第105話 レアメタルゴーレム
「鉄も銅もなんか思ったより脆いね」
レオンが言うとおり、21階層にいる鉄や銅でできたゴーレムも、ドランの一撃で砕けてしまった。
「ドラン、戦いを楽しみたいのなら、そのでかい剣でなく、普通の人が片手で使うようなショートソードを使えばいいんじゃないか?」
「そうか。そうかもしれん。アデル、面白いことを考えるな」
面白いことでもなんでもない。通常は武器の性能を落としてまで戦いを楽しみたい奴などいないんだが、ドランが戦いを求めて勝手にどこかへ行ってしまうくらいなら、そっちの方がいい。
「鉄も銅も持って帰れば売れますよ。銅はそれほど高くありませんが、鉄は剣や槍、防具にも使えますし。次の階層で出る金属の方が高いですが、鉄もそれなりの値段で買い取ってもらえます」
「ん〜、どうする〜? 鉄はアイテムボックスにとりあえず入れておこうか〜」
「そうだな。容量に制限がないんだから、入れておけば何かの時に役立つかもな」
何かの時ってなんだと自分でツッコミながら、各自倒したゴーレムをアイテムボックスに入れていった。
ガキーン
「これは硬いな。剣の刃がこぼれた。全く攻撃が通っていない気がする」
「その剣の素材は? この階はレアメタルのゴーレムが度々出てくるので、攻撃が通らないことも増えると思います」
「それはいい」
ドランはアシュレイの解説を聞くと、楽しそうに今度は殴打武器であるメイスを持ち出してゴーレムを殴っている。
しかし本当に頑丈なようで、全く攻撃は通っていないように見える。
しばらくドランの戦いを見ていたが、ドランは倒す気がないようだ。ただ殴り合いを楽しんでいるようで、たまに攻撃を受けて柱に叩きつけられたりもしているが、誰も助けたりはしない。
「ドラン! もうそろそろいい〜? それ倒して次のレアメタル探さない?」
「いいぞ〜、やってくれ!」
おいドラン、仕上げはレオン任せかよ。
レオンがゴーレムの腹の中心を貫くように氷の矢を放つと、ゴーレムはゆっくりと倒れていった。レオンが魔法で作る氷はドランのでかい剣より強いんだな。
「これで剣とかナイフとか作りたいよね〜」
「やっと楽しくなってきたな」
レオンもドランも楽しそうだ。
しかし、その後も出会うのは鉄や銅が多く、なかなかレアメタルには出会わなかった。
「おい! あれはどうだ? 綺麗な青色だな。硬そうだ」
ドランが目ざとく見つけたのは、深い青に輝くゴーレムだった。今まで見たゴーレムの中で一番危険なオーラが出ている。
「あれはミスリルですね。あれを倒せれば、かなりの高額になります」
「ミスリル! ミスリルの武器って憧れだよね〜、あ、でもバルムンクが怒りそうだし、俺はナイフくらいしか持てないな〜、アリサとココの武器でも作ろうか」
「いいわね」
「ミスリルの武器って憧れよね。ゲームでは鉄板だし〜」
ということで、アリサとココの武器を作るためにもミスリルゴーレムに挑むことが決定した。
「ミスリルゴーレムは他のゴーレムに比べて動きが速いので気をつけてください」
そうなのか。ゴーレムは緩慢な動きしかしないのかと思っていた。
アシュレイが注意を促した直後、本当に風のような速さで俺たちのところに向かってきた。
おい、ゴーレムがこんなに速いのか? ドランが盾で受け止めたが、盾の方が耐えられずにひしゃげてしまった。
ドランにミスリルの剣は必要ないにしても、盾はミスリルで作るってのもありかもしれない。
「これはキツイな。盾がこんなになっている」
ドランは楽しそうにそう言った。これから先、ドランが強敵を前にして焦ったり怯えたりすることはあるんだろうか? 飛んできたワイバーンを前に焦っていた頃が懐かしい。
どうせドランが相手するだろうと余裕をかましていたが、ミスリルゴーレムは俺たちにまで攻撃を仕掛けてきた。盾がダメになってしまったドランでは、スピードも速いし動きを止めきれないんだ。
何度かココが結界をかけてくれて、俺も障壁なんかを展開しつつ攻撃を防いでいるが、防戦では押されつつある。ミスリルボディは相当硬いのか、アリサが遊撃として引きつけても、ココの攻撃もドランの攻撃もなかなか通らない。バルムンクは機嫌を損ねているのか、レオンはバルムンクを使わず魔法で火や氷の矢を撃ったり、風の刃も飛ばしているがカキンといい音をさせて弾かれてしまう。
アシュレイもミスリルゴーレムと戦うのは初めてのようで、初めは矢を撃っていたがそれが通じないと分かると魔法に切り替えた。地面から蔓が伸びてゴーレムに巻き付き、動きを止めようとするが、ゴーレムはそれを引きちぎってしまう。
「普通の攻撃じゃダメっぽいね〜、でも連携の練習って考えたらちょっと楽しいかも〜」
レオンは全く危機を感じていないようで、楽しそうにちまちまと魔法を飛ばしている。
今までは個々の能力が高すぎて、連携などしなくても敵の斬滅は容易かった。それを考えるとなかなかこの戦いはいいのかもしれない。
前衛としてドランとココ、アリサが遊撃として駆け回り、レオンとアシュレイが遠距離攻撃、俺はみんなが攻撃を受けないよう障壁などで防御面を固める。誰かが離脱しても、他の誰かがその穴を埋めることができる。
レオンが剣を持って前衛に出るなら、ドランはタンクを引き受ければいいし、ココが疲れたら下がって結界の展開に切り替えてもいい。アリサも疲れたら後方に下がって魔法に切り替えてもいいし、その時はアシュレイが遊撃をできそうだ。
俺は前衛は無理だ。剣には自信がないからな。だが、やろうと思えば遊撃くらいならできる。魔法での遠距離攻撃もできるし、結構このパーティーはバランスがいいのかもしれない。
でももうそろそろいいんじゃないか? 最後はどうせレオンの常識を超えた魔法だろ?
「攻撃は通らないしスピードも速いけど、動きが単調で飽きてきた」
アリサが最初に飽きたと告げた。俺も同感だ。この戦いは相手が頑丈で簡単に倒れないが面白くない。
「ドラン、もういい〜?」
「そうだな。今度はもっと頑丈な武器で戦ってみたい」
「じゃあ避けてね〜」
レオンが言うと、みんなが一斉に距離をとった。
音もなくレオンから放たれた魔法は光だった。
光を使ったか。その青っぽい光は、ミスリルゴーレムの額を一直線に貫いて、ゴーレムはゆっくりと倒れていった。
「レーザービームやってみたんだけどさ、すごくない?」
「すごいな」
「レーザービームとは何か分からないが一撃か……」
俺もレーザービームというのが何を表す言葉なのか分からないが、とにかくすごいということは分かった。
こうして俺たちはミスリルの塊を手に入れてウハウハな気分で下層に向かう階段を下りた。
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