第33話 勇者のアイテムボックスの中身
「そういえばさ、エルミーツさんが言ってたアイテムボックス?空間に物をしまえるやつ、あれに色々入れておきたい。
キャンプ道具とか。カップとかコーヒーはこっちにはないから紅茶とか入れておけば、森に行った時に大自然の中で優雅にティータイムとか楽しめるじゃん。」
「そうだな。我ら魔法師からしたらアイテムボックス持ちがいると遠征が楽でかなり助かるんだ。しかもレオンは上限がないんだろ?それはかなり有用なスキルだな。羨ましい。」
「じゃあさ、俺が人にもスキルのコピーできるようになったらアデルにコピーしてあげるよ。」
「レオン、そのようなことを簡単に言ってはいけない。誰かに聞かれたらどうするんだ。スキルのコピーができるなど、どの国も喉から手が出るほど欲しい。
あっという間に捕えられて死ぬまで延々とコピーだけさせられるぞ。」
「げぇ〜、マジか。なんか俺、結構持ってるスキルヤバくない?」
「そうだな。持っている剣も危ない物だし、誰にも言わないよう気をつけろよ。」
「分かった〜」
一応レオンも危機感を持つということはできるんだな。
いつも訳の分からないことばかり言って、能天気野郎なのかと思っていたが、そこはちゃんと理解してくれて助かった。
「水は出せるようになったし、とりあえずカップかな〜、あと、ヤカン?ポットだっけ?鍋でもいっか。お湯沸かしたいよね。寒い季節とかもあるでしょ?」
「あぁ、冬になると王都でも雪が降るからな。寒いぞ。」
「じゃあやっぱりお湯沸かす道具は欲しいよね。紅茶ならティーポットも要るか。ティーバッグとかないもんね。とりあえずそれくらいかな。買って帰って、家でアイテムボックスに入れてみようと思う。」
「そうだな。あまり大っぴらに使わない方がいいかもしれん。十分自分の身を守れるほどの腕になればそんな気を回さなくてもいいかもしれんが。」
「だよね〜」
「キャンプと道具ってさ、見てると楽しいよね〜
あー、キャンプじゃなくて何て言うんだっけ、野営だ。」
テントや寝袋、簡易テーブルや椅子も買っていたが、レオンは今すぐにでも旅に出るつもりなのか?
「じゃあアイテムボックスやってみるね。空間に収納ってのがイマイチわかんないんだけど、エルミーツさん曰く、空間に切れ目を入れてそこに手を突っ込んで取り出したり、入れる物に触って中に入れるイメージをするだけでいいって言ってた。」
「俺は持っていないから分からないが、本にもそのようなことが書いてあったな。」
レオンはまず初めに、カップをアイテムボックスにしまったようだ。
「おお〜!すごっ!これは確かに便利だね〜
とりあえず全部入れてみるね。」
「あぁ。」
次々と野営道具を収納していくレオンを、俺はただひたすら眺めていた。
「で、この入れたやつを出す。カップでしょ〜、寝袋でしょ〜、ん?なんだこれ。とりあえず出してみる。
え?これ俺のリュックじゃん。日本にいた時のやつ。全部あっちに置いて身一つでこっちにきたのかと思ったけど、アイテムボックスに入ってたんだ〜」
レオンは向こうの世界で使っていたというリュックとい鞄らしきものを出した。
革なのか布なのか分からない、見たことのない生地でできているリュックというものの短い紐のようなものを横に引っ張ると口が開いた。
「ちゃんと中身入ってる〜アデル、あっちの世界の物見たい〜?」
「あぁ、興味はあるな。」
この能天気なレオンが生活していた世界か。魔法もないし武器も持っていない世界でどのようなものが使われていたのかは気になるな。
とんでもない武器や、魔法に変わる何かが出てくるかもしれないと思うとワクワクした。
「えっとね〜、これ俺の一番大切なもの。スマホ〜」
「スマホーとはなんだ?」
「うーん、何て説明すればいいんだろう?電話ないんだよね。この世界には無いものが集結した塊?
これは、遠く離れた相手と文章のやり取りをしたり、話したり、何でも調べたりできるし、写真とか動画も撮れるけど写真も動画も分かんないよね。」
「ほとんど分からないな。手紙が書けることは分かった。」
「ん〜手紙が書けるってわけじゃないんだけどね。2台あったら実演できるんだけど、俺2台持ちしてなかったからな〜
あ、でもWi-Fi無いし、電波来てないからどっちにしてもダメか。
それにもう充電切れてるだろうし。充電もできないよね〜、ケーブルはあるけどコンセントないし。
って、電源入るじゃん!」
四角い板のようなものを嬉しそうに眺めているが、はっきり言って意味が分からない。その板の上で手紙を書くということなのか?それがそんなに嬉しいのか?
しかしその板にレオンが触れていると音が鳴った。
楽器なのか?見たことのない楽器だな。
「あ〜やっぱり圏外だ。もうそれは当たり前だよね。基地局とかあるわけないし。むしろあったら怖い。あったらここ地球ってことになるし。
ブラウザはダメだね〜インターネットに接続できませんって出てる。ゲームとかSNSもダメだね〜、電話もメールもダメだ。音楽アプリはダウンロードしたやつは聞けそう。カメラと写真を見ることもできるみたい。オフラインで使えるものはいけるのかもメモもいける、電卓も。それくらいかな〜
時計は合ってるのか分からないし、カレンダーも。
ん〜でも充電無くなって使えなくなるのも時間の問題かも。ちょっと寂しい。
バカみたいな写真とか、なんか懐かしい。
せっかくだからアデルの写真撮ってあげる〜。」
何を話しているのか全然分からなかった。レオンのいた世界とはこんなにも文化が違うんだな。板を眺めることが趣味なのも不思議なことだ。
パシャッ
なんだ?やはり楽器の機能もあるのか?変わった音だな。
「見てみて〜、ほらアデル。」
「ん?これは鏡か?」
「違うよ〜じゃあ俺が自撮りしてみるね。ウェーイ。見てみて〜」
レオンが差し出した板を見ると、先ほどのポーズをとったレオンがそこに表示されていた。鏡のように全くそのまま鏡を保存したようだ。
仕組みが全く分からないが、とても不思議な出来事だった。
そしてドウガというのもやってもらった。
鏡に写したものを絵のように保存するのではなく、動いているものをもう一度見ることができるし、なんとその時の音まで再現されている。魔法か?
レオンは魔法を使えなかったが、レオンのいた世界にはこの世界よりも魔法と類似した技術が凄まじい発展を遂げているのかもしれない。




