第20話 出張勇者はこちらです
「君か?無料でヒールかけてくれるって冒険者は。」
「ん?そうだよ〜
魔法の練習してるところだから無料でいいよー」
「頼む。俺の仲間が動けない。軽いヒールでもいい。他の仲間が回復すれば治癒師のところまで担いでいける。一緒に来てくれないか?」
「うん。いいよ〜」
どこまで連れて行かれるのか知らないが大丈夫か?危険な場所は困るぞ?
「おいお前、レオンはまだFで戦えん。どこまで連れて行く気だ?」
意外にもドランがレオンの心配をして聞いてくれた。
「森の3階層までは撤退できたから、そこまでなんだが無理か?」
「3階層?何それ?それとドラン、俺さっきEに上がったよ。昇格した。」
「アデルと言ったな、お前は3階層なら戦えんのか?」
「1人ならいけると思いますが、誰かを守りながらは自信がないです。」
「ん〜心配だから俺も行く。」
「危ないところなの〜?」
「あぁ、そこの森は1階層から6階層まであって、1階層はレオンでも大丈夫だと思うが、階層が上がるごとに出る魔物が強くなるんだ。」
「えーなんか面白いね。でも俺まだ戦えないと思うし、確かに強い魔物出たら無理かも。」
魔力のコントロールが上手くできれば、訓練場を更地にしたレオンであれば3階層など軽く通り過ぎるだろうが、人がいるところで魔法なんか使ったら今度こそ死人が出るかもしれないしな。
ドランは確かに腕だけは一流だから付いてきてくれるならありがたい。レオンのことが気に入っているようだし、ここはドランに任せるか。
ドランが側にいれば変な奴が襲いかかったり絡んだりすることも無いだろう。
俺たち4人はすぐに防壁を出て森に向かった。
「へー、街が壁で囲まれてるんだね〜
あれみたい。ベルリンの壁だっけ?」
「いや、その壁を知らんから俺に聞かれても分からん。」
「そっかーだよね〜」
レオンのいた世界にも似たような壁があったらしいが、俺はそれを知る術もないし、何とも答えようがなかった。
やはり懐かしいと帰りたいと言い出す時が来るんだろうか?
「レオンは他国から来たのか?」
「んー、そんな感じ。アデルに呼ばれて来たんだよね〜」
「へー」
距離感が近いような気がしたが、レオンは自分が違う世界から勇者として召喚されたことをドランに伝えなかった。
ドランがレオンの中で信用に値する人物だと思われていないのか、それとも勇者だと言えるほどの強さがまだ無いからなのか、どちらだろうな?
「レオンは特に俺から離れるなよ。」
「うん、分かったー」
怪我をして動けないという冒険者の場所まで行く途中、幸い魔物は出てこなかった。
「うわー、痛そう。早速ヒールかけるねー」
止血のために巻かれた布も真っ赤に染まっており、どうやらポーションでも対応しきれなかったらしい。
囲んでいる冒険者2人も足や腕から血が流れている。確かにこの状態では意識のない男を担いで街まで行くのは難しいか。
そんなことを考えていると、彼らが光に包まれた。まさか間違えて浄化をかけたんじゃないよな?そう思うくらい、さっきの光景と似た光景を目の当たりにした。
「どう?終わったと思うんだけど、まだダメそう?」
「・・・ん・・ん?あれ?」
真っ白な顔をしてピクリとも動かなかった男が目を開けて辺りを見渡し、そして上体を起こした。
「お前大丈夫なのか?起きられるのか?」
「あ、あぁ。ここは死後の世界ではないよな?全く痛みが無いんだが。」
「俺の怪我も治ってる。」
「僕もだ。」
「みんな治った〜?それなら早く街に戻らない?ここ魔物出るんでしょ〜?ずっとここにいたら危なくない?」
「そうだな。レオンの言う通りだ。早くずらかるぞ。」
名前も知らん冒険者たちがレオンのヒールの効果の高さに驚いていたが、相変わらずのレオンとドランの言葉によって移動を開始した。
エクストラかどうかは分からないが、ただのヒールではないな。精度の高いハイヒールか?それと、あれは辺り一帯にかけるエリアヒールだったな。
全員一気に治っていた。
これは勇者だと明かした方がいいのではないか?明かさなければ、変な奴らにレオンが狙われることになる気がする。




