第40話 最も簡単に騙される勇者
「アデルー、今日大変だったんだよ〜、マジで〜」
「なんだ?」
変な奴らに囲まれてスラムに連れて行かれたんだろ?知っている。
その後、衛兵に助けられたのも知っているぞ。
なぜ絡まれたのかは知らんが。
「なんかさ〜、すっごいセクシーなお姉さんが俺に一目惚れしたとか言ってきてさ、一緒にお茶してたんだよね。胸の谷間とか凄くてさ〜
そんなお姉さんに誘われたら付いて行っちゃうじゃん?」
「どうだろうな?」
「で、腕とか絡めてくんの。腕に柔らか〜い胸の感触を押し付けられて、建物の影に連れて行かれて、そのお姉さん俺に抱きついてきたんだよ。」
「そうか。」
「そうなったらさ、抱きしめ返すじゃん?だって女の子から勇気を出して俺を誘ってくれたんだよ?」
「・・・。」
果たしてそんな上手い話があるのか?高位貴族の子息ならあるかもしれんが。
もしくは大商会の子息とか。
いや、レオンだって勇者ならあるのか?
いずれにしても、金目当てか見せびらかしたいとかそんなことなんだろうが。
「そしたら、怖いお兄さんに囲まれたんだよね。なんかボスの女に手出したから金を寄越せって。とにかく付いてこいって言われて、ボロボロの家が立ち並ぶとこに案内されてさ、そのお姉さん俺のこと騙したんだよ。酷くない?」
「そうか。」
なるほど。レオンは美人局に引っかかったんだな。
はぁ、そんなもんに引っかかる奴いるんだな。
「でさ〜、俺のこの世界での初恋は幕を閉じたってわけ。
なんか誰かが警察みたいな人たち呼んでくれて、金を出す前に解放されたんだけどね。」
「助けたのは衛兵たちだと思うが、それは大変だったな。これからは簡単に甘い誘いに乗らないようにしろよ。」
「だね〜、相手は俺のこと勇者だって知ってて、だから手は出さなかったんだけど、勇者なんだから金はたくさん持ってるだろ?って言われてさ。
この前の討伐でかなりお金は貯まったんだけど、全部アイテムボックスに入れてたから、ポケットとか鞄を探られてもその辺で食事するくらいの金しか出てこなくってさ、勇者って貧乏なんだなって最後には哀れまれた。なんか酷くない?」
スラムの奴らにまでレオンが勇者ということが広まっているのか?
まぁ冒険者の中にはスラム出身の奴もいるから、冒険者ギルドなんかに近寄らない貴族やなんかに広まるよりは早いのかもしれない。
「まぁそうだな。レオンはそんな休日を過ごしたんだな。
それにしても勇者ということが思ったより早く広まっているようだ。誘惑には気をつけろよ。」
「分かった〜」
本当に分かってんのか?
こちらの世界の常識がまだ完全に把握できていないだろうし、女関係は特に注意が必要かもしれんな。純情なふりして金目当てに寄ってくる女もいるだろうし。
レオンの勇者という肩書きに目をつけた貴族やなんかが寄ってこないとも限らない。
あいつらは卑怯な手も息をするように簡単に使ってくるからな。貴族の笑顔ほど信用できないものはない。まだスラムの美人局で済んでよかったと思うべきか。
「レオン、お前そういえば結婚についてはどう考えている?」
「え?結婚?そんなのまだ考えられない。30くらいになってからかな〜
でも運命の出会いとかあったら分かんないけど。」
「そうか。なら、特に令嬢とは絶対に2人きりになるなよ。部屋に2人きりで入ったら結婚させられる。」
「マジ?怖すぎるんだけど。」
「結婚する気がないなら、そういう気分になったら相手には手を出さず娼館へ行け。」
「召喚?」
「違う。床の相手をしてくれる娼婦や男娼がいるところだ。」
騙されたり、おかしな連中と付き合うくらいなら娼館に通ってくれた方がまだいい。
ちょっと目を話した隙に女に騙されるなど、やはりレオンは単純でアホなんだな。
しっかりとレオンの普段の行動も見てくれるようなパーティーメンバーを探してやらないといけない。
勇者というだけで寄ってくる女は多いだろう。女だけでなく男も。旅先でも女関係で揉めるなんてことがあると困る。
「へ〜風俗ってことか。この世界にもそんな性的サービスあるんだね〜」
「あぁ、あるぞ。」
「ちょっと興味ある。アデルは行ったことあるの?」
「ある。男はだいたい一度は行っているだろう。冒険者の連中に聞けばもっと詳しいかもな。」
「そっか。今度機会があれば聞いてみようかな。」




