第27話 勇者の選ぶ武器
その後、なかなかレオンの魔法の指導官や剣の指導官は決まらず、冒険者ギルドでヒールをかけたり、ドランが暇なときに剣技を教えてもらったりしていた。
レオンは木剣の端に穴を開けて紐を通し、手首にかけて使うようになったから、木剣がすっぽ抜けて壁にぶっ刺さるということはなくなった。ほっ。
そして、農家の野菜の収穫時期が終わったようで、Fランクの荷運びの依頼は一旦終了し、Eランクの『森で薬草採集をする』という依頼を受けることにした。
1階層では、攻撃されて死に至るような危険な魔物はほとんど出てくることがない。出てきたとしてもすぐに逃げていくスライムや、攻撃してくることのない小さな鳥系の魔物だから、安全なんだが、ごく稀にゴブリンが紛れ込むことがある。
そのため、レオンの防具や武器を買いに行くことになった。
「木剣はロングソードってやつと同じ形だから、最初はそれでいいんじゃないかってドランが言ってた。あと、枝や草を払うのにダガーか解体ナイフも持っておいた方がいいって。」
「そうか。レオンは力が強いから、ナイフは普通のを買うとして、戦いに使う剣は丈夫なものがいいな。」
その辺の安い適当な剣では折れてしまうかもしれない。そしてその折れたものが飛んできたらと思うと怖すぎる。
「確かに〜
二刀流とかも憧れるな〜まだ技術がなくてそんなの無理だけど、いつか練習してみたい。」
「ニトウル?なんだそれは。」
「んーなんて言うんだろう?あ、双剣?」
「あぁ、両手にそれぞれ剣を持って戦う方法か。」
「そうそうそれー」
「確かに格好いいな。上手く使える者であれば。」
「そうなんだよねー、闇雲に振り回しても格好悪いだけだし、やっぱりかなり練習しなきゃだよねー」
「そうだな。今はロングソードでいいんだろ?」
「うん。とりあえずそれで〜
まだ下手だし壊しちゃうといけないから安いやつでいいよ〜」
中古の安い剣が木箱にまとめて差してある中から、レオンはどれがいいか吟味している。
「これ。俺これにする。なんかこれ、凄い気がする。錆びてるけど、研いでもらえるんだよね?」
「あぁ。それでいいのか?」
レオンが選んだのは、その木箱の中に適当に差してある剣の中でも特に錆が酷い剣だった。
見た目は普通よりは少し大きめのロングソードだが、グリップも汚い半分朽ちたような黄色っぽい革が巻いてあり、状態がいいとは言えない状態に見えた。
もっと綺麗なものもあるのに、なぜそれを選んだのかは謎だが、レオンがいいなら別に俺が口出すことでもない。強度さえあれば。
レオンはその剣を店主のところに持って行き、研磨を依頼している。
錆が酷いため、店主にも他のはどうかと聞かれていたが、レオンはそれがいいと譲らなかった。
そこまで気に入っている理由は分からないが、勇者としての何か勘のようなものかもしれないな。
「じゃあまた1時間後に取りに来るねー」
剣の代金と研磨の代金を払い、レオンと武器屋を後にした。
「あ、剣は買ったけどナイフ買うの忘れたじゃん。」
「さっきの剣を受け取るときに選べばいいんじゃないか?別の店で買ってもいいが。」
「んー、あの店がいいかな。おじさんいい人だったし、なんか飾ってある剣からして職人の腕も良さそうな気がした。」
分かるのか?あの店は裏の工房にドワーフがいると言われている。勘なのか、何か確かな根拠があるのかは分からないが、レオンは見る目はあるということだろう。
それなら俺がパーティーメンバーを探してやらなくても、レオンが選んだ奴らでいいんじゃないか?
レオンの気が合うような奴らと組んだ方がいいしな。
俺は旅立ちまで見守るだけでいい。
「なんか思ったよりカラフルなんだねー
でもやっぱり黒かな〜、このワニっぽいの格好いいねー、黒騎士みたいな感じ〜」
今レオンは革鎧を選んでいるんだが、思ったよりも地味なものを選んでいて意外だった。
「アデルは買わないの?」
「俺は魔法師だから鎧は着ないんだ。魔法師団から支給されている防刃難燃素材のローブがあるから、それを着る。」
まぁ1階層や2階層ならそれで問題ないだろう。先日のように5階層まで行くことがなければ大丈夫だ。
今思い出しても肝が冷える。よく魔物に出会さなかったな。レオンはあの足の速さで何とかなっただろうが、俺は出会したら死んでいたかもしれん。
「おじさーん、これ5階層行けるー?」
「防御強化の付与を追加すればいけると思うぞ。」
「じゃあこれにする〜」
いや待て、レオンはまさかまた5階層なんかに行く気なのか?
もし万が一そんなことを言い出すようなことがあれば、ドランを必ず連れて行こう。
ドランは今のところ特に問題はないが、本性がヤバイ奴だったとしても、命には変えられない。




