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目立つだけの悪 3

 多くの水の球がハルエラの後ろから来ていた。ローブはそれを気にせず、向かってくるハルエラと対峙していた。


「土よ。クレイピラー」


 ローブの男が魔法の詠唱を呟くような声量で唱えると、地面から土の柱が出現した。その数は一本ではなく、ハルエラの進路を邪魔するように伸びている。彼女の速度が殺されていたが、彼女は後ろから来る水の球に触れると、それが彼女の手にまとわりつくようにしてから、彼女の腕で縦のような形になった。その盾が土の柱をぶっ壊してローブに近づいてくる。


「土よ。ロックショット」


 柱では意味がないとわかった彼は岩でできた大きな棘のような形になった。その土の針がいくつも出現して、彼女に襲い掛かる。しかし、彼女の腕についている盾を貫くことはできず、全てが盾にぶつかって崩れて粒子になって消えた。


「風よ。エアショットっ」


 次に男が使った魔法は、風の魔法だった。薄緑色の球が出てきて、それが先ほどの土の魔法のように棘のような形になり、それがいくつか出現して、彼女の方へと飛んでいくが、風の魔法で薄緑とはいえ、彼女はその魔法を捕らえているのだから、それを防げないということはなく、彼女はその魔法からも簡単に身を守った。


 盾を超えて、攻撃してなくてはいけないが、魔術師でもない彼らには、放ったものが盾を躱して攻撃できる魔法は正確に、想像できないのだ。魔術師でもなければ、そういった魔法を目で見ていなければ、魔法名を言ったところで想像しきれないため、魔法としては失敗してしまう。それがわかっているから、男はそういう魔法をつかえないかった。だが、魔法だけでイメージできなくとも、彼には超能力があった。相手をなめていたからこそ、超能力を使おうとしなかったが、相手の殺意を感じれば、油断したままやられてやることはできない。


「土よ。ロックショットっ」


 再び、土の針が敵の周りに出現した。そして、出現した魔法に軽く触れ、魔法をその場から消した。再び出現したのは、ハルエラの後ろだ。しかし、ハルエラは彼を攻撃範囲内に捉えていたため、再び飛びかかる。腕に持っていた盾を正面に構えて、まっすぐ突っ込むように地面を蹴った。彼の放った土の針が彼女の背中に当たっているが、彼女にはまるで効果がないかのようにふるまっていた。背中に痛みはあるものの、それは気にするほどのものではないのだ。そして、彼女が構えていた盾が、彼の腹にぶつかる。彼の予想では、土の針が当たった時点で、突進は止まるものだと思っていたのだが、彼女は止まることはなかった。


 ハルエラは、ぶつかった盾を振り払うように動かいして、敵を後ろに吹っ飛ばす。敵はそのダメージを逃がすために盾の動きに合わせて、後ろに跳んで勢いを殺していた。彼女は着地と同時に再びジャンプする。今度は縦を捨てて、近くの水の球に触れると再び彼女の腕にくっついて、それが彼女の手の中で剣の形をとると、それはシンプルな剣になった。彼女はそれを相手に向かって振り下ろす。敵はそれを短剣で受け止めていたが、相手のが震えている。短剣で片手剣を受け止めているのだから、相当力が必要であることは間違いない。そして、ハルエラはそこらの女子よりも力が強いのだ。格闘術を使っている時点で、それを理解するべきだったが、ローブの男はそれにまだ気が付いていない。自分が少女に押されている理由すらわからないのだ。


 彼女は思い切り剣を振りぬくと、敵の手から短剣が弾かれて、地面を転がった。自身の得物の転がるのを見て、拾うために移動しようとしたところで、喉元に剣を向けられた。逃げるなという意味がそこにあるのはわかっていたが、彼には降参するという選択肢はない。死ぬか、復讐を果たすかの二択。復讐を果たせないというのなら、彼が望むのは死だ。男が一瞬止まったのだが、すぐに歩こうとしたため、彼女の剣が男の喉に食い込んだ。喉が切れて、少量の血が流れだした。彼女は相手も死ぬことを理解しているのだとわかると、すぐに剣を引いて、首に食い込んだ剣はさらに傷口を大きくした。相手の動きが鈍くなり、彼女は背後から剣を振りぬいて、相手の首を落とした。首から噴き出した血を被りそうになっていたが、彼女の周りには水の膜ができていて、相手の血は全て、その水の膜に取り込まれていった。


 彼女は剣を魔気に戻したため、剣は粒子になって消えていく。剣に着いた少しの血が地面に落ちて、血痕を作る。


「ふぅ、……はぁ」


 彼女は両手で目を覆い、しゃがみながらため息をついた。人を殺したのは、初めてというわけではないが、おそらく何度やっても、人の死にはなれるわけがないと思った。

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