第71話 旅立ち準備
「このさー、修学旅行の計画立てたり準備したりする時間って楽しいよね〜」
「分かる〜、おやつ何持って行こうとか、カードゲームも何種類か用意したり、学校じゃないから服も。旅行雑誌とか無いから観光名所とかも全然知らないけど、お金の心配もないし、自分が強いから安全だし、楽しい。」
「そういえばアリサはアイテムボックスに何も入ってなかったの?日本の物。」
「無いよー、レオンは入ってたの?」
「入ってたよ〜、スマホとか財布とか、しかもスマホ充電しなくても今も使える。オフラインだけど。」
「えー、羨ましい。あ、でもオフラインか。それだと何が使えるの?」
「電卓とカメラとメモと、なんとマップ使えるんだよねー行ったことないところは表示されないんだけど。」
「マップ?何で?凄い!」
「何でかは分かんない。不思議だよねー、でもこれで迷わずに旅ができると思う。
あとでおやつ買いに行こうよ〜」
「行きたい!」
レオンとアリサはあの板を眺めて楽しそうにしている。
大容量のアイテムボックスがあるから、何を持って行こうか。野営道具は一通り揃えたが、あとは食料と、衣類か?
森です延々と修行するわけじゃないんだから、街にも寄るだろうし、肉は魔物を狩ればいい。そう考えるとそれほど持っていく物も無いように思えた。
「ドランは何か買いに行くのか?」
「俺は冬用の外套と、布団を持っていきたいな。」
「布団!?」
「アイテムボックスがでかいなら寝袋より布団のがよくねーか?」
「確かにそうだな。その発想は無かった。俺も旅用の布団を買おうかな。」
「レオンのアイテムボックスはどの程度の大きさまで入るんだろうな?例えばテントではなく小さな家は入るのか?」
「家!?アイテムボックスにか?野営の概念が覆るな。だが森の中や街道脇には出せないんじゃないか?高原や荒野ならいけるかもしれんが。」
「確かにな。それなら大型のテントの方がいいか。」
「だと思う。」
「俺はそんなもんだなー、ヘアワックスは多めに持っていきたい。他の街では買えないからな。」
ドランはレオンが作ったヘアワックスというやつを毎日使っている。アイロンとかいうやつもだ。一緒にいる2人が髪にこだわっていると、拘らない俺が変なのかと思えてくる。
いいんだ、俺は髪を長時間かけて整えるなら、その時間は少しでも寝ていたい。
睡眠は大事だ。
いよいよ旅に出るという時、やっと俺は国に報告をした。
そしたらパーティーメンバー全員で謁見することになった。
そのために、今後着ることなんかないだろうかなり高価な正装を仕立てることになってその製作までの間は足止めされることになった。
全く。ずっと放置していたくせに面倒なことだ。
待たされたその間、何もしなかったわけじゃない。
ほぼ毎日バーベキューパーティー三昧だった。
その肉を調達するために森へも行ったし、鍛錬はちゃんと続けた。母上にも勇者パーティーのメンバーとして旅立つことを報告した。
返事をもらってももうその頃には俺は王都にいないかもしれないから、返事は要らないと書いた。
だが、お別れではない。簡単に命を散らすつもりは無いと、帰ってきたら領地にも顔を出すと書いた。
「アリサ、ドレス似合ってる〜可愛い。そのゴージャスな髪も似合ってるよ〜
あれ?マスカラ間に合ったんだ?」
「うん。レオンありがとう。レオンも格好いいよ。まさか結婚式でもないのにこんなに豪華なドレス着ることになるなんて思わなかった。」
「だよね〜アデルとドランは貴族だから着慣れてるだろうけど、俺たちは庶民だもんねー」
「え?アデルとドラン貴族なの?あ、でもそうかレイナさん貴族って感じだもんね。」
確かにアリサは可愛い。ドレスもよく似合っている。剣の稽古を一緒にやっていたことで、俺やドランとも打ち解けて、今ではみんなの妹という位置に収まっている。
嫁に行くとか言ったらお兄ちゃん泣いちゃうかもしれない。
「アデル、どうした?気持ち悪い顔をして。」
「ドラン、気持ち悪いとは失礼だぞ。というかドランの正装パンパンだな。」
「あぁ、さっき剣の素振りをしていたら筋肉が張ってこうなった。」
なぜこんな謁見の前に剣なんか振るってんだよ。
もしや、緊張してんのか?ドラン、お前も意外と可愛い奴なんだな。
「ニヤニヤしてさっきより気持ち悪いぞ。」
「気持ち悪くなんかない。俺は普通だ。」
謁見の間には、伯爵以上の高位貴族と、神官たち、騎士団や俺の所属する魔法師団の上層部がずらっと並んだ。レオンの魔法で死にかけた副師団長もちゃんといた。
旅の路銀として革袋に入った金が渡され、軽い会食があった。
出立の時には旅装で城まで来いと言われて、仕方なく翌日も城に行くことになったが、それがとんでもなかった。
花が飾られた屋根のない馬車に4人は乗せられ、パレードと称した見世物のように街をグルグルと回り、花びらを投げつけられ、防壁前で街のみんなに見送られて徒歩で門を抜けることになった。
歩きかよ!乗合馬車に乗ろうと思っていたが、こんな風に見送られると、王都の中へは戻り難いということで、仕方なく隣街まで徒歩で向かうことになった。




