表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリージア王国備忘録<第二部>  作者: 天壱
頤使少女とショウシツ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

411/1000

手に取り、


「それではエリック副隊長、どうぞ」


午後が過ぎ、近衛騎士交代に訪れたアランとカラムに合わせプライドは再びプレゼント部屋に訪れた。

最初にプレゼントを選ばせて貰ったアーサーも、やはり次のプレゼントの中身が気になり先には戻らず付いてきた。今のところプライドと一緒に全て確認できたアーサーだが、セドリックが引いた品以外はどれが誰の品が全く見当がついていない。

他の誰もを差し置いて最初にプレゼントを選ぶことに気が引けたエリックだが、プライドだけでなく上官であるアランやカラムに見られるのも緊張する。アランとカラムも近衛任務後に選ぶつもりの為、今は観察側に徹している。

既にプレゼント選びのルールは何度もプライドの背後で聞いた以上、言われるまでもなく箱を見るだけで選ぶエリックは時間も掛けず、「それではこちらを」と最も手近な箱を手で示し選んだ。

箱を開け、二歩手前で止まるプライドの背後ではアランもカラムも初めてのプレゼント開封に僅かに浮き立った。エリックがごそごそと箱の中身に手を伸ばしている間に、アーサーへアランが「どうだった?」と軽く投げたがアーサーは喉を鳴らすだけで唇を絞った。エリックが箱から取り出した品と共に背中伸ばしたところで、アランも言及は笑って諦める。

しっかりと包装された品をエリックは一度閉じたプレゼント箱の蓋の上で丁寧に開いた。


「自分は毛布と……オルゴールですね。どちらもとてもクリスマスらしい品です」

毛布は暖かみのある深緑色の毛布。大人一人が包まることも、大人二人でも肩を寄り添い合えば充分温められるほどの大きさの毛布は、肌触りは当然のこと温かい。


「エリック副隊長ならご実家でキースさんにも使えるわね」

「はい。ですが、こちらは折角ですし自分が使わせて頂きます」

プライドの言葉に「お陰で温かい冬が過ごせそうです」と言いながら、早速騎士館の自室で使わせて貰おうと思う。騎士団の支給品よりもずっと質が良いだろう毛布に、良い物を引いたと心から思う。実家で毎回ソファーで仮眠を取り潰れることが多い末の弟を冬に温めるのも良いかと確かに過ぎる温かさだ。冬に暖炉を消していてもキースはソファーで潰れることが多い。


「良い毛布だ。きっと長持ちもするだろう」

「ちょうど良かったじゃねぇか、最近すげぇ冷えるし」

人の貰ったプレゼントを勝手に触れはしないが、カラムとアランもプライドに続きその場から僅かに前のめりになって覗いた。今年は特に冷える日も多く、暖炉の火を絶やせないとエリックが話していたのをアランもよく覚えていた。


更には、小箱程度の大きさがあるオルゴールを手に取ればこちらもインテリアとして申し分ない。表面を飾り付ける装飾がキラリと輝いているのに、まさかアーサーと同じく高級品ではないかと片方だけ肩が上がったが、よく見ればただの色付きガラスだった。ステンドグラスのような美しさと、そしてオルゴールの蓋を開ければ仕込まれていた歯車が噛み合い音を鳴らす。軽やかな可愛らしい音楽、そして雪だるまとクリスマスツリーの飾りはまさに今日この日を主張していた。男性にも女性にも喜ばれるオルゴールだ。

鳴らされる音楽も、クリスマスになると子どもの間で頻繁に口ずさまれる歌だった。自分も昔は弟達の面倒を見ながら口ずさんだ時期もあると思ったらいっそ懐かしい。二日前もクリスマスツリーの飾り付けの手伝いと買い出しの為に実家に帰ったばかりだった。

なかなか雪が降る気候にないフリージアでは、雪だるまなど作ったことがないがそれでも絵本で見たことはある有名なクリスマスの象徴だ。


「先輩方もいかがですか?レオン王子がいらっしゃる前に、宜しければ自分達が持っていきますが」

中を開くのが気が引けるなら、箱だけでもと。そう提案するエリックに、アランとカラムも互いに目を合わせて考えた。

自分達としては選ぶのは最後でも順番は構わない。ただ、一番最後にプライド達が選ぶと決めている以上、このままだと最悪自分達が近衛任務を終えるまでプライド達を待たせることになるかもしれない。ステイルもティアラも休息時間を取ったらその後に会えるのは夕食だ。ならば、自分達はここで選び確認しようと考える。最初から、第一王子に運んでもらうことなど考えない。

「あーじゃあ頼む」「頼めるか?」とエリックとアーサーにそれぞれ頼む二人は、プライドからの許可を得て手前の一個をアランが、そしてカラムがその後列を選び箱を開けた。


「おぉ!取り敢えず俺は大丈夫です!ちゃんと自分以外なんで!」

「私の方も、少なくとも自分の品ではありません。あとは自室でゆっくり確認させて頂きます」

それぞれは箱の中身を確認した二人は、中身を出すまではせずそこで再び蓋を閉じる。

きちんと二歩手前で足を止めていたプライドは、うっかり「ここで開けませんか⁈」と言いたい気持ちを飲み込んだ。ステイルもティアラも公務を頑張っているのに、自分ばかりが皆の中身をみれるのもずるい。

明日改めて何が入っていたか教えて貰おう、と思い直し両手で少しうるさい胸を無言のまま押さえつけた。

カラムに託された箱をアーサーが抱え持ち上げ、そしてアランの箱に自分の分のプレゼントを一緒に纏めたエリックも箱を持ち上げる。


「それでは、お誘いありがとうございました。アラン隊長の品は自分の部屋に預かっておきますね」

「俺も、カラム隊長の品預かっておきます!演習終わったらすぐ届けに伺うんで‼︎」

ほくほくと笑いながらエリックが箱を抱える礼をする中、アーサーも続く。「それでは失礼致します」と二人で共に退室していこうとした時、「あっ」とアランがその背中へ声をかけた。


「アーサー。悪いけどハリソンも早めに休息回して取りに来させてくれねぇか。ヴァルとか来る前に済ませた方が良いだろ?」


そうじゃないと後は騎士団の演習が終わる夜中まで取りに来ない。むしろ今も忘れている可能性がある。

アランの提案に、隣に立つカラムも深く頷いた。「その方が良い」とまさか王族三人のプレゼント開封を待たせるのが騎士ではあってはならないと彼らの判断もまた同じだった。


その後、休息時間を得たハリソンが来たと侍女から報告を受けたのは、彼が中身も確認せず箱を一つ選び去った後だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ