第38話 レオンの素性が明かされる時
魔法師団の本部を後にすると、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
「今日も薬草採集を受けるのか?」
「だね〜、Eランクだとその依頼しか森に行けないし。それに昨日の買取の精算とリザードマンの革もらいに行かなきゃだもんね〜」
「そうだな。あれだけ売れば、レオンが欲しがっていた香油も買えると思うぞ。」
「マジ?それ一番嬉しいかも〜、あと化粧水とか乳液とかも欲しいな〜日焼け止めも。そろそろ日差しが強くなってきたし。染みとか皺とか作りたくないじゃん?」
「染みや皺は歳をとればできてしまうのは仕方ないだろう。」
「それでも。いつかできるのは分かってても、できるだけ長く綺麗な肌を保ちたいじゃん。」
「そういうものか?」
まるで貴族の女性みたいなことを言うんだな。
そのうち肌を白く見せる白粉や口につける紅などをつけるようになったりしないよな?そんな勇者は見たくない。
だいたい肌など怪我さえしなければどうってことないだろう。特に困ったこともないしな。傷があるのは嫌だが、ずっと放置された深い傷でなければ跡が残ることもないし。
「レオンとアデルが来たぞー!!!」
「「本当だ!」」
「「やっと来たかー」」
俺たちがギルドに入ると、大勢の冒険者に囲まれた。
こんな時間はみんなが出払っている時間じゃないのか?なんで揃いも揃ってこんなところにいるんだ?
「みんなどうしたの〜?なんかあったっけ〜?」
呑気にレオンが尋ねるが、ザワザワとうるさくてレオンの声もかき消されてしまっていた。
すると、ドランが疲れた様子で近づいてきた。ドランもいたのか。
「レオンお前、昨日えらいことしたろ?」
「え?何?俺なんかしたっけ?アデル、俺なんかした?」
「さぁ・・・。」
森を破壊して道を作ったのはもっとだいぶ前で、あれはじいさんが元に戻してくれたし、昨日のレオンは森は破壊していないはずだ。
いや、俺が待っている時に何かしでかしたのか?
レオンとバルムンクだからな。有り得なくはない。森の一部を抉ったか、一部を更地にしたか、もしや誰かを巻き込んだということはないだろうな?
「大量の魔物をギルドに卸したんだってな。」
「ん。だね〜」
あ・・・俺は分かってしまった。
レオンも俺もEランクだ。1階層にしか出入りしていないはずのろくに戦えもしないEランクだ。
そのEランクがだ、4階層や5階層の魔物を大量に討伐したら、そりゃあ噂になるよな。バルムンクのことやコピーのことで疲れていてそこまで頭が回らなかった。
これは俺の失態と言っても過言ではない。
しまった・・・アイテムボックスに入れているんだから、小出しにすれば良かったのに、よりにもよってあの魔物の山を一気に出してしまった。
「レオン、すまない。俺のミスだ。」
「え〜、別にアデルのせいじゃないよ〜」
「そうか。レオン、事実なんだな。それで、どうする?もうギルド内は大騒ぎだ。これだけ大勢に知れ渡ったら無かったことにはできない。どうする?明かすか?」
「アデル、どうしよう。明かす?」
「明かすしかないだろうな。今までのことも馬鹿にしていたのだと憤慨されるよりは、明かして急成長したのだと言った方が皆も納得するだろう。」
「だね。分かった。明かすことにする。もうそれなりに実力あるから大丈夫だよね?」
「あぁ。あれだけの魔物を倒したんだから問題ないだろう。」
こうして冒険者たちに、レオンは俺が異世界から召喚した勇者なのだと明かすことになった。魔法のない世界で初めは魔法を上手く使えなかったからヒールで練習していたこと、本当に初めは魔道具すら起動できず、剣の握り方すら分からなかったのだと説明した。
「ヤベ〜、レオン勇者なの?スゲー」
「だな〜」
「勇者か〜、やっぱ勇者って成長すげーんだな。」
「俺ら一瞬で追い抜かれたな。」
「俺ら教える立場から教えてもらう立場に逆転したな。」
冒険者たちの反応は、そう悪いものでは無かった。
今までレオンが積み重ねた信頼がちゃんとここにはあって、全員がそうではないにしろ、大半の者がレオンが勇者であることを好意的に受け入れてくれたことに俺はホッとした。




