第36話 コピペされる俺
「あ、レベル上がったみたい。6だって。HPとか攻撃力もちょっと上がったっぽい。」
「そうか。良かったな。」
「ちょっと試してみていい?」
「あぁ。」
攻撃力やHPが上がったとして、試したところで日頃から戦っているわけではないレオンが実感できるかは分からんが、バルムンクが教えてくれるのかもしれないな。
「あ、できたみたい。」
「は?」
剣など振るっている素振りはなかったが何をしたんだ?
「アデルに超回復をコピーしてみた。で、ついでにアイテムボックスと経験値増量ってのもコピーしてみた。どう?なんか変化あった?」
「は?試すってレベルアップしたから攻撃力などを試すということではなかったのか?」
「ん〜?違う。コピペ、俺のスキルをコピーしてあげるやつ、できるかな〜?って思ってやってみたらできたよ。」
『このカツレツ美味しいね』と言った時と同じ笑顔でそんなことを言うが、どれだけ恐ろしいことをしたのかこいつは分かっているのか?
「レオン、コピーは気軽に使ってはいけない。一歩間違えたら大変なことになるんだ。」
「あ、そっか。ごめん。隠匿も必要だったね。はい、コピーできたよ。」
「そうではない。助かるが、助かるんだが、頭が追いつかない。とにかく、気軽にスキルを人に与えてはいけない。どうしても与えたい時は必ず俺に相談しろ。」
「は〜い。戦闘スキルじゃないし便利なものだからいいかな〜って思ったのに。」
助かるが、アイテムボックスとか特に嬉しいが、全て有用なスキルだということは分かっているが、それでも色々なことが一気に起きすぎて、俺の頭はパンク寸前だった。
「レオン・・・俺は疲れた。少し休みたい。」
「うん、分かった。じゃあちょっとここで待ってて。バルムンクが物足りないって言ってるから、俺はもうちょっと魔物と戦ってくる。」
「あぁ、分かった。」
あの技を見せられれば、レオンがこの階層でどうにかなってしまうのではないかという心配はもう消えた。この階層では物足りないと言ったのはバルムンクだけでなくレオンもそうなんだろう。
俺は大人しくアイテムボックスを試しながら待っていることにした。
何度か試しているうちに、アイテムボックスはスムーズに出し入れできるようになった。これは本当に便利だな。まだ使う予定もないのに野営道具を色々買って入れていたレオンの気持ちが分かる。俺も非常時のために色々入れておきたいな。
しばらくアイテムボックスを使って石や薬草などの出し入れを行なって、飽きてきたと思い始めた頃にレオンは帰ってきた。
「手ぶらか。魔物は見つからなかったのか?」
「いたよ。倒してアイテムボックスに入れたんだよね〜、アイテムボックスって超便利〜
倒した魔物って確かギルドで売れるんだよね?」
「あぁ、討伐依頼を受けていないから討伐報酬は無いが、買取は可能だ。
それで何を倒したんだ?」
「見る?」
「街に戻る前に見ておこう。」
ギルドで度肝を抜かれる前に先に見ておくことにした。心の準備というやつが必要な予感がしたんだ。そしてそれは正しかった。
レオンのアイテムボックスから次々と出して積み上げられていく魔物の山。
「どこまで行っていたんだ?」
「バルムンクにせがまれて5階層まで行っちゃった〜。アデル置いていっちゃってごめんね。大丈夫だった?」
「あぁ、俺は大丈夫だ。魔物も来なかった。」
「そっかよかった。」
「帰るか。」
「うん。そうだね〜バルムンクもちょっと暴れてもう満足したって〜。」
ちょっと暴れたどころの話ではないんだが・・・。
レオンが倒した魔物の中にはリザードマンもちゃんと含まれていたことから、バルムンクの意思だけではなく、これだけの数の魔物を倒したのはレオンの意思もあったのだと思った。
「ちょっと待って下さいね。解体場に直接納品ということで、買取金額は計算に時間がかかるので、お待ちいただくか、明日でもいいですか?」
「うん、いいよ〜」
解体場に直接。確かにそうなるよな。カウンターにこんなに大量に出されたら迷惑でしかない。
「あ、そうだ。リザードマンの革は使いたいから売らない。解体したら俺がもらう〜」
「畏まりました。恐らく解体には数時間かかるかと。明日のお渡しでも構いませんか?」
「うん。じゃあ精算も明日ってことでもう俺たちは帰るね〜」
「分かりました。」
そしてその日はヒールという冒険者たちへの奉仕はせず、屋台で夕食を買ってすぐに家に帰った。
解体場が埋まったことで、レオンが実はとんでもなく強いということが知れて、ギルド内が大騒ぎになっていることを、この時は知らなかった。




