第80話 気まぐれで降りた街で
「ワイバーンで結構飛んだからさ、俺のこと知ってる人いなくていいねー
勇者って騒がれたりするの面倒だったんだよね」
そんなレオンの言葉に俺は激しく同意した。ドランもアリサも同意している。
沿道で花吹雪を撒き散らすとかはいないが、チラチラ見られたり、コソコソと噂されている様子は見られる。何かあるんだろうが誰も絡んできませんように。
「この街は獣人がいないねー」
レオンの言葉にハッとなった。確かに獣人がいない。なるほど、それでアリサが珍しくて見られているのか。
「目立ってるのあたし? なんか居心地悪くなってきた」
そう言ってアリサはフードを深く被ったが、尻尾は隠さないんだな。謎だ。
「アリサ頭隠して尻隠さずじゃーん」
「あ、尻尾の存在忘れてた!」
忘れてただけか。レオンが指摘すると、アリサはすぐに尻尾を丸めて服の中に押し込んでいた。
「アデルー、この街の名物食べたい」
「そうだな」
なぜ俺に聞くんだ? 俺だってこの街は初めてで何が名物かなんて知らないぞ。
「調べてきてよー」
「は? 俺が?」
「うんそう。アデルが一番そういうの向いてる。俺とアリサは異世界人でこの世界に慣れてないし、ドランは見た目が厳つい。アデルが一番向いてる。ってことでお願いねー」
結局俺はレオンの指示に従って動いてしまうんだが、俺はパーティーメンバーであって使用人じゃないんだからな!
ワイバーンで空を飛んでいつの間にか国境も超えていた。それ大丈夫なのか?
ギルドの酒場で適当な奴らに、エールを奢って話を聞いてみると、この国はアリーナ王国だった。
ヤバイ。ここは鎖国してんじゃなかったか? だから獣人がいないのか。そんなところに勝手に入って大丈夫なんだろうか? 詮索される前に国を出たい。
アリーナ王国は、他国と戦争をしたりはしないが、俺が知る限りずっと他の国との交流を拒んで国境も閉鎖している。だから国名以外の情報がほとんどない。
他国からの輸入に頼らなくても困らないということは、国が豊かなんだろう。
この国の名物はメリーの串焼きだった。
メリーってのは食べたことがないな。ふわふわした毛に包まれた魔物だが、俺は見たことがない。
「おい! 俺が各所を回って名物を聞いているのに何してんだよ!」
俺がギルドやなんかを回って情報収集をして戻ると、3人でベンチに座って、ジュースを飲みながらドーナツのようなおやつを食べていた。
俺のは? ずるくないか?
「アデルの分もあるよー、ほら、ここ座って」
席を空けてレオンが俺の分を出してくれた。
先にくつろいでいるのは気に入らないが、ちゃんと俺の分も忘れずに買っていてくれるなんて、レオンも優しいところがあるじゃないか。
こうして俺はまた餌付けされて怒りを沈めてしまった。
ん、美味いな。なんだこれは。俺はすぐに屋台に向かうと、ドーナツのようなおやつを追加で20個ほど買ってアイテムボックスに入れた。時間経過が止まるアイテムボックスよありがとう。
それはいいとして、俺は重大なことをみんなに伝えた。ここは鎖国していて国境を閉鎖しているアリーナ王国だと。勝手に入ったことがバレればどうなるか分からないと伝えた。
「え〜、鎖国ってあれじゃん、黒船来航? どうしよう、ペリーが俺でワイバーンたちが黒船? ウケる〜」
「レオン、そんなこと言ってる場合じゃないと思う。さっきあたしたち注目されてたし。もうどこかから権力者とかに連絡いってるかも」
「それはまずいな。とにかく街を出て、すぐに国を出るぞ」
ドラン、なぜそんな切羽詰まったような発言をしているのに満遍の笑みを浮かべているんだ?
何かあったら暴れられるから、それを楽しみにしているのか?
ダメだぞ。ドランはもう人間辞めているんだからな、人と戦ったら相手に甚大な被害が出る。こんなところでお尋ね者になったりしたくはない。
レオンの気まぐれに付き合ったら、とんでもないことが起きそうで困る。
「ねぇ、あなたたち見かけない顔ね」
ほらみろ、こんなところで並んでおやつなど食っているから、見つかったじゃないか。
戦士風の美女に声をかけられたが、もしかしたらこの女、この街の騎士か?
「お姉さん、俺たちのパーティー入りたくない?」
「は?」
レオン、何を言っている。俺たちは今すぐにでもこの街を出て、さっさと国も出なきゃいけないというのに、こんなところでナンパでもしようっていうのか? 気でも触れたか?
「あなた面白いわね。私は前衛希望なのだけど、それでもいいかしら?」
「いいよ〜、後衛はアデルがいるし〜、俺もアリサも後衛もいけるし」
ドラン、アリサ、お前たちも傍観していないで何とか言ったらどうだ?
そう思って二人を見るも、どちらも興味無さそうにドーナツを食っていた。いや、危機感! お前たちの危機感はどこいった?
「みんな、この人、パーティーに入れることにしたから〜」
「りょうか〜い」
「分かった」
「は?」
なんで二人ともそんな簡単に了承してるんだ? この女は初対面だろ?
俺が唖然としていると、レオンはその女の手を取って、街の外へ向かって走り出した。
おい、色々説明も無しに連行すんのかよ。あんたもそれいいのかよ。
気持ちは付いていけないが、置いていかれるわけにはいかないから、俺はドランとアリサと共にレオンを追った。
閲覧ありがとうございます。
更新が大変遅れて申し訳ないですm(__)m
今後もゆる更新でなんとか完結まで持っていきますので、よろしくお願いします。




