第39話 連れ去られる勇者
「アデルー、俺さ、結構強くなったよね。」
「ん?あぁ、そうだな。」
「それなりにこの街にもこの世界にも慣れてきたよね。」
「そうだな。」
「じゃあアデルと四六時中一緒じゃなくても大丈夫だと思うんだよね〜
俺、すっごい無知だっからアデル疲れてたでしょ?今日の休みは俺、1人で街を散策してみる。アデルはアデルで休日を満喫して〜」
「分かった。」
まぁ、確かに今のレオンであれば危険はないだろう。
スラムなどに近付かなければ大丈夫か。
レオンが勇者であることがどれほど広まっているのかは分からないが、冒険者であればレオンの実力を知っているし手を出すこともないだろうし、レオンの知り合いは意外と多いからな。
まぁ、1日くらい大丈夫か。
確かにレオンと離れてゆっくりできるのは嬉しい。何をしようかとワクワクした。
アイテムボックスの中に入れておくものを買いに行くのもいいし、屋台でサンドイッチなどを買って、公園でゆっくり過ごすのもいいし、服を買いに行ったり、カフェ巡りなんかもいいな。
レオンは出かける前に俺のところに、この服の組み合わせはどうか?この髪型はどうか?と何度も何度も見せにきた。
何しているんだ?無難なものを選べばいいだろう。
そしてやっと自分で納得したのか、意気揚々と出掛けていった。
1人で行きたいところがあったのかもしれないな。
そして半刻ほど経ってから俺も出掛けた。
アイテムボックスに入れるための野営道具を色々買って、建物の影でアイテムボックスに入れた。
その後は、前によく行っていたカフェに入り、お勧めのケーキとハーブティーを頼んで、窓の外の人並みを眺めながらゆっくり過ごした。
たまにはこんな休日もいいな。なんてほのぼのと過ごしていたら、レオンらしき人物を見かけた。
周りを冒険者?いや、あれは冒険者ではないな。もっと危ない奴らだ。スラムの奴らか?に囲まれて歩いているように見える。
ハァー
あれはどう考えてもトラブルだよな・・・
短い休息だった。
俺は金を払うと、仕方なくレオンを追った。
手を出されてもレオンが負けることはないだろうが、レオンは対人戦の経験がない。
しばらく見守って、無理そうなら助けてやるか。問題なさそうなら俺は図書館にでも寄ってから帰ろう。
レオンがアイテムボックスなんかを俺に与えたせいで、ステータスの魔法の項目に空間魔法なんてものが付いていたんだ。
少し離れてレオンたちに付いていくと、やはりスラムに向かうようだ。
しまった。スラムという場所があるということもレオンは知らないかもしれない。関わることなどないと思っていたからスラムの説明をしていなかったのは俺の落ち度かもしれない。
レオンのいた世界でも悪い奴らはいると思うんだが、まさかいないのか?
剣も持って歩くだけで捕まると言っていたし、この世界よりも厳しく取り締まられているのかもしれないな。
レオンたちが入って行った崩れそうな建物の外からチラッと中を見てみる。
レオンは囲まれており、なんだか偉そうに壊れたような椅子に座っているリーダーと思われる男と向き合っている。
話している内容はよく分からない。
とにかく「ふざけるな」だの「痛い目に遭わせるぞ」だのなんかそんなことを叫んでいるが、レオンは相変わらず飄々としている。
きっと相手もそんなレオンの様子に余計腹を立てているんだろうな。
レオンも何か話しているようだが、聞き取れなかった。レオンが怒っている様子はないし、謝っているような様子もない。なんだ?友好的な様子でないことは確かだが。
すると、女が入ってきた。随分と肌の露出が多い格好をしているが、リーダーと思われる男の膝の上に座ったところを見ると、リーダーの女なんだろう。
暴力行為は今のところ無いが、激昂したら口より先に手が出るような奴らに囲まれているのだから、どうなるかは分からない。
衛兵を呼んでレオンの解放をしてもらうか。
戦って負けるような相手ではないが、一方的にボコボコにして復讐と称して何度も挑まれたら面倒だしな。
大体何でそんな奴らと揉めているのかが分からん。
レオンは一体この数時間の間に何をしていたんだ?
どうしようかと迷っていると、衛兵が駆けつけてレオンをさっと回収していった。
冒険者の誰かがレオンを見ていて呼んだのかもしれないな。
俺もレオンの側にいたら安全だが、レオンの出立を見送ったら1人に戻るわけで、あまり変な奴らと関わりたくはない。
俺もこんなところに用はないし、こんなところはさっさと立ち去るに限る。
そして俺は図書館に寄って空間魔法の本を眺めてから家に帰った。




