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第1話 勇者召喚
古来から、滅亡に瀕した世界を救うのは異邦人の勇者だと決まっている。
そのセオリーを守るために、女神である私は100回目の勇者召喚を行った。
現れたのは黒髪の真面目そうな男性。
メガネをかけていて、とっても知的そうだ。
「私は貴方を召喚した女神です。貴方にお願いがあるのですが、どうか滅亡に瀕した世界を救ってはいただけませんか?」
高圧的な態度にならないように気を付けながら、丁寧に話しかける。
勇者召喚された男性は、訝しげな様子でキョロキョロ。
突然の事過ぎて、事態が把握できていないようだ。
仕方がない。
勇者召喚なんて、物語の中ではありふれているが、想像するのと実際に体験してみるのとでは違うわけなのだから。
だから私は、女神らしく慈愛の笑みを浮かべながら慣れた様子でこれからすべき事を丁寧に説明しはじめた。
この先、まさかあんな事になろうとは一切思わずに。