第31話 じいさんの魔法指導
「これは美味いな。」
「でしょ〜?ご飯があったらもっと最高なんだけど〜、この国には無いみたいでさ。
エルミーツさんはご飯って知ってる?」
「聞いたことがあるな。東方の島国で食べられている麦に似たものだ。食べたことがあるかは正直覚えておらん。」
「そっか。でもあるかもしれないって分かっただけで十分だよ〜ありがとう。」
レオンとじいさんは和やかに話しながらカツレツを食べている。
俺は強大な力を持つ者が2人も目の前にいるのだから、悠長に食事などとれるような心境では無いんだが・・・。
ドランと食べた時は美味しいと思ったカツレツだが、今はほとんど味がしないそれを、ただひたすら口に突っ込み咀嚼して喉の奥へと流し込んだ。
「ねぇねぇ、エルミーツさんってさ、凄い魔法使いなんでしょ?例えば空飛んだりとか、そんなこともできちゃったりする?」
「空か。飛べなくはないが、空を飛んでの移動など時間がかかるだけじゃから使わんんな。」
「そうなんだ?時間かかるの?蝶々が飛ぶくらいのスピードですっごいゆっくりしか飛べないとか?」
「いや、正確な速さは調べたことがないが、馬車なんかよりは速く飛べる。」
「それなら結構便利そうな気がするんだけど。」
「どうじゃろうな。わしは空間移動でサッと移動するから使わんな。」
「え?それって、ドア開けたら好きな場所に行けちゃうみたいなそんな感じ?」
「あぁ、そうじゃな。一度行ったところでないと行けんが、便利じゃぞ。レオンお主も使えるようになるやもしれん。」
「マジ?空間移動か〜楽しそうだな。でもやっぱり俺は空を飛んでみたい。
人間ってさ、羽が無いじゃん?だから空に憧れんのよ。」
「ほう、そういうものかの?」
空を飛ぶ・・・、空間移動・・・、それは太古の昔に失われた古代魔法では無いのか?実在はせず、空想の話かと思っていた。
実際に見ていないのだから、本当にそんなことが可能なのか、それともこのじいさんがホラを吹いているのかは分からんが、レオンが荒らした森を元に戻していたしな。
このじいさんになら可能なのかもしれん。恐ろしいことだ。
きっと反抗などしたら、一瞬で俺の命などないだろう。それどころか、この王都が一瞬で消えてしまうのではないか?王都だけで済むか?この国が更地とか・・・。
そう思うとカツレツを飲み込むことさえ喉が拒否するようだった。
レオンは毎日、Eランクの薬草採集を受け、それを一瞬で終わらせると、じいさんに魔力のコントロールを教えてもらっていた。
その際にじいさんがやったことは、自分や対象物に結界を張るのではなく、自分たちを結界で囲って周りに被害が出ないようにするという方法だった。
内に向けた結界など初めて見た。
「アデルと言ったか?お主もそこそこ魔力量が多いな。お主も一緒に教えてやろう。」
そして、なぜか俺にも魔法を教えてくれた。
逆らえないため、初めは恐る恐るという感じだったが、じいさんの実力も教え方も、素晴らしいものだった。
ただこうやるのだと見せて真似させるのではなく、俺の魔力に干渉してきて、体内の魔力から魔法への変換を実際に俺の体内でやってしまうのだ。
こんな方法があるなんて知らなかった。
信頼していないと、とても恐ろしいが、成されるまま受け入れたら、とてもスムーズに今までできなかったものが出来るようになった。
結界もそうだが、攻撃魔法も今までどれだけ練習してもできなかったものができるようになった。そして、なぜできなかったのかも分かるようになると、一層魔法を練習するのが楽しくなった。
これで俺の魔法師としての腕もかなり上がった。レオンを見送った後も第一線で活躍できること間違いなしだ。何なら隊長なども任せられるようになるかもしれん。
「アデル、お前に今日から第1師団を任せる!」なんて団長からの言葉が聞こえてくるようで浮かれながら帰宅する日々だった。
やはりこのじいさんは只者ではない。やはり精霊なのかもしれない。
しかも上位の精霊。それかまさか神だったりするのか?
レオンはじいさんの教えもあって、かなり魔法が上達した。
「スゲェー、やっとできた!俺、魔道具起動できたよ!!」
2日でレオンは魔道具の起動ができるようになり、3日目には弱い攻撃魔法を撃てるまでになった。俺たちのような凡人にとっては、弱い魔法を撃つのはそれほど難しいことではないんだが、レオンのように膨大な魔力を持つ者にとっては弱い魔法を撃つことはとても難しいらしい。
ここを疎かにすると、自分だけでなく周りを巻き込んで暴発したりするというから、レオンには是非とも蚊も殺せないほど弱い魔法をどんどん練習してほしい。




