第53話 自称聖女の襲来
それは襲来だった。
メワクが可愛く思えるくらいの勢いで冒険者ギルドのドアが開かれて怒鳴り散らす女。
女というかまだ少女にも見える、たぶん10代の半ばにも達していないだろう女の子が、ギルドの空気を凍らせた。
『勇者出てこーい!!ちっとも迎えにこないから、聖女であるこの私が直々にやってきてやったのよ!早く出てこーい!!』
『勇者ー!!早く私を出迎えて労いなさい!!』
レオンは相変わらず知らん顔をして冒険者の怪我の治療を行なっていた。
そしてその横には魔法使いの美女がベッタリとくっ付いている。
羨ましいぞレオン。
そう、先日勇者パーティーに入ると言ったあの巨乳の谷間を見せびらかしていた女だ。
この女は懲りもせずレオンを追いかけ回して、隙あらばこうしてレオンの背中や腕に胸を押し当てるようにもたれかかっているんだ。
レオンも満更ではないのかギルドにいる時には女の好きなようにさせている。
しかしちゃんと警戒はしているようで、ギルドを出るとサッと女を撒いているからよく分からない。
巨乳の美女だが、きっとレオンの好みではないんだろう。
猫人族の小柄で可愛らしいミミちゃんと呼ばれている子の方がレオンの好みに近いんだろうな。知らんが。
『勇者!!せっかく来てやったんだからこの私を早くもてなしなさい!!』
『勇者!!出てこーい!!』
『出てこないならこのギルド壊すわよ?聖女のこの私がわざわざ出向いたのに何て失礼なのかしら!!』
地団駄を踏んでいるが、残念な子を見るような目線をチラリと送るだけで誰も相手にはしなかった。
そしてその子は持っていた杖をカウンターのテーブルに打ち付けてカウンターを破壊し、ギルド職員に裏へと引き摺られていった。
暴れつつも引き摺られていったところを見ると、どうやら純粋な腕力は無いらしい。
「レオン、とんでもない奴に好かれたな。ははは」
「恐ろしい女だ。レオン可哀想に。」
「別に好かれてるんじゃないと思う〜
俺、あんなガサツな子嫌いだし。未成年とか興味ないし。」
まぁそうだろうな。俺もあんな子は嫌だ。
それにしても聖女か。
レオンのパーティーに、うーん・・・、必要無いな。なぜならレオンは超回復を持っているし、エクストラハイヒールを使える。エリアヒールも使えるしな。
浄化も布の染色まで落としてしまうほどの精度で使えるんだ。あの聖女を名乗る子がどんなレベルなのかは知らんがレオンを上回るとは思えない。
戦えなさそうだし、レオンより劣るレベルでは連れているだけ無駄だ。
「アデルー、セイジョ?って何?」
「そこからか。治癒や浄化などの聖魔法に特化した女だな。教会やなんかにいることが多い。一般的には慈悲深く慎み深い人物で、治癒や解呪を仕事としている。」
「へ〜、何しに来たんだろう?」
「さーな。この女のように勇者パーティーに入りたいんじゃないか?」
「そっか。バーベキューパーティーに呼ばれなくて怒ってたんだ。それなら別にバーベキューパーティー開いてあげてもいいよ。」
「レオン・・・レオンはレオンだな。」
呆れながら俺は、魔王討伐のために勇者を中心に組まれる討伐隊を『勇者パーティー』と呼ぶのだと説明した。
「へ〜、じゃあ聖女は必要無いかな。俺ヒールも浄化も使えるし。」
「あぁ、そうだな。レオン以上に使える者などそういない。そして戦闘力がなければ同行不可だ。最低Aランク程度の戦闘力が無いと無理だな。連れていっても死ぬだけだ。」
「まぁそうだよねー」
そんなことを思いながら自称聖女の襲来の日は過ぎた。




