第23話 すまん。俺は足が速くない
「大変だ!!」
なんだ?この慌てよう、魔物のスタンピードか高ランクの魔物が階層を下りてきたか?魔族でも攻めてきたか?
「レオンはいるか?」
「ここにいるよ〜」
「ドランが大怪我をした。俺らと一緒に来てほしい。」
「え?ドランが?すぐ行く!!」
「レオン!待てっ」
と俺が止めるのも聞かず、レオンはその冒険者たちと共にギルドを飛び出して行った。
すまん・・・俺はやはりそこまで足が速くないらしい。
レオンと冒険者2名を追いかけるもどんどん離されていった。
森に入られたら見失うかもしれん。俺は必死にレオンたちを追いかけた。
こんなに一生懸命に走ったのなど、いつ以来だろうか。
1階層を過ぎ、2階層を過ぎ、3階層を過ぎると、冒険者2人が息を荒げて地面に膝をついてへばっていた。しかしレオンがいない。
「おい!レオンはどうした!?」
「俺らが遅いから先に行った。」
「はぁ?ふざけるな!!レオンはまだEランクでギルドの依頼は荷運びしか受けたことがない。生活魔法もまともに使えないし武器を持っていない!
レオンが危ない!俺はレオンを追う!どっちだ!!」
凄い剣幕で冒険者を怒鳴りつけていて、自分でも驚いたが、そんなことよりレオンが心配だ。レオンに何かあれば俺は処刑だろう。己の命が惜しいということもあるが、俺が無理矢理この世界に連れてきてしまったのに文句一つ言わずこの世界に順応しようと努力しているレオンのことが結構好きなのだと今気づいた。
「方角はこのまま西に真っ直ぐだが5階層なんだ・・・」
「はぁ?5階層!?・・・レオンが死んだらお前ら処刑だな。」
俺は吐き捨てるように言うと走り出した。
5階層など俺の実力では不安しかないが、もう最悪俺の命を囮にしてでもレオンだけは助けなければならない。この世界のためにも。
息が上がって喉が張り付いて肺も痛い。それでも走らなければならない。
しばらく走り続けていると、レオンとドランの姿が見えた。
まだ無事なようだ。
はぁ、まだ油断はできないが、とりあえず二人を見つけられてよかった。
「レオン、ドランはどうだ?」
「ん〜、ヒールはかけたから大丈夫だと思うんだけど、まだ目を覚さない。」
息も絶え絶えに話しかけるが、レオンは困った顔でそう言った。
「ここは5階層だ。できるだけ早く階層を下りたい。」
「だよね〜。なんかすっごいヤバそうな雰囲気だもんね〜。
じゃあ俺がドラン担いで走る。アデル息切れているけど走れる?」
「あぁ、走れるぞ。」
「じゃあギルドまで競走ね!スタート!」
そう言うとレオンは恐ろしい勢いで走り出した。もう見えないんだが・・・。
勇者の身体能力は恐ろしいな。
が、しかし、レオンはドランを肩に担いだまま戻ってきた。
「ヤバいヤバい!マジヤバい!俺、人類最速記録塗り替えたかも!オリンピック出たら金メダルじゃん!見た?ねえアデル見た?」
「あ、あぁ、速かったな。一瞬でも見えなくなった。」
もの凄いテンションで戻ってきて、わーっと捲し立てられて非常に疲れた。
「ドランを急いで運べ。俺は置いて行っていい。」
「そだね。分かったー」
そしてレオンはまた一瞬で見えなくなった。
もうすぐ4階層だ。俺一人であればなんとかなる。たぶん。
それよりも、意識のない者と戦えない者をこの高階層に留めておくことの方が危険だと思った。
それにあの速さがあれば、例え魔物と出会したとしても逃げ切れるだろう。
どうか無事に1階層か、できればギルドまで辿り着いてほしい。
明日からは朝夕2回の更新になります。




