第52話 板と天を眺める男
ある日レオンが起きてこないため部屋を訪ねてみると、レオンはベッドの上で前にいた世界から持ち込んだ板を眺めていた。
あれは何という名前だっただろうか?
シャシンとかいうやつを見て懐かしいとか言っていたやつだ。
「レオン、どうした?」
「懐かしんでただけ〜」
「そうか。帰りたいか?」
「んー、分かんない。懐かしいとは思うし、親に心配かけただろうとは思うけど、こっちにいっぱい友達いるし、こっちでの生活楽しいんだよね。
帰ったとしてさ、この世界とあっちの世界で時間軸が違ったらヤバくない?俺浦島とか嫌だよー」
「ウラシマ?時間軸?」
また何を言っているのか分からないな。
「時間軸ってのはさ、こっちで1日経ったとするじゃん。でもあっちの世界では1年経ってるかもしれない。そうしたら、もう戻っても俺が知ってる人はいないし、文明も進化してるかもじゃん?それ嫌だよねー
で、その何百年も進んだ世界に戻っちゃうことを浦島っていうの。」
「なるほど。分かったような分からんような。」
「うん。でさ、スマホ見てて思ったんだけどさ、これ充電全然減らないんだよね〜」
「そうか。」
ジュウデンというのがよく分からないが、使っていると石鹸のようにすり減ってなくなっていくのかもしれないな。
「あ、充電って分かんないよね。魔道具の魔石みたいなもんだよ。使ってると魔力なくなっていくでしょ?魔石は魔力なくなったら交換だから電池って感じだけど、魔力なくなったら補充して使えるみたいな感じ。」
「なるほど、それは便利だな。」
「でしょ〜?」
魔力が無くなって交換ではなく補充できるのは便利だな。そんな仕組み、考えたこともなかった。
「でさ、全然仕組みは分かんないんだけど、地図アプリ使えるんだよね。
俺が行ったことないところはモヤってスクロールしても見えないんだけど、行ったところは表示されてる。
行ったところって言っても王都と森しかないんだけど。」
「そうか。地図か。そんな小さな板の中に地図もあるなど便利なものだな。」
「だよねー、地図見れんのちょっと感動。充電減らないのも嬉しい。」
「よかったな。」
何だか分からないが、レオンは前の世界のことを思い出して感傷に浸っているわけではなく、何か新たな発見があって喜んでいたらしい。
「ホントここ、どこなんだろう?
地球と違う世界ってことは分かるけど、場所が気になる〜
銀河系なのか、宇宙空間ですらない全く別の何かなのか。
この世界ってさ普通に太陽あるよね。月は?星とか見たことなかったかも。今度夜になったら空見てみよー」
「タイヨ?ツキ?」
「え!?ちょっと待って、昼間明るいよね?」
「あぁ、昼だからな。」
「そうじゃなくて、あの明かりって何?太陽じゃないの?どうやって明るくしてんの?」
「タイヨ?何だそれは。昼は天が光を与えてくれている。夜は天が休んでいるから俺たちも休むんだ。」
「ぇええー!?マジ?昼の明かりって太陽じゃないんだ。それ新発見!マジか〜」
何を大袈裟に驚いているんだ?
そんなの常識だろ。レオンも今までは当たり前のように過ごしていたじゃないか。
「じゃあ月は?他の星は?」
「ツキ?ホシ?分からん。」
「えっとじゃあ夜になったら空って真っ暗で何の光もないの?」
「昼ほど明るくはないが天がプレゼントをしてくれる日は夜でもライト無しで歩ける。」
「天がプレゼント?何それ、すっごい気になるんだけど。」
「その日は森のウルフ系の魔物の動きが活発になるから日が落ちたら森には入れない。
空に小さなライトが3つ浮き上がるんだ。次のプレゼントは明後日だったか。」
「それ絶対見たい。」
「見ればいい。屋敷からも見えると思うぞ。」
「楽しみ〜」
子供の頃は天のプレゼントを見るために夜更かしをしてよく親に怒られたな。懐かしい。
そしてプレゼントの日の夜、レオンは庭に出て空を眺めていた。
「天のプレゼント。月が3つ・・・誰が名付けたのか知らないけどエモい。これは銀河系ではない気がする。少なくとも太陽系ではない。でも一応星はあるから宇宙としてはもしかしたら繋がってんのかな?宇宙文明発見?スゲー、てことは宇宙人じゃん。ヤバー。」
「ツッキがー♪、ツッキがー♪、マンゲツだー♪」
謎の言葉を発した後、夜遅くにテンション高く謎の歌を歌いながらいつまでも踊っていたため、隣の屋敷から苦情が来た。
頼むから貴族を敵に回すことだけはやめてくれ。




