第29話 竜殺しの剣バルムンク
「さぁ行こう。」
「俺格好いい?この鎧も剣もなんかゲームの主人公になったみたいでちょっと嬉しい。」
「そうか。似合っていると思うぞ。」
力はあるが腕が伴っていないとはいえ、レオンも見た目はかなりそれっぽくなってきたな。鎧などの防具に身を包み、帯剣したレオンはちゃんと戦えそうに見えた。
「ねぇ、ところでさ、バルムンクって知ってる?」
「あぁ、竜をも殺せると言われている伝説の剣ってやつだな。」
「へ〜、お前そんなすごい剣だったんだな。あんなところで他の剣とまとめて叩き売られててよかったのか?」
レオンが剣に話しかけている言葉に、俺は耳を疑った。
ただ単にレオンが本か何かで読んで自分の剣にバルムンクという名前をつけているのかもしれないが。
「レオン、その剣はバルムンクという名前なのか?」
「うん。そうみたい。武器屋でさ、この剣だけ名前が見えたんだよね。しかも俺に買ってくれって言ってるみたいに思えてさ〜」
「名前が見えた?」
「うん。何だろうね?」
「レオン、もしかして鑑定スキルを持っていたか?」
「そういえばあったね。」
「マジか。ならそれは本物なんだな・・・。」
頭がクラクラした。バルムンクなどただの物語の中の産物だと思っていた。
まさか実在するなど、思ったこともなかった。
これは見つかれば国宝として国に取り上げられるだろう。確実に。
「レオン、その剣はこれからもレオンが大切に使うんだよな?」
「そのつもり〜、だってこれ格好いいでしょ?」
「なら、その剣の名前は口にするな。近衛騎士が押し寄せて国に召し上げられるか、暗殺者やなんかを送り込まれて無理矢理奪われるかもしれん。」
「嘘でしょ?そんなおっかない剣なの?困る〜
『おっかない』って久々に使ったわー、おっかないってあんま使わないよね。
あ、でもこの剣、俺のこと好きみたいだから、他の誰のものにもならないって〜
たぶん誰かに取られたりしても俺のところ戻ってくる。」
またいつものレオンの意味不明な言葉の羅列だと思っていたが、俺の耳には聞き捨てならない言葉が色々聞こえてしまった。
「は?まさかとは思うが、その剣は意志が宿っているのか?」
「たぶんそう。言葉が聞こえてくるわけじゃないけど、何となく分かる。あれかな、テレパシーかな?」
「それは分からんが、なるほど。」
何とも恐ろしいものを手に入れたものだ・・・。
さすが勇者。これが運命の導きというやつなのか。
そうとしか思えない。そうでなければたまたま伝説の剣がその辺の武器屋で格安で売られているわけがないんだ。
意志が宿る伝説の剣か。ドランの指導ももう必要ないかもしれないな。
「とりあえず、今日はこの受けた薬草採集をしっかり行おう。」
「そうだね〜、時間あればちょっとこの剣振るってみたい。森で誰もいないところでやるなら、大丈夫かな?」
「ちょっと怖いが、俺が索敵で周りに人がいないことは確認するし、俺も結界を張るから最悪の事態は避けられるだろう。」
「うん。ありがとうアデル。じゃあ行こっか〜」
くっ、勇者め。そのスキルはずるいぞ。
レオンは鑑定スキルがあるせいで、薬草採集は一瞬だった。
「薬草採集って簡単なんだね〜」
「それはレオンが鑑定スキルを持っているからだ。普通の初級冒険者は、薬草を求めて森を彷徨い歩いて必死で探すんだ。」
「へーそうなんだ。そっか俺、勇者補正がかかったチートだった。」
「いいぞー。半径1キロ以内に人はいない。結界も張ったぞー!」
離れた場所に立ったレオンに叫ぶ。
バルムンクを振るってみたいというから、俺はしっかり索敵を発動し、自分も物理的距離をとって防御結界も張った。
そして神に祈る。死にませんように・・・。
ザンッ
結界越しとはいえ、恐ろしい光景を見た。
遠くまで一直線に延び、木々は倒され地面が抉られた道を眺める。一瞬前まではなかった道だ。
レオン、お前は一体何をしたんだ?
勇者の力と伝説の剣バルムンクの力が合わさると、1足す1が2ではなく100くらいになるんだと知った瞬間だった。
「アデルー、大丈夫?」
「あ、あぁ・・・。」
「ごめん。バルムンクも久々で上手く力が制御できなかったんだって〜
これ、元に戻せたりしないよね?どうしよう・・・。」




