第26話 木剣って壁に刺さるんだな
「やっぱ俺チートなのかも〜」
「レオン、少しは剣を習ったことがあるのか?」
「んー、あ、剣道の授業受けたことあるかも〜
でもずっと前だし中学生くらいかな?ルールとかも全然覚えてない。習ったってほどじゃないかも。超初心者。握り方もよく分かんないし。」
「そうか。じゃあ握り方と振り方から教える。」
「うん。ドランありがとう。」
レオンが何を言っているのかよく分からなかったが、なんとなく言いたいことは分かった。たぶん一度くらい振るったことはあるが随分前のことで握り方も知らない初心者だということだ。
しかしレオンの世界では魔法もないし剣も握らないなど、どうやって身を守るんだろうか?
何か別の武器があるのかもしれないな。
レオンはドランに手取り足取り、本当にそういった表現が正しいと思うほど、足の位置から構えの手の位置までしっかりと教えてもらっていた。
最初の、斬撃が飛んできそうな恐ろしい音を出すことはなく、ゆっくりと動きを体に覚えさせているようだった。
まぁそうだよな。ドランも初心者で握り方も分からない奴にあんな恐ろしい剣の振り方をされたら前に立つのも怖いだろう。
木剣といえど、すっぽ抜けてあの勢いで飛んできたら最悪死ぬからな。
シュッ
と、そんなことを考えていたら、俺の頬の横を掠めるように何かが通り過ぎた。
「ごめーん、アデル当たらなかった〜?」
「・・・。」
もしかして、レオンが振るった剣がすっぽ抜けたか?恐る恐る後ろを向くと、訓練場の壁に木剣がぶっ刺さっている光景が飛び込んできた。
俺は情けなくも、あと一歩ズレていたらと思うと背筋が凍りつき、ヘナヘナとしゃがみ込むことしかできなかった。
レオンは危険すぎる・・・。
これからは距離が離れていても練習の時は防御結界を張っておこうと心に誓った。
「なんか、ゲーム機であったんだよね。コントローラーが飛んでいって危ないから、手首に紐つけておくやつ。
危険そうだから俺、あーゆーの付けておいた方がいいのかも。」
「手を放さないようにしてくれればいいんだが、確かにレオンの場合は力に振り回されている感があるからな。紐か、あった方がいいかもな。」
「だよねー
でさ、あの壁に突き刺さってる木剣どうする?」
「あれは取れねえだろ。ギルマスには一応あとで言っておく。いつかこのギルドの名物になるかもな。ははは」
そうだろうよ。笑いごとではないんだが・・・。
勇者の力を示すにはいいのかもしれないが、頬の横を掠めるようなことは2度とごめんだ。
「今日はこの辺りにしておくか。」
「だねードラン寝不足なんでしょ?この後さ、一緒にご飯食べたら今日はゆっくり休みなよ〜」
「はは、一緒に飯を食うことは決まりなんだな。」
「んー嫌ならいいんだけど、今思いつくお礼ってのがご飯奢るってことくらいしか思いつかなかったんだよね。」
「お礼?俺が助けてもらった礼に教えてるんだから、礼に対する礼など要らんだろ。」
「あ、そっか。そういえばそんなこともあったね〜、すっかり忘れてたー
えーでもご飯は一緒に行きたい感じなんだけど。」
「それはいいぞ。そこで放心しているアデルも連れて一緒に行くか。」
「だねー
今日は何食べに行くー?」
「カツレツとかどうだ?この前食いにいったら美味かった。」
「カツレツ。え?マジ?カツあんの?それ食べたい!!行こっ!そっかーパンあるもんね。カツできるよねー」
レオン、お前は楽しそうだな。
俺はようやく心臓が落ち着いてきたところだ。
俺はレオンとドランと一緒にカツレツとかいうやつがある店に向かった。
「あー、だよねー、ご飯はないよねー
パンかー、そこは仕方ない。」
「レオンはパンが嫌いなのか?」
「そうじゃないんだけど、カツ食べるならご飯がよかったなーって。」
「ゴハン?」
「米って分かる?この世界にあんのかな?麦に似た種みたいなやつなんだけど、それを炊いたやつがカツに合うんだよねー
どっかで見つけたら食べたいな〜」
「レオンはそのうち旅に出るんだろ?この国にはなくてもどこかの国にあるといいな。」
「え?俺、旅に出んの?アデル、そうなの?」
「そうだな。ある程度強くなったら、王都から出て旅をしながら鍛錬することになると思う。」
「へーそうなんだ。旅行か〜それは楽しみー
そっかー、違う国ではあるかもしんないよね。だってここヨーロッパみたいな感じだし。日本とか中国とかインドとか、そんな感じの国があればご飯ありそう。」
何を言っているのか正直分からないが、旅など嫌だとごねたりしないのは助かる。
あとは魔法と剣技がそれなりに身につけば、俺の役目も終わる。
そこまでは付き合ってやるよ。
まぁレオンならどこでもやっていけるだろう。




