第42話 いいように使われる勇者
ギルドに入ると、何やら揉めているようだった。その中心にはドランがいる。
ドラン、何をやったんだ。レオンの前ではいい奴に見えるんだけどな。
殴ったのか1人男が倒れているし。
「ドランー、いいよ別に〜」
聞き覚えのある声と間延びした喋り方に、少し移動して見てみると、さっきはドランの影に隠れて見えなかったがレオンがいた。
レオンも何か問題を起こしたのか?ドランと共に?
「あれー?アデルー、もう大丈夫なのー?」
「あぁ。」
レオンが俺を見つけて声をかけた。この状況で俺に振らないでくれよ。
周りを囲んでいた奴らの視線が一斉に俺に向けられる。
仕方なく俺はレオンの側まで行って状況を聞くことにした。
「レオン、これはどういう状況なんだ?」
「その倒れてる人と、その横の2人と一緒に最近3回くらい一緒に依頼受けたんだけど、報酬で揉めたっていうか、ドランが怒っちゃって。」
「報酬で揉めたのは分かるがなぜドランが怒るんだ?」
レオンの説明だけではよく分からん。
俺はちょっと怖かったが殺気を飛ばしているドランに視線を向けた。
とその時、ギルドの奥からギルマスが出てきて話を聞くと言って俺たちは奥に通された。
まぁそうだよな。この時間はただでさえギルドは混むんだ。こんなに騒いでいたら通常業務ができないよな。
俺は関係ないんだが、例の3人とレオンとドランと俺も一緒に連れて行かれた。
「それでドラン、何があった?」
ギルマスはなぜかドランに説明を求めた。
1番冷静さを失っているであろうドランに聞くのか?
ドランはフゥーッと一つ息を吐き、話し始めた。
レオンが臨時で組んだパーティーで、レオンは利用されていいように使われたのだと。
報酬は等分だと聞いていたが、レオンが魔物を1人で倒して周りの奴らは血抜きと解体をして、その際に魔石をくすねていたらしい。
しかも、彼らのランクでは行けないような高階層にまで行ってレオンを戦わせ、その魔物からも魔石を盗み、戦ってもいないのに買取報酬はしっかり等分していたのだとか。
そしてそれを知ったドランがパーティーの奴らに抗議して、『勇者がアホだから悪い』とか開き直って侮辱し始めたため殴ってしまったらしい。
レオンはパーティーメンバーとも上手く共闘できるわけではなかったようだ。戦ったのはレオンだけか。まぁそうなるよな。
レオンと共闘できる奴がいるとしたらドランくらい強くなくては無理だからな。
「なるほど。勇者殿、ドランの話によると戦ったのは勇者殿だけだということになる。まぁ、討伐履歴を見てもこいつらに倒せる魔物ではないのは分かるが、ドランの言ったことは本当か?」
「そうだね。そう言われてみれば戦ったのも運んだのも俺だけだねー。
血抜きとか解体は見せてもらったし、なんて名前の魔物かは教えてもらった。
魔石ってのは見たことなかったし、解体の時に抜き取られてたのも知らなかった。」
「ふぅ、そうか。で、お前たちは何か言い訳はあるか?」
「勇者なんだから貧乏な俺らにちょっとぐらい恵んでくれてもいいだろ?勇者を害したわけでもねーんだし。」
「だよなー」
「・・・。」
「お前ら!」
「ドラン、座れ。」
席を立って今にも殴りかかりそうなドランを、ギルマスは制した。
ドランが大人しく座ったのも少し不思議だった。
「反省の色なしか。お前たちの依頼達成記録は削除させてもらう。それと金を返せと言ってももう無いだろうから、ギルドから勇者殿には返金する。お前たちはギルドに借金という形になるな。」
「そんな・・・生活できねーじゃねーか。」
「ギルマスひでーよ。」
「困る・・・。」
「ねぇ、別にいいよ。お金は。俺も勉強不足だったしさ。今後は他の人に迷惑かけないならいいよ。」
レオンはやはり怒るということが無い人物のようだ。そして優しすぎる。
「レオン、お前舐められたんだぞ?正当な報酬貰えずに騙し取られたんだぞ?レオンが許してもレオンを騙したこいつらのこと俺は許せねえよ。」
「ドラン、お前の気持ちは分かる。ギルドとしても勇者殿に働いた対価を渡さないというのは問題だからな。しかし、勇者殿の意向でもあるからギルドでは勇者殿の意思を尊重する。」
「ギルマス、なんでだよ。真面目にやってるレオンが報われないだろ。」
「勇者殿の意思は優先するが、私も許す気はないぞ。世界にとって重要な人物に手を出したんだからな。国にしっかりと報告する。
勇者殿が許しても、周りは許さないということだ。処刑はされないとしても厳しい教育は行われるだろうな。」
「そういうことか。じゃあ俺はもう何も言わん。」
なるほど。レオンの意思を優先しつつ、あいつらのことを許しはしないと。
よくて借金奴隷か、悪ければ犯罪奴隷としてどこかに送られるんだろうな。まぁ何年か真面目に奴隷として働けば解放されるだろう。
「アデルー、俺全然分かんなかったんだけど〜」
「勇者に手を出してはいけないということだ。」
「んー?分かんない。」
「勇者に何かすれば国が対処するから、レオンはそのままでいいということだ。」
「そっか。分かった。」
その後3人はギルド職員に連れられて行った。そのまま国に渡されるのかもしれない。




