第75話 迷宮と俺たちの旅
しかし俺は、色んな奴の胃袋を掴む旅をしているわけではない。
先日はちゃんと迷宮というやつに潜ったんだ。
ワイバーンは入り口を通ることができず外で待たせていたが、俺とレオン、ドラン、アリサの4人で潜った。
なぜ潜ったのかというと、近くの村に立ち寄った際に迷宮から魔物が溢れ出すスタンピードが怖くて村を出ていく者が多いと聞いたからだ。
迷宮は最下層まで降りて迷宮核を破壊すれば魔物が延々と湧いて出ることはなくなる。
「面白そうじゃん。行ってみたい〜」
そんなレオンのお気楽な一言で行くことになったんだが、迷宮が何階まで広がっているのか情報がない状態でそんな気軽に入っていいとは思えない。
それでも俺たちは人間辞めている集団だから入ることになったんだ。
「ドランは迷宮に入ったことはあるのか?」
「ある。ただし5階くらいしかない浅い迷宮だ。」
「俺は初めてだ。」
「そうか。レオンやアリサも初めてだよな?大丈夫なのか?」
「俺に聞くな。俺も初めてなんだから。」
「そうだよな。まぁレオンがいるから大丈夫か。」
そうなんだよな。レオンがいれば何でも大抵大丈夫だと思えてしまう。
それってどうなんだ?
王都近くの森では6階層で危険な目に遭っている。
確かにレオンは強いんだが、戦い方をあまり知らない。またアンデッド系が出てきたらと思うと少し不安だ。
そんな不安を抱えながら迷宮に足を踏み入れたんだが、なんとすぐそこに迷宮核があった。
「なぁドラン、これは迷宮核か?」
「恐らくな。」
「これ壊せばいいの〜?バルムンクで壊せるかな?」
「どうだろうな?無理なら魔法でやってみるか。」
「いっくよ〜」
バリーン
レオンが「いっくよ〜」と言いながらバルムンクの先で迷宮核をツンツンしたら壊れてしまったんだ。
いや、俺にはそう見えたが、実はとても力を込めていたのかもしれない。片手で・・・?
「ドラン、迷宮核ってこんな簡単に壊れるんだな。」
「どうだろうな?大変だったと聞いたことがあったが、これはまだ浅いから弱かったということかもしれん。」
「なるほどな。それは確かにあるかもしれん。」
「そういうことにしておこう。」
「了解。」
呆気なく壊れてしまった迷宮核の破片を持って村に行くと、それはとっても喜ばれて、村の祠に迷宮核の欠片が奉納されることになった。
そんなものを奉納して神様に怒られても知らないからな。
「迷宮、何も出なかったね〜」
「もっと綺麗な景色は広がってたり、洞窟の中なのに空があったりするのを想像してたから残念。」
「そんなのあんの?なんでアリサそんなこと知ってんの?」
「え?迷宮といえばそうじゃないの?ダンジョンとかさ、日本でもファンタジーの物語とかゲームとかに出てくるじゃん。」
「そうだっけ?俺あんまゲームとかしないからな〜」
「ゲームとかしてたらこの世界もっと楽しめたのかもね。」
「ん〜でもそれなりに楽しいよ。目的があるし。夢とか目標とかなく適当に生きてたからさ、こっちの世界のがやり甲斐?みたいなのあるし〜」
「え?でもそれって命懸けで戦うような勇者の役目でしょ?いいの?」
「別にいいかな。逃れられない運命ってやつ?
死ぬのは怖いけど、今のところそんな怖い目に遭ってないし、お化けは怖かったけどそれだけかな。俺強いし。」
「あ〜なるほどね。レオンはチート野郎だもんね。」
「アリサもチートじゃない?」
「ん〜どうだろう?そういえばこの世界の一般的なステータス知らないかも。」
「俺も知らない。アデルの妹のミアのステータスは分かるけど。」
「え?知りたい。どのくらいだったの?」
「レベル2、HPが102でMPが3、攻撃力も防御力も10くらいだった。」
「それ、まさか平均じゃないよね?」
「違うんじゃない?貴族令嬢だし、戦ったり鍛えたこともないからそんな感じなんだと思う。」
「だよね〜」
お前ら、そんな話をしているが、別にミアが特別弱すぎるってこともないんだからな。
一般市民ならHP100なんてのは珍しくないし、MPは少ないが平均でもそれぞれに1つ0がつく程度だ。
それを教えていいのかは分からんが、お前らは特別なんだ。
恐らく異世界からこの世界に来たことで何かが変わったんだろう。
無自覚というのも恐ろしいものだな。
まぁせいぜい俺が生きて帰るために頑張ってくれ。俺もできるだけ死なないように頑張ってはみる。
と、まぁこんな感じで迷宮というやつに潜った。
ちゃんと勇者パーティーとしてやるべきことをやった。と思う。・・・たぶん。
これで合ってるんだよな?
勇者がどのような道を歩んでいくのかなんて、前例って奴がないから分からない。
魔王のところへ行くだけでいいのか、それとも各地の問題を解決しながら人助けをしながらレベルアップを図り、そして最終的に魔王のところに行くのが正しいのか、正直俺には分からない。
特に何か指示があったわけでもないからな。
だいたい陛下を含む国の上層部は何を考えているのか分からない。
レオンを育てることも放棄して、そして華々しく見送りはしたものの、どうして欲しい等の要望や道標は示してくれなかった。
まさかとは思うが勇者を見てみたかったとか、あわよくば魔王倒してくれないかな?などというフワッとした願望だけで勇者を召喚させたのではないよな?
不安になってきた。




