第62話 お前かよ!
ドランの姉はドランの姉だった。
あのレオンともすぐに打ち解けて、香油やスキンケアとかいう話で意気投合して、「また遊びにくるわ」と言って帰っていった。
「この世界のスキンケア事情とか知れてよかった〜」
「そうか。よかったな。俺はもう少し寝る。」
ドランはまた寝るようで、部屋に戻っていった。
「レイナさんとドラン、全然似てないねー
アデルの妹も可愛くなってるかもよ〜?妹はなんて名前なの?」
「ミアだったと思う。」
「ミア?どっかで聞いたことある名前。まぁいいや。会えるの楽しみだね〜」
赤ちゃんの時にしか会っていないんだから、初対面みたいなものだし、急に妹だと12歳くらいの女の子を紹介されてもな・・・。
ふーん、としか思えない気がする。
向こうだってそうだろ。いきなり兄だと大人を紹介されても戸惑うんだろうな。
オーガJr.のシュアのように慕ってくれたら嬉しいが、難しいと思う。
「俺は庭でシュアと剣の稽古をする。」
「分かった〜、俺も見てていい?」
「あぁ。ヴァイスでも召喚して一緒に遊んでいるか?」
「いいの?遊びたい!」
俺たちは庭に出ると、シュアとヴァイスを召喚した。
「ヴァイス〜、会いたかったよー、
相変わらずフワフワで可愛いね〜」
レオンがヴァイスを撫で回しているのを横目に、俺はシュアに木剣を渡して剣の稽古を始めた。
初めはシュアの剣を正面で受け止めたりしていたんだが、だんだん受け流すことができるようになってきた。
華麗な動きができているとは言いづらいが、そこは仕方ないだろう。
素振りもちゃんとやるようにしているし、最初の頃よりはマシになったはずだ。
ハァハァハァハァ
「シュア、疲れたか?水飲むか?」
「イル」
「ほれ、コップに入れてやる。」
「ン。」
シュアはでかいからコップと言ってもジョッキのようなものだが、ごくごくと飲み干すと、コップを俺に返し、それを仕舞うとまた抱きついてきた。
「トトー、シュキ」
「シュア、今日も助かった。ありがとな。」
「アリガト」
「そうだ。嬉しいということだ。」
「ウン」
レオンの側にいたら、いつの間にか俺も些細なことに感謝するようになっていた。
この習慣は悪くないな。
「アデル様、アデル様のお母上と妹を名乗る方が来ておりますが、サロンにお通ししますか?」
そこから5日ほどして、やっと母上たちが来たようだ。
「サロンに通しておいてくれ。俺はレオンとドランを呼んでくる。」
コンコン
「アデルです。レオンとドランも一緒です。」
執事がサロンのドアを開けてくれたので、俺は一歩中に入ったが、次の一歩が出なかった。
それは感動の再会などではない。
母上の隣に座る俺の妹であろう人物を見て、俺は固まってしまった。
なぜならそこにいたのは自称聖女だったからだ。お前かよ!
「アデル、何しての?早く入って。」
「あ、あぁ。レオン、ドラン、すまない。」
「は?何のことだ?」
「ぇぇえええーー!!」
「どうしたレオン、っと、マジか。とりあえず座るぞ。」
1番冷静なドランが放心する俺を席に座らせ、レオンはまぁ普通に座った。
「君、アデルの妹だったんだね〜
気まぐれだったけどゴブリンから助けてよかった〜。」
「確かにな。」
「あの・・・ごめんなさい。」
「で、君はアデルがお兄ちゃんだって知ってたの?」
「知らなかったです。名前聞いてなかったし。」
「そっか。」
「ごめんなさいね。ミアがかなり迷惑をかけたそうで。
うちの領地にもアデルが勇者召喚に成功したという話が流れてきたのだけど、それを聞いたミアがお兄ちゃんに会いに行きたいと1人で出ていってしまってね。」
「そっか〜、それで勇者である俺の近くにいればお兄ちゃんに会えると思ったんだ?」
「うん。」
「アデル好かれてんね〜」
そうなのか。まさかの俺に会うためにあんなバカみたいなことを。自分のことを聖女などと。
「アデルお兄ちゃん、迷惑かけてごめんなさい。
顔見せてごめんなさい。」
「顔?あ、そっか。俺が2度と顔見せるなとか言ったこと気にしてるのか。
ごめんね。アデルの妹だって知らなかったから、いいよいいよ、その話は無し。気軽に遊びにきて。」
「そうだな。アデルに会えたんだから、もうあんなことはしないだろうし、気軽にアデルに会いに来たらいい。」
「レオン、ドラン・・・。」
お前ら本当にいい奴だな。俺の妹があんなに迷惑かけたのに。
その後、俺は妹を連れてギルドへも謝りに行った。
俺に会いたくてあんなことをしたのだと説明したら、冒険者のみんなも許してくれた。
冒険者のみんなもいい奴ばかりだった。




