第68話 魔法の先生
じいさんのアリサへの魔法の指導が始まった。当たり前のように俺たちの屋敷に住んで、一緒に食事をしている。
そしてまた俺にも魔法を教えてくれている。
レオンにも、ドランにもだ。
「おおー、俺こんなことできるんだな。」
ドランは炎を纏わせた剣を振り回して喜んでいる。
この前、悪夢の6階層でドランが使っていた光る剣は、魔道具屋のおやじに「アンデッドと戦うこともあるかもしれないだろ?」と勧められて半ば強引に買わされた、光魔法が付与された魔道具の剣だった。
そんなものがあるのか。因みに発案者はレオンらしい。エイガとかいうので使われているのを見たとか。
俺の剣は念の為のものだから、シュアと鍛錬は続けているが、戦いは魔法がメインだ。
じいさんのおかげで、また結界のレベルが上がった。
今の俺なら6階層に行ってもレオンとドランを含めて火を纏わせた結界を張ったまま駆け抜ければ、あんなに苦労しなくても撤退は可能だ。
だからといって、再挑戦する気はないが。
まだ人間らしい人間だった頃は、こんなことができるなんて俺凄い!と思っていたが、人間辞めるレベルになってからは、へ〜また人間が遠ざかったな、と思う程度になった。
タンク、盾役が勇者パーティーにはいないから、そのうち探さなければと思っていたが、俺が防御結界を張れば事足りるな、という結論に至った。
大型の敵を押さえておくのもドランができそうだし、押さえておかなくてもレオンなら難なく倒すだろうしな。
「アリサ、指輪できたって〜、帰りにクリスさんとこ寄ろうね〜」
「うん。あの、その・・・。」
「ん?」
アリサはもじもじしながらレオンにコソコソと耳打ちした。
「そっかー、女の子だもんね。
それは俺も分かんないな。帰りにギルド寄ってマリアさんいたら聞いてみようか。いなかったら屋敷のメイドさんに聞いてみる?日本と同じようなやつは無いかも。レイナさん呼んで相談してみようか。
ドランー、レイナさん呼べる?」
「俺が呼んでも来ないがレオンが呼んだら来るかもな。で、何だ?」
「ちょっと女の子のデリケートな話だから言えない。」
「そうか。」
俺は察したぞ。アレだな。女の子の日というやつだな。
それは確かに相談されても俺も分からん。
ドランも分からんだろうし。
「勇者パーティーさ〜、女の子がアリサ1人だと可哀想な気がしてきた。
もう1人入れたいけど、戦力的に補わなきゃならない部分ってある〜?」
「特に無いな。レオンがオールラウンダーだからな。俺が倒れてもレオンが回復させるだろうし、レオンが倒れたら俺らは終わりだが、そんな敵ならもう1人いたところで倒せるとも思えん。」
「強いて挙げるなら、もう1人回復役がいるといいか?付与はどうだ?」
「付与か。それはいいかもしれん。しかし付与が使える奴は戦える奴が少ない。しかも女となるとなかなか見つからないと思うぞ。王都では見たことがないし、旅をしながら探すか?」
付与魔法使いは、だいたい後方からみんなに魔法や体力強化の魔法をかけてサポートするだけで、自分は戦わない。だから戦闘能力が低い者が多い。
後方支援など嫌だと、付与魔法が使えるのを隠して前線で戦っている女?そんなのいるのか?
「いよいよ旅か〜
アリサがもうちょっと力に慣れてきたら旅の準備しよ〜」
「楽しそうじゃのう」
「エルミーツさんも一緒に行く?」
「わしはやめておこう。」
「だよね〜、そう言うと思った。何となくエルミーツさんはこの世界の理?みたいなのには干渉しないのかなって。
でもありがとね。アリサに魔法教えてくれて。助かったよ〜」
「よいよい。」
「エルミーツさん髪も髭も長いから、これあげる。これ、髪洗うやつとオイルなんだけど、このオイル髪とかに塗るとツヤツヤになるから。」
「それではありがたくいただいておこう。」
「もう行っちゃうんでしょ?」
「バレておったか。」
「エルミーツさん、ありがとうございました。あたし、もっと練習して強くなるね。」
「じいさん、ありがとう。俺にも魔法教えてくれて。助かったよ。」
「じいさん、またいつか会えるといいな。」
「ふぉふぉふぉ、それではお主たちも達者でな。」
そう言うとじいさんは光と共に消えていった。
やっぱりあのじいさんは神様だな。
隣を見るとドランが手を合わせて祈りのポーズをとっていた。
その気持ち分かる。俺もしておこう。




