第44話 俺は理解者を得た
「そういえばアデル、体調平気なの?」
「あぁ、昼前に熱は下がった。」
「そっか。よかったね。」
「アデル、レオンが1人で活動しているからおかしいと思ったら体調が悪かったのか?」
「あぁ、例の流行り病だ。やっと治った。」
「そうだったのか。大変だったな。美味いもん食いに行くぞ。」
なるほど。やっぱりドランは面倒見のいい兄貴だな。おかしな噂のフィルターを外して見てみると、かなり頼もしい人物に見えた。
ギルドを出ると、レオンとドランと共に酒場へ向かう。
ドランは色んな店を知っていて、今日は個室の酒場を選んでくれた。
ギルドでドランと共にいれば変な奴が絡んでこないのは、ドランが恐ろしいからではなく、ドランなら大丈夫だという信頼からなのだということも分かった。
「「「かんぱーい」」」
「アデルの快気祝いだねー」
「あぁ、ありがとう。
しかしレオン、お前懲りもせずまた騙されたんだな。女ではなかったが。」
「だって知らなかったんだもん。パーティーってのも初めてだったし、戦う人、解体する人みたいな感じで役割が分かれてるんだと思ってさ〜」
「アデル、レオンがまた騙されたというのは何だ?」
俺はこの前、レオンが美人局に騙されてスラムに連れて行かれたことを話した。
「・・・レオン、お前は。
アデル、アデルがいない時は俺がレオンの面倒を見よう。レオンはまだこの世界のことを知らなすぎる。このままではレオンはまた騙されるぞ。レオンを1人で歩かせるのは危険だ。」
「ドラン、助かる。」
俺はドランと固い握手を交わした。
「え〜、俺そんなに信用ないの〜?
ちゃんと自分で自分の身護れるくらい強くなったよ〜?」
「「そういう問題じゃない!」」
思わずレオンに突っ込むと、ドランと声が重なってしまった。
しかしレオンという爆弾を抱えていた俺にとっては、ドランという頼もしい奴が味方になってくれるのはかなりありがたい。
「え〜、まぁでも知らないこともあるからな〜
なんか初めてのお使い失敗しちゃった子供みたいで恥ずかしい。そんなに心配しなくても大丈夫だと思うんだけどな〜」
レオンは自分の価値を全然理解していない。恐らくそこからもう俺たちとは考えが違うんだろう。しかし、価値観の違いを正すというのはとても難しいことで、ましてや生きてきた世界が違うんだから、もうそこは俺たちがサポートというか監視して導いてやるしかないんだろう。
「この世界にも個室居酒屋ってあるんだね〜知らなかった。
これも美味しいね〜」
レオンは危機感を全く感じていないようで、いつも通り鳥肉の串焼きを美味しいと言って頬張っている。
そしてそれを半分呆れた様子で見ているドラン。
分かるぞドラン、そして共感してくれて嬉しいよ。
「アデル、お前1人でよく頑張ったな。」
「ドラン、理解してくれて嬉しいよ。」
こうして俺は同志を得たのだった。
そしてゆくゆくは面倒見のいいドランにレオンを押し付け、いや俺の立場をお譲りして、俺はゆっくりとフェードアウトしていこうと思っていることは、今はまだ黙っておこう。
後日、ギルドへ向かうと、ドランにちょっと来いと裏に連れて行かれた。
まさか俺がドランに押しつけようと企んでいたことがバレてしまったのかと冷や冷やしながら付いて行ったら、なんのことはない先日のレオンを利用したアホどもの処遇が決まったのだとか。
彼らはレオンを害してはいないこと、レオンが許すと言っていることから、借金奴隷として半年間の規律厳しい労働施設に送られるとのことだった。
まぁ、妥当だろう。
レオンがそのような話を聞いても大丈夫なのかを確かめるために、まずは俺に話に来たらしいが、俺もよく分からん。
レオンのいた世界でも戦争はあったと聞いているし、借金奴隷に送られるなんて普通だろうと思って話すことにしたが、レオンは「奴隷!?」と驚いて難しい顔をして固まった。
不味かっただろうか?
しかし半年間、規律厳しい労働施設で働くのだと説明をすると、「ケームショみたいだね。」と謎の言葉を残して納得した様子だった。
なるほど。レオンのいた世界でも同じような仕組みはあったということか。
とりあえず納得してくれたみたいでよかった。
そして、あの件以降、ドランと共に行動するようになった。
いつも2人だったのが3人になっただけなのだが、俺としては精神的にかなり救われている。




