第70話 剣の稽古
アリサはレイナ様が来た次の日にはケロッとしていた。俺は男だしどうしたって分からないんだから、そんなもんなんだと思うしかない。
魔道具の指輪とじいさんの指導のおかげで、アリサの魔法はどんどん上達していった。
いつの間にか索敵も覚えて、それは俺より範囲が広いし精度も高かった。あっさりと抜かされたことは少し悔しいが、盗賊寄りのスキルを色々持っているし、そっち系のスキルが上達しやすいんだろうと結論付けることにした。
「レオン、あたしも剣欲しい。」
「いいよ〜、木剣で練習してみて、どんな剣が向いてるのか試してみてからがいいね〜」
「うん。そうする。」
レオンとアリサは仲がいい。
側から見たら、兄と妹みたいだ。恋人とはちょっと違う感じ。
ちょっと羨ましい。俺も可愛い妹に相談されたりしてみたいな。
別に俺だってミラと仲が悪いわけじゃない。化粧の実験台になるということでしか仲を保てないのが少し寂しいだけだ。
いいんだ。俺にはシュアという俺を無条件に好きだと言ってくれる子がいるんだから。
「ドラン、アリサに剣を教えてやってくれないか?」
「いいぞ。ギルドの訓練場でやろう。」
「俺は端でシュアと練習する。」
「じゃあ俺はヴァイスと遊びたい〜」
「分かった。シュアを召喚する時に一緒に呼ぶ。」
「トトー、コワイ」
「あぁ、アリサと会うのは初めてだったか。あいつも俺の仲間だから大丈夫だぞ。」
「へ〜、シュアはアリサも怖いんだな。やっぱ強い奴だと怖いのかな?」
「たぶんそうだと思う。」
「シュアは可愛いな。アデルにベッタリ甘えて〜
この怖い外見とのギャップが何度見ても面白い。」
「トトー、シュキ」
シュアはいつものように俺に甘えて抱きついてくる。
「よしよし、俺もシュアが好きだぞ。」
「凄い!アデルは魔物ペットにしてるの?」
「アリサ、これシュアはペットじゃなくてテイムな。こいつは俺が赤ちゃんの時から育てたから俺のことを父親だと思って懐いてるんだ。」
「そうなんだ。そっちの可愛いクマさんも?」
「そっちはヴァイスだ。そっちも力持ちだが大人しい魔物だ。」
「いいなー、あたしはもっと可愛い魔物か乗れる魔物がいいな〜」
「あ、それいいね!乗れるっていいな〜
背中に乗って空飛んだりできたら正にファンタジーって感じじゃない?」
「確かに〜」
レオンとアリサは楽しそうに話しているが、剣を持ったまま待たされているドランが可哀想だ。
「トトー、ケンスル?」
「そうだな。剣の練習をしよう。」
俺とシュアが剣を打ち始めると、やっとアリサとドランは剣の練習を始めた。
どうやらアリサも剣は握ったことが無いようだ。持ち方や構え方から丁寧に教わっている。
「んー、何となくアリサは短剣のがいい気がする〜。」
「短剣の木剣試してみるか?」
「うん。やってみたい。」
俺が息を切らしながら休憩がてらシュアと一緒に3人と1匹の様子を見ていると、レオンがアリサに短剣を勧めた。
シュアは俺の隣に座って俺の手を握って離さない。
人間辞めた奴が集まっていると、いくら俺の仲間だと言っても怖いのかもしれない。
硬くてでかい手だし、力いっぱい握られたら俺の手は潰れてしまいそうだが、シュアはちゃんと加減をしてフワッと握ってくるから、それも可愛い。
ちなみにアリサが使っている剣は、レオンのようにちゃんと紐が付けられて、すっぽ抜けても誰かを殺したり壁にぶっ刺さったりしないようになっている。安全は大事だ。
レオンが「安全第一」とか言っていたっけ?
その通りなんだ。
「あたし確かに短剣のがしっくりくるかも。なんていうんだろ?フィーリング?」
「それそれ〜、俺もそれが言いたかった〜
ザンッて振り切るより、突き刺す感じのがアリサに向いてるかなって。相手の剣も受けたり流したりせずに、素早い動きを利用して避けた方がよくない?」
「うん。それならあたしにもできそうな気がする。」
なんかよく分からんが、上手くいっているらしい。良かったな。
それから俺たちは、午前中は討伐を受けて森に入り、午後はレオンがヒールをかけて回り、その間に暇な者は訓練場で剣の練習をするようになった。たまにシュアを呼ぶが、だいたい俺がアリサの剣の相手をするようになった。
それをドランが見ていて、動きの改善点を言ってくる。
ちなみにアリサはギルマスの計らいでランクを一気にCまで上げてもらっている。
レオンの時もステータスだけ見ればすぐに上げられたんだろうが、その頃は俺もレオンもまだあまり戦闘が得意ではなかったからな。俺とレオンは下から順番に上がっていく方法でよかったと思う。その間に色々経験を積んだことも無駄ではない。
そういえば、国は騎士団の訓練場を更地にしてから全く何も言ってこないな。
次の報告は旅立ちの報告になるんだろうか?
勇者パーティーなど嫌だ嫌だと思っていたが、今は旅に出ることが少し楽しみだ。人間辞めたからだろうか?




