第48話 突撃訪問
「家もダメ、冒険者ギルドもダメだとすると、奴は次はどこに出没するだろうな?」
ドランがレオンを心配して屋敷まで来てくれた。
門番に追い返されそうになっているところを俺が見つけて家に入れたんだが、よく貴族街に入れたな。
いつもより少し小綺麗な格好をしているのが笑える。もしかして貴族街に入るために服を買ったのか?ドラン、いい奴だな。
「んー、俺ならギルドに行く道で待ち伏せするかな〜」
「待ち伏せ?レオンが通るまで何時間もずっと待ってるのか?それはやべーな。」
「たぶん俺の行動パターンとか街の人に聞いたりしてんじゃない?」
「そんなに街に勇者の情報が出回ってるのか?」
「分かんないけど、冒険者のみんなが口割らなくても、街の人たちで俺のこと知ってる人に聞いたら分かっちゃうし、黒髪珍しいよね?
俺が黒髪って分かったら、黒髪の奴を知らないか?って探されたら見つかるかも。」
「ああ〜なるほどな。」
コンコン
「勇者様、メワクと名乗る男が勇者様に会いたいと門のところで暴れておりますがいかが致しますか?」
「来たんじゃない?」
「来たな。待ち伏せじゃなかったな。」
「突撃だったね〜。」
レオンとドランの2人にとってあの男は脅威ではないらしく、席を立つ様子もなく呑気にお茶を飲んでいる。
「一度相手をしてやったらどうだ?」
「木剣ならいいけど〜、剣は無理だな〜」
「相手も別に勇者を殺そうとかは思ってないだろ。木剣でいいんじゃないか?」
「んー、ドラン以外と剣交えたことないからちょっと不安だけど、それでいなくなるならいいかなー」
「じゃあ俺は先に出てギルドの訓練場借りといてやるよ。」
「うん分かった〜」
何ともやる気のない返事をしているが、ドランは楽しそうに部屋を出て行った。
本当に大丈夫なんだよな?
レオンが負けるとは思っていないが、木剣であっても下手したら相手を殺してしまうかもしれん。
頭のおかしい奴ならそれも仕方ないか。
俺も仕方なく席を立って、門のところで暴れているとかいう奴に説明しに行くことにした。
「アデルー、どこ行くの?」
「メワクとかいう奴に説明をしにいってくる。」
「暴れてるんでしょ?危ないかもしれないから俺が行くよー」
「では一緒に行こう。」
「んー、分かった。」
玄関に近付くと、『勇者に合わせろー』という叫び声が聞こえた。
まったく、面倒ごとを増やさないでほしいものだ。こっちはただでさえレオンのお守りで疲れているのに。
玄関を出てレオンが姿を現すと、奴は大人しくなった。
しかし得体の知れない奴にレオンを近づけるわけにはいかないから、距離を取ったまま話し始めた。
「お前が勇者か?」
「うん。一応そういうことになってる。」
「フンッ、勇者というからどんな屈強な男が出てくんのかと思ったら剣も握れねーような細腕じゃねーか。」
こいつ鼻で笑いやがったな。レオン、落ち着けよ。怒りにまかせて殺したりするなよ。
「・・・メワクだっけ?」
「そうだ。」
「俺はレオン。俺と戦いたいんでしょ?木剣ならいいよ〜。」
「ハハッ、勇者とか言う割には肝が小さいんだな。死ぬのが怖いか?」
「んー、死ぬのは怖いね。そんなの当たり前じゃ〜ん。何言ってんの?命は大事だよ?命は粗末にしちゃダメだよ。お母さんとかお父さんとかが悲しむじゃん。だから命は大切にしないとダメ!分かった?」
レオンはこの程度では怒らないらしい。
メワクはバカにしたように鼻で笑ったかと思ったら、いつものレオンらしい返しに顔を引き攣らせた。
勇者を倒すと意気込んできてみたのに、こんなふわふわでアホっぽい勇者が出てきたら戸惑うよな。分かるわ〜
完全にレオンのペースに呑まれたメワクとかいう奴は、木剣での戦いに渋々ながら了承した。
そしてレオンと俺とメワクの3人で冒険者ギルドへ歩いて向かっている。なんだよこの絵面。
「メワクってさー、勇者になりたいの?」
「なりたい。」
「そうなんだ。そっか。でもなんで?」
「魔王を倒したいからだ。」
「へ〜」
「お前なめてんのか?」
レオンよ、「へ〜」なんて返事をすれば相手も怒るだろ。俺でも分かるぞ。
「なめてないけどさ、魔王倒したいなら倒しに行けばいいじゃん。勇者しか倒しにいっちゃいけないなんて決まってないでしょ?」
「なっ!」
確かに。レオンの言う通りだな。
別に魔王に挑むことは禁止されていない。
討伐隊が組まれたことも過去にはあったと聞くし。
メワクという男はそのレオンの言葉に黙ってしまった。
正論だからな。何も言い返せないんだろう。
「ねーねーメワク、昼食べた〜?
サンドイッチ好き?好きだよね?嫌いな人なんていないもんねー
俺お腹空いたんだけど一緒に食べない?アデルは食べるよね?そうだ、ドランの分も買っていこうよ。」
「・・・。」
「あぁ、そうだな。」
メワクは一瞬何を言われたのか分からずキョトンとして、ワナワナと震えだした。
「お前はそうやって俺の精神を乱して!純粋な剣の腕ではなく心理戦で勝つつもりか!!?見損なったぞ!!」
そしてレオンに向かって怒鳴ると、1人でギルドへ向かってズンズン歩いて行ってしまった。
「ねーアデル、あの人なんで怒ったの?俺、あの人の精神乱すことした?」
「さーな。俺には分からん。」
レオンはレオンだった。
レオンは元々こういう奴なんだから見損なうも何も、奴がレオンのことを知らんだけの話だ。
「まぁいっか。とりあえずお昼にしよ〜
ドランの分と、念のためメワクの分も買っておこう。俺の分が無いって怒るかもしれないし。」
「・・・そうだな。」
レオンと俺はゆっくりと昼食をとると、ギルドに向かった。
メワクは待たされて怒っていそうだが大丈夫だろうか?
それともドランに捕まって怒られているんだろうか?




