え、どうかレイの生死だけでもわかったら教えて欲しいそれ以外は望まないと不幸の元凶である男に深々と頭を下げた夫人と使用人達は……


『どういうつもりだ……⁈』


慢性の酒による正常でない思考で、目覚めた男爵に見つかった。

目の前にいる最も憎むべき侯爵が屋敷にいることに、使用人や夫人が止めに入る間もなかった。怒り狂い、家に置いていた斧を振りかぶり侯爵へ襲い掛かった男爵はあまりにもあっけなく侯爵家の護衛に返り討ちにされた。


もともと自分が孕ませた女性からの脅迫状まがいを受けた侯爵が、護衛なしで訪れるわけもなかった。

夫人と侯爵の一夜が立証されない以上、男爵の犯したことは侯爵家への反逆罪でしかない。貴族社会で上位の存在、しかも領地を任せて貰っている側が斧を振り上げれば正当防衛として殺されることも当然の始末だ。


使用人が取り押さえる隙もなくあっという間に生涯を終えた男爵に、涙を流すのは夫人だけだった。


突然斧を振り上げられたことに怒りを抱いた侯爵は、レイ・カレンの情報と共にその場で侯爵家の領地没収を告げた。

屋敷一つ残すのが温情、レイが見つかれば教えてやるが二度と連絡をよこすなと告げたアンカーソンは業務上の手続きだけ済ませ強制的にカレン家から財産を奪い去っていった。


レイが見つかったと報せを受けるまでひと月も掛からなかった。

侯爵であるアンカーソンの手腕と財力により見つかったレイに夫人も救われる想いだったが、もう二度と会うことはできない。約束通りレイはそのままアンカーソン家に引き取られ、領地すら奪われた自分には何も残らない。

もう自分は死んでも良い。家に雇う金もない今、皆も自由に生きて欲しいと望む夫人にまた立ち上がったのは使用人達だった。


『我々が奥様の代わりにレイ様を御守り致します』

『あの日、侯爵から奥様を御守りできなかった償いを』

『あの夜、レイ様から目を離し旦那様から御守りできなかった償いを』

『そしていつか、レイ様に』


自分達全員を雇う金がないのなら、自分達がアンカーソンに雇われ夫人を養う番だと。

〝アンカーソンの罪〟を知り携える使用人達は、直接アンカーソンの門を叩いた。領地を奪われ自分達を雇えなくなったカレン家の代わりに自分達を雇って欲しいと要求する使用人達に、アンカーソンも都合は良かった。

ちょうどレイを見つけたばかりで持て余したアンカーソンにとって、暫く子ども一人の面倒をみるのにもこちら側の事情を知っている人間の方が手間も省ける。もともと後継者として教育する気はあっても育てる気はなかった。

カレン家の使用人だったことは一切レイに伏せることを条件に、彼ら全員がレイの専属として無事雇われた。

せめてレイが元気に過ごしていることを夫人に告げたい。そしていつかはレイを夫人に会わせたいと。

そう願った使用人達の望みが最初に砕かれるのは働いて間もなくだった。


『カレン家の父上は、死んだんだろ?…………良かった……』

『アンカーソンに言われなくても、俺様が嬲られる原因だった母親になんか会いたくない』

『別にカレン家に未練はない。アンカーソンの名なんざを名乗ってやりたくねぇだけだ』


二年以上ぶりに再会を果たしたレイ・アンカーソンは別人のように荒んでいた。

発見された時に裏稼業に追われたところを命からがら逃げ込んだというレイは、アンカーソンの屋敷に引き取られてから誰にも心を許さない。暫くは誰とも口を利くことすらまともにしなかった少年は、当然前の家の使用人にも全く気付かなかった。自分を「坊ちゃま」と呼ぶ使用人達を、その他大勢の一人としか認識しない。


やっと話すようになれば、全てアンカーソン家に対してもカレン家に対しても拒絶の言葉。

教師から何度教えられても言葉遣いを直そうとすらしない。父親であるアンカーソンにも逆らい、自分を「レイ・カレン」と呼び続ける少年の様子は夫人に詳しく話せるものではなかった。


もしここで人目を忍んで自分達がこっそりレイへ母親の話をしても、決して肯定的な言葉は返されない。それどころかアンカーソンに告げ口されれば、自分達は解雇どころか始末されかねない。

レイ付きの使用人にされたところで、アンカーソンとその味方の使用人達も取り巻く環境では何を言うこともできない。今はただ以前と同じように使用人としてレイの成長を見守り、機会を使用人達は待ち続けた。


そして二度目の転機は、また突然。〝プラデスト〟という教育機関に通うことになったレイが、アンカーソンの屋敷を離れ通いやすい近くの別家に移り住むことになった。

付き従うのは元カレン家の使用人。アンカーソンの監視の目もなく、これならば今度こそ少しずつレイに母親について訴えることができる。

母親は間違いなく貴方を愛していると、今もずっと会いたがっている、貴方の為に必死の思いで、と。そう伝えれば今度こそレイ・カレンに伝わると思った。

移住を終え新居の生活が整った直後、早速使用人達はレイへと歩み寄った。


『坊ちゃま、大事なお話があります』

『どうか耳を傾けて下さい』

『内密な……、カレン家の母君についてのお話です。何年も前から手紙も預かってきております』

既に十五となった青年に、彼らも礼儀を尽くしながら言葉を掛けた。

レイがカレン家を、そして母親を恨むのも仕方がない。使用人である自分達もまた、カレン家とバレたら恨まれて当然。だがそれでも、せめて母親の気持ちを伝えたい。もう一度夫人の願いを、せめて一度だけでもと。

そう押しつけがましい欲望と各々が理解しながらも、夫人の息子へ真摯に訴えかけた。

そして、最後に「どうか、どうかカレン夫人のお気持ちを」「もう思い出したくないことだと理解もしております」「ですが坊ちゃまにとっては唯一の」と全員が深く深く頭を下げ懇願した。そして、息子からの答えは。





『ライアーを、見つける』





『準備は整った』

『裏稼業を雇い入れる。お前達は何もしなくて良い、連中の出入りは増えるが歓迎の必要はねぇ』

『今すぐ裏通りに情報を撒け。金を持った貴族が人探しをしていると』

『十八歳未満の人間であれば別の報酬が高い仕事もあると』

『三年しかない。絶対に奴を見つけ出す』

『命令だ。アンカーソンには決して伝えるな。もし言えばこの顔と同じにしてやる』


次々と流暢に話し出す青年に、最初は誰もが何を言っているかわからなかった。

ライアーと。自分達が雇われた当初にレイが譫言のように何度も呟いていた名前だと気付いたのも侍女二名のみ。最初から、自分達の真摯な訴えなど彼には届いていなかった。

一方的に自分達へ命じ、窓の向こうへ遠い目を向ける青年に。訴えを拒む絶対的な隔たりを全員が感じ取り、そして重なった。



何年も何年も自分達が言葉を尽くしても届かなかった、どこかの父親と。



……そして彼が最も救いを必要としていた時、無関心にも夫人にしか目を向けなかった自分達とも。


Ⅱ255

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