第30話 得体の知れないじいさん
『ふぉっふぉっふぉ、お主面白いことをしたのぅ。』
いつからそこにいた?謎のじいさんの出現に俺は警戒した。
魔法師団の団長も髭が長いが、このじいさんは髪も髭も地面につきそうなほど長い。仙人のような格好の得体の知れないじいさんがいつの間にか俺らの斜め前に立っていた。
「え?おじいちゃんいつからそこにいたの?大丈夫だった?怪我とかしてない?怪我してるならすぐにヒールかけるよ。」
「大丈夫じゃよ。」
「そっか、よかった〜」
レオンは相変わらず何の警戒もなく謎のじいさんに話しかけているが、おかしいだろ。
1キロ以内に人はいなかったはずだ。この一瞬でここに現れたのか、それとも俺の索敵にかからないような魔法でも使っていたのか。
いずれにしても、このじいさんは相当ヤバイ奴かもしれない・・・。
俺に勝てるか?レオンなら・・・、分からない。俺の背中に冷たい汗がツーっと伝った。
「ん?お主、わしが怖いか?」
「・・・い、いえ。」
「心配するな。攻撃してこなければ何もせんよ。」
「そ、そうですか。」
その言葉を信じていいのか分からなかったが、信じるしかない。
「これはわしが戻してやろう。困っとるんじゃろ?」
「そうなんだよね〜、まさか森をこんなに切り拓いて道作っちゃうと思ってなくてさ〜、っておじいちゃんこれ戻せるの?」
「戻せるぞ。」
「本当?お願い。」
元に戻す?正気か?そんなことができるのか?
このじいさん人間なのか?
「ほれ〜」
「すげえ〜、おじいちゃん凄腕の魔法使い?ありがとうね。本当に困ってたんだよ。
ご飯奢るくらいじゃダメだよね。何か俺にできることあったら言って。
森歩くのしんどいなら背負って街まで戻るよ。
ってかなんで森に?何してたの?薬草取りにきたとか〜?」
俺は夢を見ているんだろうか。そこにはレオンがバルムンクと作った恐ろしい道が遠くの方まで続いていたはずだが、一瞬で森に戻った。夢でないならとんでもないぞ、このじいさん。
何を考えていて、何の目的でここにいるのかは分からないが、とにかく絶対に逆らってはいけないことだけは分かる。
「お主に会いにきた。というか見にきた。」
「え?俺?何で?ところでおじいちゃん誰?俺はレオン。こっちはアデル。」
「わしはエルミーツじゃ。」
「アデル、です。」
「勇者が召喚されて暴れ回っていると聞いて見にきた。」
「そっか。俺が勇者なんだけど、暴れ回ってるってのは何だろう?さっき派手に森林伐採しちゃったから否定はできないけど、暴れてるつもりはないんだけどな〜」
「力を上手く使えておらんのだな。」
「そうなの。特に魔法は・・・。あ!もしかして俺の新しい指導官ですか?訓練場を壊しちゃってから次の人がなかなか決まらないって言ってたけど、おじいちゃんが教えてくれるの?だったら嬉しい。」
「そうか、教えてくれる者がおらんのか。なるほどな。教えてもいいぞ。」
「本当?いいの?ありがとう。」
新しい指導官だと?俺のところには何も報告がきていないし、知らない者だ。教えてもいいということは魔法師団が用意した者ではないように思うが、果たしてこのじいさんを信用していいのか・・・。
例えこのじいさんがまともな人物だったとしても、このような強大な力を持ったものを二人も抱えたら、俺の精神は崩壊してしまうのではないか?
だいたいこのじいさん、人なのかも怪しい。もしかしたら森の精霊か何かかもしれん。
勇者であるレオンの運命に寄ってくるのであれば、何が起きても不思議はない。
こうしてじいさんはレオンの指導官になり、俺たちの家に住み着いた。
なぜだ?もし精霊などであればレオンと同等か、それ以上に世間知らずかもしれない。
恐ろしいが、まだ目が届く場所にいてくれた方が対処もできるか。
このじいさんにどんな思惑があるのかが分からないのが不安だな・・・
精霊などであれば、気まぐれという可能性もあるが、人という可能性もまだ捨てきれないが、正直分からない。
そうだ、後でレオンに鑑定してもらおう。
そう思っていたが、レオンは鑑定に慣れていないせいか、じいさんのステータスやなんかは見えないと言われた。




