第100話 トラップ
「ここからは洞窟か。洞窟は火が使えないから困るな」
休憩を終え、ようやく現実世界に戻ってきたアシュレイを連れて16階層へ続く階段を下りてく。
「洞窟ってさ、岩が転がってきそうだよね。ワクワクするよね」
「お約束だよね。映画みたいで楽しみ」
トラップなんてない方がいいだろ。なぜレオンとアリサはトラップにかかることを楽しみにしているんだ?
洞窟を進んでいくと、耳障りな音にもならない音が頭に響いてくる。なんだ?
「コウモリですね。状態異常無効の効果をさっそく実感しています。通常この階ではコウモリが放つ超音波で頭痛がするんですよ。大抵の人がしばらく頭痛に悩まされます。方向感覚も曖昧になったりします。そしてさっきの虫よりは小さいですが数が多い。気をつけてください」
「数の脅威ってやつか。面白い」
ドラン、面白くはないだろ。できれば火で一気に炙りたいところだが、こんなところで火を使ったら窒息死するからな。ちまちまと倒していくしかないか。
「あ、ごめん、なんか踏んだっぽい」
「は?」
レオンが言うと、辺り一体に謎の緑の霧が発生した。これはもしかしなくても毒の霧か?
俺たちには効かないが、トラップを踏んでしまったようだ。
超音波を放っているというコウモリにはなかなか遭遇しなかったが、ドランやレオンがトラップをわざとなのかと思うほど踏み続けた。
上から水がザバーと降ってきたり、上から石が落ちてきたり、矢も飛んできた。レオンとアリサが楽しみにしている岩は転がってくるというトラップは今のところない。
一度は、床が消えて危うくレオンがその穴に落ちるところだった。咄嗟にドランがレオンの腕を掴んで引き上げたからよかったが、あの穴に落ちたらどこにいくんだろう? 1人で深層にでも行ってしまったらと思うとゾッとした。
いや、意外と平気か? なんとなく1人で逸れてしまっても、入り口まで無事戻れるような気がした。嫌だ嫌だ、まだ俺は人でありたい。
「やっぱこういう時のために空を飛べるようになっておいた方がいいね〜、今までワイバーンで飛んでたから頼りきりだったけど、練習してみようかな」
「空を飛ぶ……?」
アシュレイが驚いている。長年生きているであろうアシュレイでも空を飛ぶなど非常識すぎて信じられないんだろう。これはまだ序の口だ。
「きた! ウェ〜イ! さあみんな逃げて〜」
「これぞダンジョンって感じ!」
レオンとアリサが楽しみにしていた、洞窟の直径に合わせているかのようなでかい丸い玉のような岩が転がってきて、こんなもんのどこが楽しいんだ? と疑問に思いながらみんなで逃げることになった。
「レオン! 先は崖じゃないか?」
「大丈夫、大丈夫〜、こういうところはセオリー通りいけば、崖の横に退避する場所があるから!」
本当かよ。まあなければ最悪、あの岩を魔法で粉々にすればいいだけだ。
わざわざ逃げ惑う必要ってあったのか?
「あ〜楽しかったね〜アドベンチャーだね!」
「冒険王になった気がする!」
レオンとアリサは鼻息荒く、ハイテンションではしゃいでいるが、アシュレイは疲れて膝に手をついて肩で息をしている。
ドランは相変わらず平常運転で腕を組んで立っている。
岩は崖の下に落ちていき、レオンが予想したように崖に出ると左右に数人が立てる程度のスペースがあった。
「コウモリいないよね」
「音はしてるんだけど不思議」
「コウモリなど強くないだろう。わざわざ探すより次の階層を目指さないか?」
ドランが久々に真っ当なことを言った。
みんなそれに賛成すると、アシュレイが持っていたダンジョンの地図を頼りに、下層へ向かう階段を探す。
「なんか臭いよね〜。さっきから。アンモニア臭みたいな」
「分かる。もうちょっと強くなったら公衆トイレ」
「それそれ!」
さっきからアリサがマスクをしていると思ったら、なるほど、獣人は匂いに敏感なんだったか?
言われてみればトイレのような鼻の奥を刺激するような匂いがする。
足早に駆け抜けて、次の階層に向かった。コウモリは結局1匹も見なかったな。
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