第91話 ダンジョン
ワイバーンたちの食料を調達しにいったレオンは、とても興奮した状態で戻ってきた。
「ねえねえ! 聞いてよみんな! ダンジョンあったんだけど!」
「そうか」
ドランがそっけなく答えた。ここからそう遠くない場所にダンジョン都市があったような記憶がある。
なぜレオンがそんなに興奮しているのかが分からない。一階層しかなかったが、ダンジョンは一度行ったし、ダンジョンコアも割ったじゃないか。
「そこになんと! エルフのお姉さんがいたんだよ!」
「そうか。珍しいな」
エルフがダンジョンにいるのは珍しい。大半のエルフは亜人の国の端にある森に引きこもっているからだ。
富や名声には執着しない彼らは、森と共に生活をしている。だが人間にも色々いるように、エルフにも金を稼ぎたいと思う奴や冒険者ランクを上げたいとか名声が欲しいとか野心家の者がいるのかもしれない。
「それでレオンはダンジョンに潜りたいということか?」
今のレオンが暴れたらダンジョンが壊れてしまわないかが心配だ。
暴れたりしないなら、最下層まで踏破されていないダンジョンの最下層を目指してみるのも面白いかもな。今の俺たちなら安全に観光気分で潜ることができる。ワイバーンは留守番だ。どうせあんなでかい図体では中には入れない。
シュアは召喚してもいいかもな。喜ぶかどうかは分からないが。
「もちろん行くよ。行きたくないならここで待っててもいいけど、俺は行く。エルフのお姉さんともう約束しちゃったしね〜」
「それはまた美人局だったりしないよな?」
「大丈夫。だってエルフだし!」
なんでそんな自信満々なんだよ。エルフだからって理由で信用するのはどうかと思うぞ。心配だからついて行くしかないか。
「それと、子犬拾っちゃった」
レオンの胸元が盛り上がっていると思っていたが、巨乳になったわけではなく、犬を隠していたらしい。
ひょこっと顔を出した犬……犬? 顔が3つあるんだが……そしてすごい牙だな。進化したシュアに負けないくらい恐ろしい顔だ。
「レオン、それは犬じゃなくてケルベロスじゃないか?」
ドランは特に興味もない感じで軽く指摘した。ケルベロス……?
「へ〜、そうなんだ。お前たち犬じゃなかったんだな」
ケルベロスって地獄の番犬とか言われている奴だよな? そんなもん、どうやったら拾えるんだよ……
マジでレオンが魔王なんじゃないかとさえ思えてきた。
後ろを見ると、ワイバーンたちがゆっくりと後退している。お前ら逃げられると思うなよ?
というか、あのワイバーンが怖がるって、そんな恐ろしいものを連れ込んだのか?
レオンが子犬と言った通り、体は子犬のように小さい。実際にまだ子どもなんだろう。小さくてもどんな能力を持っているか分からないのは怖いな。
しかしレオンはもう飼うと決めたようだ。
俺はさっきまで何かレオンに聞きたいことがあった気がしたが、エルフの美女のこととケルベロスの登場で吹き飛んでしまった。
翌日、俺たちはワイバーンをここに残してダンジョンに向かった。
シュアを召喚して一緒に行くか聞いたら、なんと次男と一緒にいると言ったんだ。なんでだよ……
次男がサッとシュアを囲ってしまったので、仕方なく俺はシュアを次男に預けてレオンたちと旅立つことにした。
そしてレオンが綺麗なお姉さんと言っていたエルフとダンジョン都市の入り口で合流した。
ん? このエルフお姉さんか?
「アシュレイだ。昨日レオンと知り合った。同行して構わないか?」
声は女とも男ともとれるな。でも俺はみた。喉仏があるじゃねえか。このエルフはお姉さんではなくお兄さんだ。
いや、何歳か分からないから、おじさんかお爺さんという可能性もある。とにかく男だった。
「ドラン、アシュレイは男だよな?」
「そうだな。見ればわかるだろ」
「レオンはお姉さんと言っていなかったか?」
「忘れた」
まあいい。どっちでも足を引っ張らなければいい。
「アシュレイはこのダンジョンによく潜っているのか? 踏破されていないんだよな?」
「現在確認されているのは27階層。踏破はまだだな。何階層まであるのかも分かっていない」
ドランがまともな質問をしている。ダンジョンはドランも楽しみなんだろうか? バトルジャンキーだもんな。
さっそく、ダンジョンに潜る手続きをして、ダンジョンに向かった。
ちらっとギルドカードを見たらアシュレイはAランク冒険者だった。レオンと同行するくらいだから低ランクではないと思ったが、俺たちより上だったか。
「君たちはなぜCランクなんだ? ランクと強さが合っていない」
アシュレイはAランクだけあって、他人の力量が分かるようだ。エルフだから他人の魔力量なんかも分かるんだろうか?
「俺たちはギルドの依頼をあまり受けていないからな」
「そういうことか。なるほどな。」
納得してくれたところで、1階層はただ歩くだけで何も出てこず終わってしまった。
「何にもいないね〜」
「これだけ膨大な魔力のものが集まっているんだから魔物も避けているんだろう」
そんなことあるのか? 俺たち魔物に避けられるってそんな域に達してるの?
俺は軽いショックを受けながら進んでいった。1階層から3階層までは洞窟のような場所だったのに、4階層に入ったら草原だった。空もある。不思議なものだ。
「ダンジョンって楽しい! 本当に空あるんだね」
アリサにとってダンジョンは楽しいらしい。何も出てこないが。
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